初心者のための登山とキャンプ入門

雨天の登山あれこれ1 ~雨のときは山に登るのか~

雨の登山 稜線歩き

いざ計画しようと思った時、「あれ、雨の時は山に登るのかな?」って、初心者の方は疑問に思うのではないでしょうか。

もし登山中に雨が降ってきてしまったら、レインウェアを着るのはわかります。
では、これから雨が降りそうだなというときの計画は?行くかどうか迷ったら?いざ現地に行って雨だったら?など、ベテラン登山者たちがどんなふうにしているのか、ご紹介します。

多くの登山者のパターン

雨の樹林帯を登る
雨の樹林歩きは緑がキラキラして楽しい

ずばり「日帰り登山なら、雨なら中止」というのが多くの登山者の行動だと思います。
泊まり登山なら「明日(登山一日目)が決定的に雨ではないなら、とりあえず現地まで行ってみる」という判断もあります。

これはつまりどういうことかと言うと、「雨の程度や確実性」「家からの距離」「山行日数」「山行の目的」、「季節」「雨のときに危険な山か」、、、などを総合的に考えて決める、ということになるわけですが、そんな風に言われてもピンと来ないと思うので具体的にみてみましょう。

雨の日に登らない理由

雨の日に山登りをしたくない大きな理由は次のようなものだと思います。

  • 景色が見えなくてつまらない 
  • 服や荷物が濡れて不快 
  • 下山後の片付けがイヤ 
  • 寒い 
  • すべって転倒の危険が増える

などでしょうか。いっぱいありますね。

では「降るのかな?降らないのかな?」と迷ったときはどうでしょうか。朝から雨が降っている訳ではないけど、良い天気でもない。こういう日って、じつは案外多いですよね。
一人ならもちろん、「行きたいか行きたくないか」、その時の気分だけで決めたら良いのですが、複数人の場合はそういうわけにいきません。

雨天時の計画変更についてあらかじめ決めておこう

何人かで登山する場合は、「雨天の場合は…」を決めておいて、計画書にも書いておくのがスムーズでしょう。
「やっぱ止める?」と気心の知れた2人がメールのやり取りで決められるような間柄ならその必要はないかもしれませんが、3人以上になってくるとバタバタします。朝になって「どうする?いく?やめとく?とりあえず行ってから決める?」などと相談して決めるのは面倒です。

集合場所に向かってそれぞれが自宅を出発する時刻も違うし、前日に昼食の材料を買っておくかどうかにも影響してきます。 早朝にスムーズに連絡が取れるとも限りませんし、なんだかんだで誰かが始発の電車に乗り遅れたりして、せっかくの登山計画に水を差すようなことになったらもったいないですよね。

リーダーを決めておくことは大事

雨で登山中止
テント場まで来て一泊したものの、強い風と雨のため満場一致で下山

登山では、グループを「パーティー」と呼びますが、必ずリーダーを決めます。どんなお気楽なハイキングであっても、決めておいた方が無難です。 どんな時でもリーダーが責任もって、「雨天時の登山についてどうするか決めるのは、自分の仕事!」という意識を持っておくことが大切です。

具体的には、もし交通費が何千円もかかってしまうようなそこそこ遠い山で、リフレッシュとかじゃなくて「○○山登頂!」がねらいの、目的がはっきりしたちょっと気合の入った登山なら「前日の何時ごろ決定」として、天気予報を見ながらリーダーが中心に連携を取って延期の判断をするやり方があります。小学校の運動会みたいな感じですね。
目的がはっきりしていれば事前に決めやすいというところはあります。

迷ったらとりあえずの「現地集合」もアリ

でも、そこまで気合入れて遠出する登山でもなく…事前の検討もなかなかめんどうだなあ…う~んどうしよう、と迷った場合は「とりあえず現地集合」にしてしまうのも一案です。

人々が登山に出掛ける場合、それは「再会」を楽しみにしていたり、出不精だった自分が出かけることそれ自体に意味がある人もいます。とくにサークル的に「定期的に山行をしたい」と思っている場合、「延期」や「中止」が重なると疎遠になったり、テンションも下がってきてしまいます。
「どんな天気でも現地集合」と決めておけば、朝の検討や連絡ミスの混乱、それから「判断しないと!」という仕事からは解放されます。もちろん台風や前もってわかるはっきりとした大雨の場合などは別です。

判断が難しい時は「とりあえず、登ってみる」もアリ

蝶ヶ岳 山頂
雨の中とりあえず登ったらめっちゃ晴れた蝶ヶ岳の山頂

では複数人のパーティーの場合で、現地にとりあえず集合したとします。その後、登るかどうかの判断はどのようにしたらよいのでしょうか。

「降ってないけど、降りそう」というような天気で、天気予報では曇りマーク。この先本当に雨が降るのかどうか、正解を当てるのは難しいですよね。
そういう時は「とりあえず、計画通り登り始めて、様子をみてみる」も、一つの方法です。

