初心者のための登山とキャンプ入門

登山で泊まる場所「山小屋・テント場・避難小屋」の解説

山小屋 イラスト

日帰り?宿泊、テント泊?登山のパターン5つを紹介 】では登山のパターンとしての、山に泊まる場合と泊まらない場合の登山スタイルを紹介しました。「泊り方」によっていろんな行動パターンがありました。

このページでは、「泊まる場所」である山小屋・テント場・避難小屋について、メジャーな順番からもう少し詳しく説明しています。

山小屋

山小屋の例

登山で宿泊しようとするとき、一番手軽な方法といえばやはり山小屋です。食事付きにすれば荷物が軽くなるだけでなく、食事を作る時間も休憩していられるのでこれほどラクなことはありません。

山小屋は宿泊以外にも、売店や軽食を提供するオアシスだったり、荒天時は登山者にとってのシェルター的役割を果たしてくれます。登山者が事故に会わないよう、登山道の危険箇所や水場や天気を知らせる情報基地でもあります。多くのトイレも、山小屋が設置してくれているからこそ使えます。

周辺の迷いやすい道にペンキで案内を付けてくれたり、くずれた道の補修を担ってくれることもあります。万が一の遭難のときには力を貸してくれることもあります。

これらは山小屋の義務ではないのでアテにすべきものではありませんが、こういった意味で、町なかの宿泊施設とは違う重要な存在といえます。

相場の料金

素泊まり(食事なし)で4,000~5000円程度、一泊二食付きで7000円~9000円が相場です。

予約は必要?

ここが一番、町の宿と違う点です。「基本、予約はしてください」という山小屋が多いですし自分の安心のためにも予約したほうが良いです。食事の準備もありますから。

しかし、富士山など特別な山を除いては、予約無しで突然来た登山者も受け入れてくれるのが、多くの山小屋の特徴です。山では天候の急変などで予定外の山小屋に泊まらないといけないこともあります。

山小屋は登山者にとって緊急時に身を寄せることのできるシェルターでもあるので、荒天の中「満室です、お帰り下さい」というわけにはいかないからです。

山小屋の混雑について

人気の山小屋のお盆などの混雑時は、一畳に2人とか1枚の布団に3人で寝るなどの状況も起こりえます。

そういった状態は緊急事態ではなく繁盛期には「通常」として予約を受け付けていたりしますので、早くに予約したところで混雑する時期に行けば混雑に巻き込まれることになります。上に書いた、「予約以外も受け付ける」という山小屋の性格によるものです。

混雑を避けるには

このような状況を避けるには、自分でトコトン混雑を避けるしかありません。

3連休とかお盆の、人気の宿泊地の山小屋には泊まらないことです。例年の混み具合はだいたい同じですので、山小屋に電話して素直に様子を尋ねるのがおすすめです。山小屋のほうでも混雑を理解の上で利用してもらいたいので、様子を教えてくれると思います。

もしくは確実に個室を予約するか、定員制の部屋を確保するようにしましょう。

大きな山小屋
大規模な山小屋は受け入れ枠が多く助かるが、風情は劣る

個室について

相部屋が基本なので何もリクエストしなければ相部屋になると思いますが、個室を設けている山小屋も増えてきています。個室の場合、多くはプラス料金が必要です。
しかしより多くの登山客を受け入れてあげたいということから、繁盛期は個室の設定をなくしている山小屋もあります。登山客にとっては泊まれなくなってしまったら、登山自体が出来ないからです。

女性専用の部屋は?

部屋の男女分けもしかりで、空いていれば対応をしてくれるところもありますが、繁盛期は対応していないなどもあります。「とにかく登山者に体を横にする場所を提供する」というのが命題といった感じです。

寝具は?

布団のところもあれば、寝袋を貸してくれるところ、毛布を貸してくれるところなど、様々です。シーツやカバーが洗いたて、ということはめったに無いのではないかな、と思います。

上で書いたように、値段が高い山小屋だからといって良い寝具とも限りません。どうしても気になる人は山小屋に電話して聞いてしまっても良いでしょう。
洗ってあるシーツとかがないとイヤだとか他の人が頭を乗せた枕を使うのは気になる、と言う人はインナーシュラフや大きめのバンダナなどを準備して枕や首元など直接肌に触れるところに敷くなどの対策を取ると良いでしょう。

