シニアにおすすめ、富士山の宝永山遊歩道ハイキング
富士山に登りたいけど、「とてもじゃないけどそんなに歩けない」という人にオススメなのは1周50分の宝永山遊歩道のハイキングです。
今回、「富士山に一度は行ってみたいと思っていた」という75歳の義父母と4歳と1歳の子供たちと行ってきました。
下界は晴れているのに富士山はガスの中。本当は青空に映えるダイナミックな火口を見せてあげたかったけど、目の前を流れていくガスもザラザラした火山岩も珍しいものとして楽しんでくれたようです。
宝永山遊歩道のコース紹介
宝永山遊歩道は、静岡県側にある富士宮五合目登山口から約50分で回れる、宝永山の火口を見下ろすハイキングルートです。
ベストなハイキング時期
富士宮口五合目まで続く富士山スカイラインは、通行料が無料です。しかし開山期間はマイカー規制が行われ、途中の水ヶ塚駐車場に駐車してその後シャトルバスで五合目に向かわなくてはいけません。ですので、富士登山客で混雑する開山期間の前後でのハイキングがおすすめです。宝永山遊歩道のハイキングだけでしたら開山期間以外でも歩けます。
ただし、今回6月30日に行ったところ、まだ残雪が残って遊歩道を1週することが出来ませんでした。また、以前9月初旬に行ったときにはオンタデも紅葉してとてもきれいでしたので、 9月頃も良いかと思います。
一周50分の周遊コース
一番シンプルで分かりやすい概念図はこちらかと思います。これは五合目に立ててあった看板で、以前撮影したものです。
五合目から20分登って新六合目に到着、右(赤い線)に10分トラバースして火口の脇に(第一火口縁)。
火口に沿って少し下り、赤い線をたどり20分かけて駐車場に戻ってくる、というコースです。
最後の20分は樹林帯になりますが、このときは「残雪があるため樹林帯は通れません」との看板が立っていました。
また、コースタイムはばらつきがあるのは当然なのですが、富士宮市観光協会では最後の20分を40分と見積もっています。実際に歩いていないので分かりませんが、余裕を持って行動したいところです。
地形図で見るとこのようになります。
今回私たちは、1周せずにピンクの線を往復して帰ってきました。
ここ(第一火口縁)まで行くと、火口の大迫力を間近に見ることが出来ます。
宝永山の火口は3つあり、上から下に第一火口、第二火口、第三火口となります。地図上の2420m付近が第一火口の火口底です。
宝永山2693mを往復するにはコースタイムでプラス2時間が必要です。
下の写真は、だいたい上の地図と同じ辺りを撮影した空中写真です。
宝永山の山頂と南東斜面には雪がありますね。
この写真で見ると火口はものすごく深く見えますが、第一火口縁から火口底まではさほど遠くなく、5分の下りです。
小学生(3~4年生くらい)の団体が遠足に来ていましたが、火口底まで行くんだと言っていました。
- 出典:国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス
宝永山とは
宝永山とは、富士山の南東側斜面で起きた噴火でできた山です。静岡県側から富士山を見ると、右手(地図で言えば南東)の斜面のほうにある大きなでっぱりが宝永山です。第一火口がはっきりとみえます。 写真の提供:石川製茶さん
宝永山を形作った宝永の大噴火は江戸時代、徳川綱吉の末期に起こりました。
宝永4年11月23日(西暦では1707年12月16日)のことです。溶岩が流れるタイプではなく、大量の火山灰を広範囲にわたって噴出したそうです。火山灰は江戸の町まで届きました。降り注ぐ火山灰で日光が遮られ、明かりを灯していないと日中も暗いぐらいだったといわれ、降り積もった灰は5cmとか10cmなどという文献も残っています。町では小さい塵となって咳の元となって人々を苦しめ、田畑に積もり農作物を全滅させた上に耕作不能にしたりと、当時は大災害だったようです。
これ以来、現在まで富士山では噴火は起こっていません。
現在では、「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」 を活火山と定義しており、富士山は日本は110あるうちの活火山の1つです。
宝永山ハイキングレポート
2014年6月30日。10時過ぎに富士宮口五合目の駐車場に到着。翌日の7月1日は山梨県側の吉田ルートが開山。しかしニュースでは残雪が多く残り、登山者には携帯トイレが配布されるとの情報も。静岡県側の3ルートの開山は今年から7月10日の予定。開山まではまだまだだと言うのに駐車場には100台くらいは車が停まっていました。
