初心者のための登山とキャンプ入門

朝日連峰縦走日記 ①

朝日岳縦走登山の写真

計画はたのし(笑)、実現はむずかし(涙)

学生時代の夏合宿のような、長い縦走をしたいと最近ずっと思っていた。
ここ数年、お盆休みに長い休みを取るチャンスが無かったけど、とうとうこの夏にチャンスが来た。
山にいる時間が「長い」というのはすごく意味があって、服も体も汚くなってイライラしたりとかなんとも言えない疲れがたまったり早く風呂に入っておいしいものが食べたくなったりとか、なんとなくそういった不自由さをたまには経験したいと思うものだ。

そんな事を考えている中、5月に開催した目黒のメキシカン料理屋での飲み会の席で夏山に行こうという話になった。ともみとゆかりちゃんとは以前から白神山地に行きたいという話が出ており、東北の山に行ってみたいと私が行ったら「朝日岳がいい」といったのはたしか、ゆかりちゃんだった。ヒマだった私はさっそくエアリアを買いに行き計画書を作った。朝日連峰は現在テントを張るのが原則禁止でいくつかの避難小屋に泊まって縦走をしていくのだと知った。テントを使わないと言うことは人数が何人に増えても大丈夫だからすごくいい。交通手段と、いくつもある避難小屋をどのように使っていくかで4つの案を作って2人に送った。

交通手段は、車か新幹線か高速バスか。問題は麓の駅から登山口までのアプローチで、入山口からは1日1本のバス、下山口には1日3本のバスがあった。値段も結構高い。でも人数が4人ならタクシーを使ったりしたほうがいい場合もある。調べていくうちにどうやらマイカーでの縦走は難しそうだと思ったら代行サービスがあるということがわかり、とりあえず電話してみた。朝日連峰に行きたいがどういうパターンでの代行をしてもらえるのかと聞いたら大朝日岳から以東岳まで行くのなら朝日鉱泉で車を持って帰って、下山の時間に合わせて下山口の泡滝ダムまで持ってきてくれるという。料金は25,000円。ETCの深夜割引を使って4人で車で行けば高騰するガソリン代を含めても一人当たり12,000円で行ける事が分かった。東北と言うと交通費が高いというイメージがあったがすごくいいプランだと思った。そんな中ワシントンから帰ってきたゆかりちゃんからは有給が足りないとあっさりメールがあり、ともみからも夏に広島へ転勤することになったと聞いた。時期が未定と言うことで行けるかどうかもまだ分からなかったが、一気に計画は中止の色が濃くなった。

代行柳川の朽木さんは東北のなまりがあるおじいちゃんっぽい声の人だった。朝日鉱泉のWebに電話番号だけが書いており詳細はさっぱり不明だった。いつごろ予約したらいいのか、早めのほうが良いかと尋ねたところ、昨年は受けられなくて何件か断ったと言っていたので行くなら早めに決めて予約をしないと、と思った。

一時は中止かと思ったけど考えてみれば他に夏休みの計画もないし、ここまで詳しい計画もあるから決行したいとも思い、北尾君の夏休みに合わせた日程で決めて代行の予約をした。合計3人以上だったら行こうと思った。3人だと少し高くなるけど、まぁ許容範囲だろう。同時に何人かの友達と弟達に声を掛けた。ともみの転勤が8月4日に決まり不参加が決まった。日程も8月の10日から14日の4泊5日だから難しいかなと思ったが、山岳部の後輩の沢子と北尾君の大学同期のクリケンが行けるとの事で返事をくれた。この4人では4月に西上州への日帰り登山をしていたから顔見知りだった。

この時の予約の電話で、下山口の朝日屋旅館に泊まるつもりだと話すと、朽木さんから朝日屋旅館は温泉じゃないけど、安くて良い温泉があるからと柳川温泉を勧められた。飲める温泉で、千葉なんかからも温泉を汲みにくるという。素泊まりで1人3,000円と言うし、強く勧めてくれるので「いいですね、ちょっと考えてみます」と返答した。翌日、朽木さんから「とりあえず部屋を一部屋予約しておきました」と聞いて少々驚いたど、まぁいいやと思ってそのままにしておいた。車のナンバーなどを伝えて、8月に入ったらまた確認の電話をしますと約束して電話を切った。

車で行くに当たって、うちの5人乗りで行くか、クリケンの8人のりのステップワゴンで行くか迷った。この頃にはガソリンも千葉で175円くらいになっていたし、5時間程度だからちょっと我慢して小さな車でも費用が安い方が良いかなと考えた。それに、前回西上州へ行ったときに坂戸に住んでいるクリケンの家までうちの車で行って、そこからクリケンの車に乗り換えたときに結構遠かったのでその時間がもったいないなと思った。だから東京駅にみんなに出てきてもらって出発するということにしておいた。ただ、代行の朽木さんを乗せて登山口へ行くというので狭いことや荷物も小さくしないといけないかなという懸念があった。

出発の数日前に、クリケンのステップワゴンも1Lで8キロ走れるとメールをもらい、またほぼ同時に、私たちが集合場所まで電車で行けばいいんじゃんと気づいてクリケンカーで行くことにした。

行くと決まれば、計画はもっとたのしー!

