富士山の山開きと登山時期。混雑を避けるためには?
富士山の山開きとベストシーズン
富士山の山開きは ”7月1日” と ”7月10日” の2パターン
コロナのため開山されなかった年もありましたが、開山日は通常、山梨県のルートは7/1、静岡県のルートは7/10という2パターンです。閉山日は全ルート同日の9/10です。
富士山の開山期間は、かつてはどのルートも7/1から8月末の2ヶ月間を中心に前後していましたが、世界遺産登録後の2014年以降から大きく変わり、ここ数年はこのパターンで落ち着いています。
開山てなに?
富士登山者にとっての「開山」「山開き」とは、公式に「一般のみなさん、登山していいですよ~」とオープンにされた期間です。
富士山の登山道にはゲートがあるわけではないので、開山期間に関わらずいつだって登山道に入れますし、登れてしまいます。実際に冬山を登るような登山者は入山し登山しています。日本各地の山で「山開き」のイベントは行っても、「開山期間」を定めている山は多くないでしょう。
しかし富士山は特別で、普段登山しない観光客や登山初心者も訪れる山です。開山期間を定めて、登山道を整備したり、山小屋も営業したり(売店やトイレも使える)、救護所を開いたり、事故情報を発信したりして特別な安全対策を取る必要があります。
また大勢の人の移動があることから、シャトルバスの運行、バスの増便、駐車場の開設などの便宜がはかられています。気象の面から考えても、6月いっぱいは残雪、9月半ばからは降雪の心配もあります。自然環境の厳しい富士山で安全に登山するために設けられるのが開山期間です。
富士山の山開きの期間の定番
- 山梨県側(吉田ルート)7月1日 ~ 9月10日
- 静岡県側(富士宮・須走・御殿場ルート)7月10日 ~ 9月10日
- お鉢巡り(山頂1周)のルート 7月10日 ~ 9月10日
開山日はほぼこの流れですが、毎年オフィシャルサイトにて発表されます。
富士山頂に行くには4本の登山道(ルート)がありますが、歩くルートが山梨県か静岡県のどちらにあるかによって、歩ける期間が異なる点に注意が必要です。それぞれの開山期間に合わせる形で山小屋も営業されていますが、御殿場ルートなど登山者が少なめのルート上にある山小屋は、開山期間であっても早めに閉めるところもありますので、利用したい場合は事前に電話で確認すると安心です。
また、開山期間=登山者が歩きやすいように登山道が整備されている期間ですが、これはあくまで「予定」であることを頭に入れておくと良いでしょう。気象状況により登山道の除雪が遅れることもありますし、大雨によって登山道が崩れたりする可能性もあります。 安全が確保できないと判断された場合は、開山期間であっても登山道が通過できないこともありうることを承知しておくとよいでしょう。
開山日でも通れないことがある?
山梨県側では7月1日に山頂で神事を行う伝統を重んじるという理由でこの日の開山を重視しているようですが、実際には残雪も多いため、静岡県側の3ルートでは7月10日を開山日の基準としています。実際、開山しても山頂まで通れなかったり制限があることも度々ありますので注意が必要です。雪は自然に溶けて消えるわけではなく、ブルドーザーでかき分け、除雪や整備をして通れるようになります。それから重機で資材を運んでトイレなども使用できるようになるわけですが、それまでの天気等により作業が遅れることがあるからです。
このページのトップの写真は2009年7月4日の吉田ルート上部です。この年も7月1日に開山でしたがこのように雪が多く残っていました。登り用のルートは頂上まで除雪されていましたが、下り用ルートは積雪のため閉鎖されていました(吉田ルートは登りは岩場の道、下りはブルドーザーで広くならした道、と道が2本あります)。そのため登り用のルートを、登る人と下る人とで譲り合っての通行となり、特に岩場部分ではいずれかの人が待つため、通行にかなりの時間を要しました。
また、「危険ですので軽装備の人はこれより先に登ることは控えて下さい」、との呼びかけも行われており、ビニール合羽や運動靴の人は声を掛けられていました。
2014年には、開山はしたものの積雪の影響で山頂付近のトイレの整備が整わずに携帯トイレを配布したり、下の方の山小屋でなるべく用を足してくるように呼びかけたりという対応が行われました(この年、富士宮ルートと御殿場ル-トが山頂まで全線開通したのが7/18でした)。
また、残雪が原因ではありませんが、2019年には吉田ルート上で神社の石積みが崩れ、8.5合目から山頂までの登山道は開山から7月9日まで通行止めになりました。
世界遺産に登録された現在では、以前よりも情報がわかりやすく早めに公開されるなど工夫がされていますが、自然環境なのでイレギュラーはいつでも起こりうるものだ、という心構えでいるとよいでしょう。
富士登山のベストシーズン
