初心者のための登山とキャンプ入門

ミルフォードトラック・トレッキング3日目

川の水を飲むジェームス

2011年1月15日土曜日。毎日夢を見る。それは人と喧嘩をしている夢だ。それは家族だったり、友人だったり、毎日とっかえひっかえ違う人と、かなり本気で喧嘩をしているのだ。この夢にどのような意味があるのだろうか。今日は誰と喧嘩をするのだろうか。

朝は皆がざわざわし始めた5時に目を覚ましたが、どうせジェームスは起きてこないだろうと思い2度寝をした。そしてしばらくして起きると出発の準備をして朝食を食べた。オーストラリア三人組は6時半頃に出発をした。彼らは5時に起き6時半に出発する。なかなか計画的なグループだ。僕らはジェームスの準備が遅く、8時頃出発することになった。

朝から雨との予報だったが、8時頃はまだ降っていなかった。しかし空をみるとどんどんと雲が地上に降りてきていた。

ミルフォードトラック、マッキンノンパスからの眺め

昨日までの平地ウォークとは違い今日は本格的に山を登る。
ジェームスにこの方が疲れないよ、と足の運び方を説明し、ゆっくりと登った。雨は途中からポツポツときたが大したことはない。しかしやっぱり、山は眺めるより登るに限る。今まで歩いてきた道のりが見渡せて気持ちがいい。

マッキンノンパスとジェームス、強風!
稜線上、晴れたら気持ちいに違いない

しかしあっという間に峠のてっぺんに到着した。風がかなり強かったので、シェルターと呼ばれる避難小屋に避難した。コンロもあったのでここで昼食を摂ることにした。荷物を置いたジェームスはダッシュでポテトチップスにむしゃぶりついている。相当腹が減っていたようだ。

峠上の避難小屋
避難小屋にはストーブがあり、お湯も沸かせる

シェルターの中でカッパを着込んで防寒対策をし、今度は下り道。相変わらず山の壁が素晴らしい。山というよりも巨大な岩のようである。大きな砦にも見える。こんな城があったら力で攻め落とすのは困難を極めるだろう。そういえばロード・オブ・ザ・リングに城を攻めるシーンがあったな、なんて思った。

ミルフォードトラック3日目でジェームスもお疲れの様子

そして岩のパートが終わるとまた樹林帯。風がなく歩きやすい、そして相変わらずグリーンが素敵である。僕はみどりみどりした場所を歩くのが好きかも知れないな、と思った。

雨が降り辺りには滝がちらほら
雨が降り原生林が生き生き
なんだか良くわからないくらいぼーぼー
ミルフォードトラックにも滝が
こんな木もいっぱい

今日はたくさんの日本人と会った。5人には会っただろうか。みなお年寄りの方で、ザックカバーに「Mont-bell」と書いているのでわかりやすい。もしくは「Paine」である。ついつい日本の登山の様にお疲れ様です、とか声をかけてしまう。皆フレンドリーで嬉しい。彼らはガイドを利用してのトレッキングであろうと思われた。それにしても言葉と言うのはとても便利だ。こんなに便利なものなのか、と驚いた。意識しなくても言葉が自然と頭に入ってくるのである。久しぶりに日本語を使い、言葉を使えるという便利さがわかった。
その後も樹林帯を下り続け、4時ころ今日の宿泊先のダンプリングハットについた。昨日に続きジェームスはダッシュでトイレに駆け込んだ。
それにしてもここのサンドフライの数はハンパがない。とても外にいることができない、登山靴を脱ぐ事さえままならないのだ。

ダンプリングハットのキッチンで皆くつろいでいる。宿舎の方にはサンドフライが大量にいてくつろげないようだ。皆顔は疲れている。さすがに3日目という事もあって元気がない。オーストラリアのクリスも足の裏を痛めたようで足を引きずって歩いている。みなストレッチをしたり足を伸ばしたりしている。

クリントンハット

そろそろ僕はジェームスの事を書かなければならない。

彼は22だったか、23だったかまだ学生であり、4月に卒業すると言っていたような気がする。オーストラリア人だ。身長は180cmはあるだろうか。青い目でなかなかハンサムである。明るくて社交的なやつだ。ヒゲもぼうぼうでとてもワイルド。アメリカの映画に出てきそうな男である。
しかし僕は歩きながら考えていた。彼はワイルドなのだろうか、それともいいかげんな奴なのだろうかと。ワイルドで大雑把なのと、いいかげんで計画性がないのでは少し違う様に思う。
外国人がどういう奴なのか、というのは少し一緒に過ごしただけではわかりづらい。特に白人の男性はいつもしっかりして、できるやつに見えてしまう。しかし今回の様に数日一緒に過ごしていると、だいぶわかってくる。ジェームスはかなりいい加減なやつである、と言うことがわかった。トレッキング中、水のがぶ飲みのせいで30分に一回はトイレをするし、そのせいで水はすぐなくなって僕のをあげることになるし、なおかつ、いちいちその言い訳をしてくる。ブリーフいっちょうのオッサンのような姿で寝袋に潜り込む姿を見ると、おい!とっつ込みたくなる。お腹のぽっこり具合もすごいのだ。
だけどいい奴である。とてもいい奴なのだ。素直だし周りの気遣いができる男だ。いつも僕の事を気にかけてくれるし、思い出したら英語の授業もしてくれる。常に笑顔を絶やさない。彼がいなければ僕はこの4日間一人で寂しく過ごしていたに違いない。彼がいて本当に良かった。でも僕の撮った写真を確認する度に、毎回自分の顔のアップを確認するのはよしてくれ、と思う。(1/15 end)