今回の計画のポイントはこうだ。4人で車で行って費用を安く済ます。1日の行程は短めに切ってのんびりにする。泊るのは山の上を多くする。おいしい水が豊富だからこそ出来る料理にする。帰りは、町で一泊して疲れを取ってからの帰京の運転にする。

この上で決まった計画はこうだ。
9日の深夜に集合してETCの深夜割引で5時間、山形の寒河江ICで降りる。到着は6時ごろ。コンビニに寄って朝ごはんと昼ごはんを買い、途中で朝日町の朽木さんを拾って朝日鉱泉に向かう。8時到着予定。
この日は寝不足のなか樹林帯をのんびりと鳥原小屋まで4時間。鳥原小屋には昼ごろには着く。遅めに着いたとしてもまだ小屋が込む時期じゃないから大丈夫だ。この日の夕ご飯はすき焼き。これは、先日会った九段高校山岳部の最後の現役の部長、平石君が言っていた「秋合宿では大菩薩ですき焼きを食べるのが伝統になっている」という言葉がきっかけだ。前々日に安いスーパーに買いだしに行ってすき焼き用の牛肉500gと豚肉300gを買った。あとは家にあった長ねぎと白菜4分の1とマロニーとうちにあった車麩。水分のある調味料を持っていくのは山ではあんまりしないけど、今回は贅沢にもわりした300gを1本持っていった。わりしたの量を減らして持っていこうかずいぶん迷っていたら「余ったら次の日ご飯にかけても食べれる」とかって北尾君が言っていた。ご飯にかけるのはいやだけど、醤油ベースのものって、お澄ましとかいくらでも使いようがあるんだよね。生卵は好きだけど、面倒だから我慢しよう。

2日目の11日は、大朝日小屋までの4時間の行程。朝ごはんはパン雑炊。これは沢子が山渓の雑誌を見て九段高校山岳部の朝ごはんに取り入れたメニューで、それを私が歩こう会にもちこみ、今でも定番のメニューになっている。フランスパンととろけるチーズ、コンソメとたまねぎ、そして今回はブロックベーコンにしよう。あと塩コショウと宅配ピザでもらったハーブミックスを持って行こう。大朝日小屋は混むから早めに着いて、金玉水の水場で昼ごはんのそうめんを作る。そうめんの茹で汁を捨てたらいけないだろうか。少し心配になったけど許される範囲かなと思って決めた。そうめんはすごく細めの、少し高いやつにした。山での麺類って沸点が低いからねちょって粉っぽくなることが多くて難しいんだ。それには大きな鍋でたくさんのお湯でボコボコ沸騰させながら麺を茹でる。そして大量の水で一気に冷ますことが必要だ。あとは豊富な薬味。これも重さをガマンして300gの濃縮3倍めんつゆを持っていった。薬味には乾燥わかめ、乾燥ねぎ、揚げ玉。夕ご飯は和定食。切干大根と秋刀魚などの缶詰を少し。梅干、ととろ昆布のお澄まし。大量に野菜を食べれるようなメニューにした。

3日目の12日は一番のメインコース。大朝日岳から以東岳まで、景色の良い稜線を上ったり下ったりの7時間弱のコースタイム。朝は早めの出発のため簡単なラーメン。昼はサンドイッチ。夜は遅く着くことも考えて温めるだけのレトルトカレー。ラーメンはチキンラーメンと乾燥わかめ、乾燥ねぎ。サンドイッチは生ハムとチーズ、ツナとマヨネーズとバター、からし。カレーには贅沢にも福神漬けも付けることにした。おかげで簡単メニューのカレーはすき焼きの次に重いメニューになった。

4日目の13日は下山日。以東岳から泡滝ダムまではまぁまぁ余裕のある5時間程度の下りだ。朝ごはんは何か面白いものを作りたいと考えていたら100円ショップに小さなホットケーキミックスがあった。これを水でめちゃめちゃ薄めてクレープみたいなものを作る。サンドイッチ用に持っていった大きなチューブバターがあるからバター風味と塩で食べ易いはずだ。最終日は大体レーションがたくさん残っているからそれを消化してもいいし、そもそも朝ごはんって食べたくないからポタージュと何か少しあればいいかなと思った。まぁこれは下山日で行程も長くないからなんだけど。昼ごはんも何か食べたこと無いものにしたいなあと思った。できれば、山ではあまり食べないスパイスを使ったものがいい。料理の本を見ながら探していたら「アンチョビポテト」っていうメニューがあった。アンチョビとガーリックをレンジで乾燥させて、バターと茹でたジャガイモにまぶすというものだ。普段ならジャガイモは重いからメインに持ってくるようなメニューはやらないし昼間に多くの茹で時間や茹で水を必要とするものはもってこない。でも今回は水も時間もガスもたくさんあるのでやってみることにした。計画は、その後泡滝ダムで朽木さんと合流し柳川温泉まで一緒に行き、夜ご飯をどこかで外食。素泊まりなので次の日は時間を気にせず帰京。これが今回の計画の内容だ。

8月に入り改めて朽木さんに電話をし、朽木さんには寒河江ICを降りたら電話しご自宅付近の国道で合流することに決まった。前日には首都高5号線が通行できないことと送り盆で柳川温泉近くの有名なそばやが休みでお店もほとんどやっていないと教えてくれた。自炊が出来る宿なので、コンビニかスーパーで買うのがよいかも、との事だった。柳川温泉は下山口から寒河江ICに戻る途中の大江町というところにあった。大江町で検索したらおいしい店が3件、だれかのHPに載っていた。このうちのどれが送り盆の日にやっているのかはわからなかったが、それは下山日に電話して調べることにした。

出発までに3回ほど食料の購入にスーパーに行った。食料は余分なビニールや尖った角を切り落とし、1回分ごとに食料を分けた。米は無洗米を1キロ買った。無洗米は山では本当に便利だ。肉を固めて冷凍したりアンチョビポテトのアンチョビとガーリックをレンジにかけたりと準備にはずいぶんと時間がかかった。米は毎回3合にした。食料はだいぶ重くなった。集合場所まで持っていくのが大変だと思ったけど北尾君はさらにビールを12本買うという。悩んだ挙句350ml缶を6本と梅酒1Lを買った。北尾くんの荷物はとても重くなった。