山開きの日から約2ヶ月間の富士登山シーズンですが、ベストシーズンはこのうちの梅雨明けの7月下旬(7月20日頃)から9月上旬になります。7月前半はまだ梅雨の最中なので天気が崩れる事が多く、晴れている日にタイミング良く登山日を調整することが難しくなります。雨降りの登山は難しく、また富士山からの眺めも楽しめない事も多いので、7月下旬の梅雨明けからの登山がおすすめです。
実際の梅雨明けはいつ
過去の富士山地域の梅雨明けはこのようになっています。少し前のデータになりますが、年によってバラつきがあることがわかります。
2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
関東甲信地方 | 7/21ごろ | 7/10ごろ | 7/28ごろ | 7/6ごろ | 6/29ごろ | 7/24ごろ | 8/1ごろ |
東海地方 | 7/21ごろ | 7/24ごろ | 7/18ごろ | 7/15ごろ | 7/9ごろ | 7/24ごろ | 8/1ごろ |
富士登山を計画するにあたって、梅雨開け情報は重要です。過去の登山者数も、梅雨明けが遅いか早いかによって、かなり増減があります。
たとえば富士山の世界遺産登録にともなって登山者が激増すると見込まれていた2014年では、梅雨明けが例年よりも2週間遅かったことから前年よりも2.5万人減となりました。雨の影響で残雪処理が遅れ、登山道の開通が遅くなるという影響も出ました。
下のHPでは梅雨入り・梅雨開けが発表されるたびに更新されているのでご確認ください。
週末やお盆は大混雑。平日の登山がおすすめ
7月下旬から9月上旬までが富士登山のベストシーズンと書きましたが、もちろんこの時期の富士山は大勢の登山者で賑わいます。特に週末やお盆の時期には登山者であふれ、時間帯によっては登山道は大渋滞にも。山頂でご来光が見たい、と思っても前がつっかえて進めないこともありますし、またゆっくりと登りたいのに後ろに人が続いていて気持ちが急かされることもあります。
ですのでマイペースに登りたい人は、週末やお盆を避けた日程、できれば平日で予定を組めればベストです。また週末やお盆は山小屋もすぐに予約でいっぱいになるので、この時にしか予定の開かない人は早めに予約を入れましょう。
富士山の混雑を避けるために
週末やお盆は大混雑。平日の登山がおすすめ
7月下旬から9月上旬までが富士登山のベストシーズンと書きましたが、もちろんこの時期の富士山は大勢の登山者で賑わいます。
特に週末やお盆の時期には登山者であふれ、時間帯によっては登山道は大渋滞にも。山頂でご来光が見たい、と思っても前がつっかえて進めないこともありますし、またゆっくりと登りたいのに後ろに人が続いていて気持ちが急かされることもあります。
ですのでマイペースに登りたい人は、週末やお盆を避けた日程、できれば平日で予定を組めればベストです。また週末やお盆は山小屋もすぐに予約でいっぱいになるので、この時にしか予定の開かない人は早めに予約を入れましょう。
混雑を避けるために
登山者側だけでなく、県や警察や受け入れ側も混雑を避けてもらいたいと思っています。世界遺産となった富士山では、より無事故で登山できるような管理が期待されるからです。
混雑の回避は、事故防止や安全体制の確保のためにも重要です。
そこで「混雑予想情報」が積極的に公表されています。
お盆や海の日だけでなく、土日はどのルートでも平日の1.6~2倍超の登山者数です。富士登山では混雑ポイントが年末年始の新幹線のように明白です。日にち・ルート・時間を調整して混雑をずらすことは、装備を整えることと同じくらい重要です。
混雑のイメージを具体的に知りたい人は、こちらのページをご参照ください。
混雑する時間帯
吉田ルートの8合目では「16 - 17時」と「23時 - 25時」の1日に2回の大きなピークがあります。つまり吉田ルートでは、夕方に小屋に到着し仮眠をとって深夜に再出発し山頂で御来光を見る、というパターンの登山者が多いことになります。渋滞の中登りたくない人はこのパターンと重なることを避けましょう。(環境省統計より)
なおマイカー規制期間中の駐車場やシャトルバスの料金等の詳細な情報は、「富士山マイカー規制 シャトルバスの料金と駐車場、時刻表 」でご確認下さい。
7月初旬と9月上旬の登山の記録
開山期間以外の登山道の通行はできません
山梨県・静岡県両県のホームページ等では「富士山開山期間以外の登山道の通行はできません」と明示されています。
海外の山では厳重なゲートが設置されて入山自体が不可能なケースを見かけますが、富士山ではそこまで厳しく制限がないため入山しようと思えばできてしまいます。しかし気象の変化が特に大きい富士山のオフシーズン登山は以下の理由により遭難リスクも高くなりますので初心者は辞めるべきです。
- 寒さが厳しくなる
- 山小屋での食料や水の調達・仮眠や休憩ができない
- トイレが閉まっている
- 救護所も終了し、万が一の時に小屋の人も頼れない
- 荷物が重くなる(防寒用装備、すべての食料・水、携帯トイレ、緊急グッズなど)
下記のリンク先は、7月初旬と9月上旬の富士登山の日記です。参考までにご覧下さい。