五合目トイレ事情
開山前なので富士宮口五合目の五合目レストハウスのトイレは使えないかと心配だったけど、使えました。
洋式もあって大変に助かります。
雨水で手が洗えるようになっていました。
6月30日であるこの日は売店や食堂はやっていませんでしたが、開山期間には五合目レストハウスがオープンします。このテラスからは駿河湾方面の景色が眺められます。宝永山に遠足に来た小学生が集まってミーティングをしていました。
登山口から登り始める
10:40 登り始めます。風が少しあり、肌寒いのでみんなウィンドブレーカーを着ます。標高2400m。
すぐに公衆トイレがあります。こちらも開山前でもすでに使える様に準備されていました。チップ制100円。
散策に来ている人もチラホラいます。山岳救助隊の方々が開山に向けて道のチェックなのか下見なのか、巡回をされていました。
(新)六合目までの道
道のほとんどは広く、ブルドーザーでならしてある箇所も多く危険なところはありません。
75歳の義母さんは毎朝40分ほど散歩している健康な人ですが、やはり足が埋もれるようなザラついた斜面は歩きづらそうでした。自分で杖を用意してきていたのでそれでよいかな、と思いましたがこういうときにこそ登山用のトレッキングポールを貸してあげるべきだったと大変後悔しました。
若い人は不安定な足元でも筋肉を使ってバランスを取るのはなんでもないことですが、やはりシニアの方だとそれがしんどそうに見えました。絶対両手にトレッキングポールがあればもっとラクだったと思います。
11:15 歩き始めて35分後、新六合目の宝永山荘に到着。山小屋もたくさんの金剛杖を用意し、開山の準備に追われています。地図では六合目と書いてあるものもありますが、山と高原地図や地形図に拠ると、宝永山荘と雲海荘のあるこの地点は新六合目と書かれています。
山小屋を過ぎるとすぐに、道標があるので確認すれば間違えることはありません。こちらの道標には六合目と書かれていますね。
六合目からのトラバース
この先に見える道は平坦です。ここから10分間のトラバース(斜面を横切ること)ですが、このときは雪渓が少し残っていました。
雪を踏まなかったとしても、こういうところは土が柔らかいのでゆっくりと注意してわたります。
2500m地点であるこの辺りは本来ならハイマツが出てもいい標高なのですが、富士山ではハイマツ帯が欠落しているそうです。代わりに矮小化した(標高の影響で背が低くなった)カラマツの木から新緑の葉っぱが夏に向けて芽を伸ばしていました。黒い土の上ではひときわ鮮やかです。
第一火口縁に到着
11:30、第一火口縁に到着。すごい迫力です。
歩き始めてから50分かかりました。途中で1歳の子供をおんぶしたり4歳の子供が雪渓を通ったりしたので少し時間がかかりました。
写真の右よりの丸っこいピークが宝永山。左下の雪田の残る辺りは第一火口底です。斜面に道が見えますが、このザラザラの斜面を稜線(馬の背)まで上がるのに1時間かかります。
風がありましたが、せっかくなので持ってきたゴザを敷いておやつを食べました。
地面は予想外にも暖かかったです。
しかし風が吹いていてガスも出ていて、さらにみんな軽装備で来てしまったので子供たちが風邪を引きそうな気がしてのんびり休むことは出来ませんでした。いかに短距離と言えども、標高の高いところではきちんとした装備をしなければいけなかった、と反省したのでした。現にこの後、寒さか眠さか分かりませんが全くしゃべらなくなった1歳の子供をおんぶして私だけ一足先にダッシュで車に戻りました。
75歳の義父母の様子からは「これくらいの往復がちょうど良いな」、という感じも伺えました。青空が広がっていたら違ったかもしれません。
せっかく来たのだからじっくり楽しみたい、という人はちゃんと足元まであるレインウェアを全員分用意したほうが良いでしょう。
30分ほどで戻ってきた義父母は、「たいそう珍しい経験をさせていただきました」と、とても満足気でした。
おまけ
下の写真は、9月上旬の富士宮口五合目から山頂を見上げた写真です。
オンタデという、こういった栄養が少なくて荒れた大地に他に先駆けて咲くパイオニア植物が、紅葉しています。斜面がカラフルになってきれいです。
吉田ルート五合目は売店やレストランも多く賑やかな雰囲気ですが、私は駐車場からすぐにこのように富士山の斜面が開放的に見える富士宮ルートが一番好きです。
なので、たくさんは歩けないけど富士山気分を味合わせてあげたいお年寄りの方には、富士宮ルートの散策をおすすめしたいと思います。