寝袋を貸してくれる山小屋
寝袋を貸してくれるパターン
布団と毛布を貸してくれる山小屋
布団と毛布を貸してくれるパターン

山小屋のサービスの質のちがい

一般に、標高が低い場所にある山小屋のほうが価格が安いです。または、同じような値段でもサービスが良いなど。標高が高くなれば価格が高く、サービスも低くなってくる、という性質があります。
町から遠ければ遠いほど、食材やゴミの運搬に経費も人件費もかかるという事情からです。

それと同時に、標高には関係なく、しっかりした道路やロープウェイなど物資を運ぶ手段から近いかどうか、でサービスの質が決まるという面もあります。
標高が高くても、バスでじゃんじゃん観光客を運んでくるような場所にある山小屋は、一般の旅館と変わらないくらいのサービスが受けられることがあります。

また、ヘリコプターを使って物を運ぶような大規模な山小屋では、価格は高いかもしれませんが質の高いサービスが受けられる場合があります。

有名なものに北アルプスの白馬山荘がありますが、標高2,832mに位置するにも関わらず800人も泊まる事ができる大規模な山小屋です。一泊2食付きで大人一人10000円とお高めな施設ですが、展望の良いレストランでコーヒーと本格的なケーキのセットを頂くことも出来ます。

白馬山荘のレストラン
標高2832mからの眺望を楽しめる白馬山荘のレストラン

サービスが悪いとは

逆に「サービスが悪い」というのはどういったものでしょうか。これは、つまり「不便」と言い換えることができると思います。

最たるものは富士山の山小屋と言ってしまっても良いと思います。というのは、富士山の上部ではその地質上、水を充分に得ることが出来ません。
そのため、自由に無料で水を飲むこと、トイレのあとに手を洗うこと、寝る前に歯を磨くこと、シャワーで汗を流すことなどは出来ません。もちろんお金を払ってペットボトルを購入すれば水を使って手を洗うことはできますが、500mlで500円もします。

また、1年のうち夏のたった2ヶ月間しか利用しない施設を、30万人分、充分に機能的に整えておくことは出来ません。なので、宿泊客は水で清潔にすることをガマンし、水で丸洗いされていない布団にガマンし、窮屈なスペースで過ごす不自由さをガマンすることになります。

このように、同じような金額を出してもサービスの質はさまざまで、それは自然環境や交通事情に負うところが大きいです。

山小屋の食事

晩御飯については「もし町の定食屋で食べたら800円もしないだろうな」というような程度のものが多いです。素泊まり料金と差し引いて計算すると、晩御飯代としては2000円程度として計算されているのが多いと思います。

簡易的なパターンだとレトルトのカレーや温めるだけのハンバーグ、もうちょっと嬉しいパターンだと手作りカレーや煮物や焼き魚などの和食的なおかずがちょこちょこと温かい味噌汁や白ごはんおかわり自由など。
さらにもうちょと嬉しいものだと生野菜が付いていたり、といったふうです。

さらに山深く、登山者も団体では来ないような所にある山小屋では食事が提供できたとしても完全にレトルトのみとか、カップラーメンの販売のみ、などのパターンもあります。

山小屋の食事の例 普通の食器
普通の食器のところも
山小屋の食事の例 紙の食器
水がない山小屋では捨てられる食器のところも

ネットでは「最近の山ブームに乗じて豪華な食事を出す山小屋も増えてきた」などという記事も見かけますが、山小屋でありながら主人のこだわりで刺し身や牡蠣や鹿肉や地元の食材、山とは思えない手の込んだ料理を出してくれる山小屋は私の知る限りでは少なくとも30年前からあり、登山者の間では有名だったように思います。

朝食は、同様に計算するとだいたい1000円位と計算されていますが、町で食べたら450円といったところかなあ、というような簡単な和食が多いです。早立ちの人に対応して、前夜からお弁当で渡してくれるところもあります。

一泊2食料金とは別で、昼食におにぎりなどを注文できる山小屋もあります。

山小屋の朝食の例
平均的か、ややうれしい目の朝食

山小屋で寝るだけではもったいない

人が少なくのんびりとした山小屋には、小屋のご主人や他の登山客とのふれあいも目的のひとつにして泊まりにくる登山者もいます。

山小屋の主人の中には山も登山も人も好きで、登山者を喜ばせようとごちそうを振る舞ってくれたり、歌や音楽を聴かせるイベントを開いてくれたり、自由に読める漫画本をたくさん置いておいてくれたりと個性あふれる工夫を凝らしてくれている方が多くいるように感じます。