例えば途中で引き返して合計1時間しか歩けなかったとしても「3年ぶりに登山靴を履いて歩いたわ」という人が居たりして、その人にとっては「もう何年も山行ってないわ~」というネガティブな記録は更新され、次回の登山は気軽に参加できるものになるでしょう。
「せっかく遠くまで来たのに残念」という人の気持ちも、ちょっとでも歩いてみた事で納得するかもしれません。
また、たった1時間の登山であっても「この山はこういう雰囲気なんだな~。これは、晴れた日にぜひまた来たい!」という収穫を得るかもしれません。

そもそも、登山ではレインウェアなど雨の準備をしてきているわけですから「運動不足解消に」という理由だけで雨の登山を行っても良いわけです。後から「けっきょく降らなかったね~行けば良かったじゃん」となるよりも、よっぽどいいですよね。

ただ、帰宅後にレインウェアや靴を干したり、という手間はありますが、道具のメンテナンス、これも経験になります。

別の計画案をもっておく

温泉
雨が降ったら近場の名湯へ

やはり人気は温泉、料理

家を出る頃は降っていなかったのに現地に集合してみたらけっこうな量の雨が降っていて、満場一致で「やめよう!」ってなった場合。 また、とりあえず登ってみたけど雨が強くなったので1時間で引き返してきた場合。

そのあとの楽しみの大きな候補は、やはり一番には温泉でしょう。だいたい登山口や下山口付近には、旅行雑誌には載らないけど登山ガイドブックや市町村のホームページには小さく載っているような、風情のある温泉があるものです。

リーダーはあらかじめいくつか候補を調べておくことがコツです。時間もつぶせるし、思わぬ発見があったりして楽しいものです。
あとはご当地のおいしいもの。お蕎麦屋さん、湯葉料理、アユ料理など、山里ならではのお店ってすごく多いですよ。

散策、観光

もし温泉や店がなかったとしても、とりあえず行動食と飲み物はそれぞれ用意してきているはずなので、傘をさして周囲を散策するのも良いですよね。

登山口の近くには雨でも平坦で傘をさしておしゃべりしながら歩けそうな遊歩道や、滝などもあったりするので、これも事前に候補を調べておくと良いです。
日光の山とかのように観光地が近くにあることもありますし、鍾乳洞、小さな美術館、郷土資料館なんかもけっこうあったりしますよ。

そば

なにもない場合

もし本当に「何にもない!」ということだったら、帰宅がてら自宅方面の大きな駅までみんなで戻って、車中スマホで良さげなお店を見つけておいて、わいわいとランチをたのしむ。または昼から一杯ひっかけながら、次回の計画についておしゃべり。

こんな感じでいくつかのパターンを用意しておけば、ただ単に「雨で中止」とするよりも、次回の登山に繋がりませんか。

私の経験では、「雨だったから行かなきゃよかったじゃん~時間ムダになったわあ~」と登山をする仲間がグチる様子を見かけたことはありませんでした。むしろ、「こういうのはどう?」って建設的な提案をしてくれる人や、どんな状況でも意義を見出して楽しめてしまう人が多い気がします。登山者ってそういうところ、ありませんか。

初心者なら、雨でも登ってみよう

雨の百間平 南アルプス
南アルプス百間平。身を隠すことのできない場所では休憩も難しい

初心者の方が登山を始めようというときに「いつ雨が降るか?」を気にしすぎるのもチャンスを先延ばししそうですし、「絶対に雨に降られないように」と予測して避けるようにして登山することも難しいのではないでしょうか。

実は登山中に一時的に雨が降ることはよくあります。「山の天気は変わりやすい」と言いますが、曇りの予報だってパラパラと降ることはよくあるし、例えば夏に3日間の縦走をしようと思ったら、雨でもなんでも、とにかく歩いて次のテント場や山小屋まで進まなければいけないこともありますよね。
むしろ雨が降るのは普通のことだ、と思ったほうが気が楽だと思います。

初心者だからこその、雨天登山のすすめ

雨でぬかるんだ登山道
雨でぬかるんだ登山道。

そこで、雨をそんなに恐れずに、前向きに雨天山行をしてみてはどうでしょう、と提案したいです。

実は、雨天中の行動というのは、晴れているときよりもテクニックを要します。濡れた岩で滑らないように、というだけではなく、たとえばザックの中身を濡らさない配慮、体が蒸れて汗をかかないようにする工夫、休憩時に体が冷えないようにする工夫、サッと行動職を食べて休憩を終わらせる行動、、、などです。
雨が降ってレインウェアを着ているというだけで、音が遮られ体も動かしづらく、注意力が奪われます。

そんな不自由な環境でも冷静に快適に過ごせるようになるには、経験することが一番です。

もし、この先の登山で「いつか雪山に登ってみたいな」などと考えるのであれば、まさに雨天行動を快適にこなすテクニックは一本の線でつながっていると言っても過言ではありません。

ベテランと初心者のちがい

雨で視界が悪い山
こんな視界の時、地図を読める力が生きてきます。

ベテラン登山者の行動を見てみると、雨天中での行動にソツがありません。

たとえばベテランは、雨が降ればサッとレインウェアを着て、ズボンのスソを泥だらけに汚すこともなく上手に歩き、休憩も木陰でサッと立って済ませ、小降りになれば知らぬ間にレインウェアの上を脱いで帽子だけになっていて、帰りのバスに乗るころには何事もなかったかのように片付けが全部終わっている、というふうです。

