初心者のための登山とキャンプ入門

キョンボックン観光そしてiPhoneをなくす 韓国旅行記⑤

ミョンドンの繁華街 ケビンとジョンミン

キョンボックン観光、ジョンミンやってくる

韓国旅行2日目は後半戦の日記。インサドンでの観光を終えると僕らはキョンボックンに向かった。キョンボックンとは朝鮮時代の王宮で、インサドンからは歩いて20分ほど。ソウルで一番大きいと言われているのも納得の大きさ。そしてキョンボックンの裏にそびえる山、 北岳山(プガッサン) 。 風水的な配置だろうか。山と宮殿との組み合わせが美しい。
またここでは守門将の交代式を見ることができる。派手な装束に身を包んだ兵士たちが、光化門の前で勤務を交代する儀式。台湾では本物の兵隊さんがやっていた。「色が鮮やかでいいね」と僕がケビンに言うと、「派手すぎます、矢に当たります」とケビンが言った。「研修を受けたアルバイトです」とも言った。

キョンボックンの守門将の交代式

キョンボックンの入場料は3,000W。ケビンが僕のぶんまで払おうとしたので強引に3000Wを渡した。こうでもしないとこの先延々と奢られつづける。もてなしたい気持ちはすごくよく分かるけれど、これじゃあみんなの負担になる。それはつらい。スキを見て支払わなければならないなと思った。

キョンボックン内と北岳山(プガッサン)

キョンボックンはこんな真冬だと言うのに観光客が多かった。”~殿”と書かれた建物がキョンボックンにはいくつもあり、それらを地図を見ながらいくつも見てまわる。それぞれの殿には役割があり、ここでは会議的なものが行われていた、なんて事をハンナが説明をしてくれた。王や后の寝室に床暖房があったのが驚いた。ほんと?
どの建物の美しく品のあるデザインだったが、僕はこの中を歩きまわるにはいささか疲れすぎていた。しかも建物も似たようなデザインなので飽きてしまう。また個人的には建築物よりも小物、財宝系が好きなので少し退屈した。そして寒い。キョンボックンは春や夏にくれば、花も咲き緑も溢れ美しい事だろうと思う。とりあえずひと通りの建築物を見てベンチでのんびりして、キョンボックンを去る事になった。

香遠亭

2月は17:00頃にキョンボックンの営業時間は終わる。ちょうどその頃ジョンミンがやってきた。彼はこの日ちょうど就職活動のためにソウルに来ていたのだ。彼はテグ近隣の街で暮らしており、就活のためそこから遥々ソウルまでKTXで来てるらしい。テグからソウルはミョンドンまで直線距離で246キロ。東京から名古屋の手前くらい。大した距離だ。その距離を何度も就活のために移動しているらしい。大変なことだ。ちなみに彼とニュージーランドで過ごした期間は短い。彼は僕よりも上の英語クラスだったし、メンバーの中では一足先に韓国へと帰った。帰り際にメッセージ付きのポストカードをくれたのを覚えている。

僕らはタクシーに乗り込みミョンドンに向かった。夜飯を食うという。さっき大量のご飯を食べたと思っていたらもう夜飯だ。食べれるわけがない、がしょうがない。
夜ご飯はミョンドンの繁華街にあるお店で食べた。チムタクという料理で、黒いスープに鶏肉や野菜やヌードル、そしてじゃがいもも入っていてスパイシーな料理。唐辛子がいっぱい浮いていた。僕はお腹がいっぱいで食べれなかったけれど、少しつまんだ。辛いのは平気だけど、食べ続けるとどんどん唇が痛くなった。伝票は僕が奪って支払った。5人で食べて38,000W。安い。

スパイシーなチムタクとジョンミン

iPhoneが無いことに気づき一人キョンボックンへ

ミョンドンの繁華街

食後はカフェ、Caffee beneに行った。韓国風に言うとカペベネ。本日2度目。カフェでは僕の明日の予定などを話した。みんな何がしたい、とか何が食べたい、とか聞いてくれるけれど、申し訳ないけれどうまく答える事が出来なかった。僕がやりたい事と言えばただ人が住んでいるエリアを歩いて、どんな風に韓国人が暮らしているかを感じたいだけ。商店で買い物をしてるところとか、立ち話をしてるおばちゃんとか、公園で遊ぶ子供とか、そんなのが見たい。ご飯は偶然見つけたところで適当に入る。そんなのが好きなのだけれど、皆に僕の考え方は伝わらなかったようだ。基本的に観光地は苦手なんだ。ソウルにいるけれども。
まあそんなこんなで解散する時間となった。明日は13:00にここで待ち合わせ。ケビンは用事でこれないけれども、スーランとハンナが来てくれる。
皆に別れを告げると、僕はカフェに残り喫煙室に移動した。タバコを吸い、フェイスブックでもチェックしようか、と思った。

iPhoneがない。かばんをひっくり返してみてもiPhoneが見つからない。それ以外のものは全てある。iPhoneだけがない。
いやー、やっちまったなー、旅行に来ると必ずこう言う事するんだよな俺って。参った。そして落ち着くためにタバコをスーハー吸い、そして考える。最後にiPhoneを見た場所はキョンボックンで休憩したベンチ。ポケットに入れていたiPhoneをかばんに移動しようとして取り出し、ベンチに置いた。その後は一度もiPhoneを見ていないし、触ってもいない。キョンボックン、レストラン、タクシー、カペベネ。この4つのどこかだ。そして最も疑わしい場所はキョンボックン。キョンボックンのベンチだ。あそこで僕はiPhoneを出した。ベンチの上に出しっぱなしにしていた。しまうのを忘れてはだめだな、とその時考えた。でも多分、しまわずに置き去りにしてきたんだろう。キョンボックンだ。参ったな。あんな広いところに、しかも野ざらし。観光客も多いのに。まず僕がしなければいけない事は3Gの回線を止めること。ローミングされて使われたら何十万の請求書が来てしまう。よし、一度宿に戻ってパソコンで東京の姉に連絡だ、と思っていたがなぜか足はキョンボックンに向かっていた。キョンボックンに行ったところで既に営業時間が終わっているのはわかっている。まあ良いのだ。とりあえず一度夜の街を歩いて頭を冷やそう。

