初心者のための登山とキャンプ入門

登山のケガ「切り傷・刺し傷」の応急処置と止血法

ペグで手首を切ってしまった人イラスト

私自身の経験で止血の必要があった時は、キャンプでのことでした。

タープを張っている最中でしたが、張り綱のテンションに地面が耐えられずにペグが抜け、そのまま勢い良く宙を飛び、ペグがメンバーの手首をかすって行ったのです。

私は一部始終を見ていましたが、手首のちょうど脈拍を計ったりするあたりから血がモリモリと出ました。 場所が場所なだけにみんな焦りましたし、ケガをさせた人の動揺が甚だしかった記憶が強烈です。

幸いキャンプ場からすぐにタクシーで病院へ行けましたが、これが登山の中盤で先に行くにも降りるにも時間がかかる場所にいたらどうしただろうと考えると、こわいことです。
またアイゼンやピッケルを使う時期にはさらにそういうケガも多いだろうと思いますのでイメージしておくと良いかと思います。

水で良く洗う、が基本

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山にたくさん水を持ち込むならプラティパスがおすすめ・

水道水も携帯しよう

擦り傷、切り傷などの場合は、まず飲料水でケガしたところをよく洗い傷口が化膿しないようにすることが大切です。

そこで気をつけたいところなのですが、いくら登山の水分補給にスポーツドリンクが良いと言ってもこのような時のことを考えて水も持っていたほうがよい、ということです。
例えば単独行ならば500mlのペットボトル一本は水にして、残りはスポーツドリンクにしたとします。
その場合スポーツドリンクから先に飲みます。水はなるべく、無事下山するまで飲みきってしまわないようにします。

下山口のバス停や車に着くまでは何があるかわかりませんから、非常食的な意味も兼ねて無くならないように配分して飲むのが理想的です。

持っていたい消毒液

色がつかない消毒液
色がつかない消毒液

沢の水にはどんな菌が入っているかわかりませんから水を持っていれば水筒の水を使って洗います。
とは言っても登山ではその水筒の中の水は沢の水だったりしますから、やはり消毒液をメンバーで1つ持っていると安心です。

このタイプは標高が高くなり気圧が低くなると中の液体が漏れる心配があります。
一度使ったものは漏れやすいのでビニールに入れることと荷物などでさらに潰さないように気をつけるとよいでしょう。

傷の応急処置、基本ステップ

  1. 洗う
  2. 消毒
  3. 傷口の保護(絆創膏・ガーゼ・ガーゼ&テーピングテープ・包帯 など)&圧迫して止血

洗いが不十分だった経験

とにかく初期のこの”洗い”が非常に重要です。

山ではないのですが、ある時磯で遊んでいた仲間が足を滑らせてふくらはぎの横をタテに深く切りました。
海水には微生物が多いですから水道水で注意深く洗ったあと病院へ行き縫ってもらいました。
しかし数ヶ月して中で化膿している事がわかり、開いてまた洗浄し、再度縫い合わせました。初期の洗いが不十分だった、とのことでした。

これだけ気をつけた上で医者に任せてもこのようなことが起こりうるのだと思いました。山では土などが傷口に入ってしまうことが多いと思いますので気をつけたいところです。

キズパワーパッドなどで乾かさずに傷口をくっつけるタイプの絆創膏を使う場合は、消毒液を使ってはいけないので注意が必要です。

刺し傷の応急処置

枝が刺さった場合の固定の仕方

刺し傷の時だけは、例外です。

抜いたり洗ったりせずに、そのまま固定して即下山し、医療機関に任せます。ムリに抜くと出血を引き起こしたり傷口が広がったりしてしまいます。

手順は次のとおりです。(仮に枝が刺さったものとして記載します)

  1. 刺さった枝が長い場合、切って短くし、下山のジャマにならないようにする。
  2. 刺さった枝を固定すべく、根本にガーゼなどを当てテーピングテープで傷口周辺を圧迫しつつ巻きつける。圧迫することは止血の役割もする。とくに枝が絶対に動かないようにする。

覚えておくべき止血法は、直接圧迫法

登山中に大量の出血があった場合は動転すると思いますが、一つだけ止血法を覚えておきましょう。現在では直接圧迫法のみで行うのが主流となっています。

手順は次のとおりです。

  1. 出血が多ければ、抑える手にビニール袋などをはめ血液に触らないようにする(傷への感染予防)。
  2. 傷口にきれいなガーゼ・ハンカチなどを当て、その上から手で圧迫する。
  3. 片手で止まらない時は、両手で体重をかけて圧迫する。
  4. 再出血が心配される時は布は外さない。
  5. 止まりづらい場合は、傷口を心臓より高くする。

これで、ほとんどの出血は止まります。

薬は飲んでよいのか

切り傷などで傷が痛む時、バファリンなどの鎮痛剤を飲むことも有効です。

下山の目安

もちろん傷や出血の程度や本人の気持のショック度合いに依りますし、また長期山行であれば感染の心配もあります。

大丈夫だろうと思って行程を進めた場合のエスケープルートの有無なども考えて判断したいところです。

明らかに即下山したい目安としては、

  • 皮膚の下の黄色い脂肪が見えるくらい切ったり擦ったりした時 (→感染・縫う必要性の有無)
  • 刺し傷の時 (→ 医療機関で抜いてもらう)

などがあります。

持っていたい道具