実は、慣れていないとこうは行きません。
レインウェアやザックカバーを付けるタイミングを逸してザックを濡らしたり、レインウェアを着たかと思えば首元までチャックをピッチリしてしまって気が付いた時には汗だく。 休憩時にガサゴソと雨の中で荷物を広げて濡らしたあげくにビニール袋を風に飛ばしてしまい、地図も雨でぐしゃぐしゃ。
トイレに行くときに、いつものように背中を上にしてザックを置いたので背中のパッドに雨が染み込んで冷たい。雨が上がったあとにべちゃべちゃのレインウェアを丸めてザックに突っ込んだので他の荷物も濡れてしまい、家に帰って片付けるのが憂鬱。レインウェアの傷みも早い…という具合にです。

山小屋で濡れた衣服を乾かす
山小屋によっては濡れた衣服やレインウェアを乾かす場所を提供してくれる。

雨天行動は経験値になる

ガスで視界がない 登山

これらはとても細かいことなのですが、テント泊での縦走など数日にわたる登山になってくると、こういった小さな行動テクニックの積み重ねが山行のスムーズさや仲間のストレスにも影響してきますし、時には安全にもかかわってきます。

ポジティブに言うなら、雨天行動を経験して慣れておけば、大雨の中でもうろたえずにサッとかっこよく行動できるようになります。
雨天中の行動は不自由であるがゆえにトレーニングにもなるし、一度経験しておくと自分のレインウェアの状態や登山靴が染みてくる程度など、自分の装備についてもわかるし、メンテナンス方法も勉強できます。

それに、じつは注意すべきは「雨」だけでなく、「風」もあります。
「雨」がなくて「風」だったり「雨&風」と同時のときもあると思いますが、この「風」の中での行動もまた、気をつけることがいっぱいなのです。そう考えると、いろんな気象条件を経験しておいたほうが確実に経験値が上がり、そういうときにこそ、他の登山者の良い点をマネして自分の登山技術があがります。

不快な雨をものともせず悠々と歩く自分たちもかっこいいですし、それに、雨があるから晴れの登山の気持ち良さも痛感します。
なので初心者の方には、雨の登山を嫌がらずに一度は経験としてやってみるのも良いと思うのです。

ただその時、岩場とかハシゴとかクサリ場とか、滑りやすい箇所のあるルートは避けてくださいね。

登山道上の梯子

あと、絶対に服に水がシミないレインウェアを着ていることは必須です。濡れた体で万が一疲労困憊になってしまうと夏でも低体温症で亡くなることがあります。

雨に打たれビショビショのかっぱと登山靴
一日中雨に打たれビショビショになったレインウェアと登山靴

雨の中ひたすら歩く楽しみ

雨が降った登山の後には多くの人が「景色が見えなくて残念だった」「お天気に恵まれなくて」「次回は晴れた日に」などと口にしますが、私は実はそんなに残念に思ったことはありません。

もちろん晴れたほうがうれしいのは確かなのですが、「この山の雨の景色を見た」と感じますし、いろんな天気の山の表情のうち、今日は雨だった、という感じです。自分の目には見えなくてもこのガスの先に雄大な景色が広がっているのは事実だし、何よりも「地球上のこの部分を確かに歩いた、頂上にも立った」という事実は同じだからです。

また、真っ白なガスの中の非日常的な雰囲気もけっこう好きです。特別なところに来た感じがします。ああいう雰囲気は、山に来ないと感じられないと思うし、もし景色が全く見えなかったら、自宅に帰ってGoogle Earthで「こんなところを歩いたんだなあ」「晴れていたらこんな景色が見れたのかなぁ」と想像します。

まあ、できれば、パソコンで見る絶景よりも、その場で見る絶景のほうが良いに越したことはないのですが。

雨の日の登山 丹沢

あと、「この雨はいつ止むんだ」と思いながら、ひたすら下を向いて歩く時間もなにげに好きです。

雨のときはみんなフードをかぶっていて会話が聞き取りづらいし、視界が狭くなっているのでよそ見していると滑ったりして危ないので、おしゃべりせずにだまって黙々と歩くことが多いと思います。
1時間位、ずっと雨に打たれながら、だまって、ただ歩く。修行のように。偉い人も普通の人も、初めて会った人も友達も。この時間がいつか終わって、次の場所に到着して、良い景色が見られることとか、おいしいものを食べることを、ただ楽しみにしながら。

なんか、そういう時間を共有しながら歩く、こんな原始的な時間って現代の日常生活の中では他には無いと思いませんか。
さらに強い風なんかが吹いてきてちょっと困難を感じたりなんかしたら、到着したときにはみんな兄弟、みたいな連帯感。少なからず、多くの登山者が経験しているのではないでしょうか。こういうのも天気の悪い中での登山だからこその経験であり、いろんな自然の表情があるからこそ登山の良いスパイスになり、登山がやめられないのではと思います。