キョンボックンへはミョンドンの繁華街の中を歩いて向かった。自分と周りとの距離が一気に離れた気がする。アウェーだ。自分の足で自分の意思で歩いている気がする。スペインでかばんを盗まれた時と同じ気分だ。いい感じだ。旅行らしくなってきた。でもiPhoneが見つからないのは非常に困る。買ったばっかだし、僕の仕事に関わるサイトにログインなしで入れるし、いくつかのアプリも買ったし、くだらない写真ばっかり入っている。なくなって消えてしまうのは良いけど、誰かのものになるのは困る。しかも韓国に来る前に充電池を買ったばかりじゃないか。まあ多分見つからないだろう。だってここは海外で色々な人がいる。しかもiPhoneは世界共通。SIMを変える事が出来るかはわからないけれどパソコンみたいなもんだ。まず見つからないだろう。それよりもiPhoneがなくなることでみんなに迷惑をかけてしまう。連絡がとれないのはかまわないけど、明日はきっとiPhone探しになるだろう。いやー情けないぜ。なんてぶつぶつ考えているとキョンボックンにたどり着いた。地図なしでも体がキョンボックンの位置を覚えている。iPhoneをなくしたおかげで集中力がでた。

キョンボックンは予想通り閉まっていた。何かそこに1mmでも可能性があればそこをこじ開けたいと思っていたが、やはりそんなには甘くはない。光化門はその大きな扉を閉ざし、ライトに照らされ闇夜に輝いていただけだった。
とりあえずここまで来たんだし、ということで光化門の記念撮影をし、足早にミョンドンへと戻った。観光客が楽しそうに記念撮影をしていた。

光化門のライトアップ

帰り道は違う道を選んだせいか少し迷った。というのもソウルの大通りには信号が少なく、地下道を抜けなければならない事が多い。地上に出ると自分がどう地下を抜けてきたのかわからなくなるのだ。あれ、と思う事が2,3度あった。それでもソウルは歩きやすいと思う。キョンボックンの裏にはプガッサンの山頂の灯りが見えるし、ミョンドン方面にはソウルタワーがある。シンボルがあるのでわかりやすい。それにしても、やはりコンパスを持ってくれば良かった。iPhoneがあるからいいか、なんて考えていたけどもこう言うことってあるんだな。山ではやらない様にしよう。

携帯電話を一時停止、そして日本人宿泊者と過ごす夜

ソウルミョンドンハウスに着くとフリーのパソコンを立ち上げた。Gメールを開き姉二人に、携帯を止めてくれ、と連絡。返事を待つ間にフェイスブックで韓国の友人に連絡をする。「携帯をなくした、恐らくキョンボックン、迷惑をかけて申し訳ない、明日行こう」的なメッセージを送った。その間姉からのメッセージがあり、「4桁のパスワードが必要」、とのことだった。その返事をタイピングしているとまた姉からのメッセージがあり、「パスワードなくてもいけた」、との事だった。「この使用停止は一時的なものですぐに解除ができる、解除パスワードは####」というものだった。よし、助かった。これで大きな問題は片付いた。あとは色々なサイトのパスワードやIDを変更するだけだ。それにしてもさすが姉。反応と行動が早い。ありがたい。

その後くそ遅いパソコンでIDを変えようと四苦八苦していると、日本人の宿泊客と仲良くなった。男性3人組でソウル1週間の旅行に来ているそうだ。話し方も丁寧でまともな話し方をする。ジョークも素敵。そこそこの大学に行ってるんだろうなあと思っていたら、法政大学の子らだった。
彼らは「2階で飲むので一緒に飲みませんか?」と誘ってくれた。この作業が落ち着いたら参加します、と言ったけれどももう既に僕の頭は動かない。集中力もない。体力を回復するためにぐっすりと眠りたかったが、この様子じゃ興奮して眠れそうにない。彼らと共に夜を過ごす事に決めた。

2階のリビングでは韓国の17歳くらいの男性5,6人がサッカー観戦しており、そこに同室のサンギュ、そして韓国の友達がたくさんいるアカネさんがいた。
みんなフレンドリーで楽しい時間を過ごしたけれど、その時僕は何を話しただろうか。iPhoneの事を忘れ去りたくて、ひたすらくだらない話を楽しんだと思う。そう言えば、今回は韓国の友人に会いに来る事だけを考えていたけど、ゲストハウスにも出会いはあるんだなと思いだした。いいねアジア。韓国のゲストハウスを周る旅も悪くなさそうだ。こんな感じで、彼らと過ごす間はiPhoneの事を考えずに済んだ。

2時頃にその場を離れると僕は顔も洗わず布団に入った。かなり疲れている。
そして寝ては置き寝ては置きを繰り返してとうとう朝になった。
頭の中で僕はずっとiPhoneを探し続けていた。