コタツのある居心地の良い山小屋
「こたつでどうぞおくつろぎください」と言ってくれているかんじ。小規模ならではの心地良さ

山小屋はテント泊に比べれば高いですが、その分背負っていく荷物はものすごく減りますし、食事はしっかり食べられ、睡眠も快適に取れたりと、金額分のメリットは充分にあるように思います。

こんな山小屋に泊まれたら、ベテラン登山者からいろんなおもしろい話が聞けたり、うまく行けば山友達ができたりと、初心者には良い登山のスタートの場となることでしょう。

テント場(てんとば)

テントの下に板を設置してくれているテント場
テントの下に板を設置してくれているテント場

山ではテントを張っても良い場所というのが基本的には決まっています。”キャンプ指定地”、”幕営地”、”テント場”。略して”テンバ”などとも呼ばれています。登山用の地図や登山用ガイドブックにはテントマークで表示されていますので、どこにテン場があるのかはかんたんに知ることが出来ます。

テント場の料金

一人あたり一泊500円とか700円とかの使用料を払い、その代わりに水場やトイレを使わせてもらうといったふうです。山の上ではゴミは完全に持ち帰りです。
下界でのオートキャンプは”テント一張につき5000円”などのような計算方法が多いですが、単独行の人も多い登山の場合は伝統的に人数ごとの計算です。予約は必要ありません。

料金は山小屋の受付に払いに行きます。「○人で○泊です」と伝えて支払います(このときのために、1万円札でなくて千円札や硬貨で支払うようにしましょう)。
受付の人は日付と人数を書いたタグなどをくれますので、それをテントの張り綱の一番見えやすいところにくくりつけ、あとで小屋番の人が巡回で確認に来る、という仕組みです。見えにくいところにあると誤解を招く恐れがありますし確認の手間取らせてしまいます。

水は有料のところも

稜線上などの水が十分に得られない場所にあるテント場では、有料で水を販売しているところもあります。市販されているような未開封のペットボトルで売られていることもあれば、煮沸済みの雨水を自分の水筒に入れてもらうパターンなどもあります。販売してくれるだけありがたいと思いたいところです。

テント場も混雑する

混雑する涸沢のテント場
混雑する人気のテント場の一つ。北アルプス涸沢

混雑するテント場に到着したら、お金を払う前にまず良い場所にザックを置いてキープし、その後ですぐに支払いに行くのがコツです。
空いていればそんな必要はありませんが、夏の北アルプスなどでは良い場所は早い者勝ちです。大パーティの場合で張る場所を確保できるかあやしくなってきた時は、途中でテント隊なるものを結成し先行して場所取りをすることもあります。

良いテント場のロケーション

良い場所とは、例えば傾斜があまりなく、床になる面にゴツゴツが少なく、大雨が降った時に水が集まって川になるような場所ではなく、トイレの風下近くではなく、しかしトイレや水場から遠すぎない所。
さらに言えば、できれば景色がよく、風が強ければ建物の陰になる場所、便利だけど大勢が直ぐ横を通らないようなところ、などです。

とはいっても登山でのテント場の宿泊は下界のキャンプとは違って滞在時間も一泊程度と短く、”寝られればいい”、という面もあります。なのでテントを張る場所さえ確保できれば、実際はそんなにロケーションにはこだわらないことも多いです。

でもやはりグループだと隣り合った場所に張れないと不都合でしょうし、他の登山者が設営を終わったあとに「スミマセンがちょっとテントをずらしてスペースを空けてください」っていうのは不可能に近いので、混雑が見込まれるテント場には早めに到着するように計画するなど気を配ったほうが良いでしょう。

テントをレンタルしている山小屋も

しかし、いくら混雑したテント場でも、ひとたびテントの中に入ってしまえば他人の目をさえぎったプライベート空間ができて一息つけるのが、山小屋とはちがうテントの大きなメリットです。

最近ではテントをレンタルしている山小屋もあります。山小屋で他人が気になってよく眠れない人は、睡眠時だけテントを利用し、食事は山小屋で取る、などの選択肢もありでしょう。

この場合、山小屋の宿泊客の夕食と重なる時間は利用できない可能性もあるので、軽食の提供時間を事前に確認しましょう。

テント泊が禁止されている山域

山と高原地図などを見て「あれ?テント場が無いぞ」と気づくこともあると思いますが、水質や自然環境への配慮の理由などから「テント泊を禁止」している山域もあります。

有名なところでは丹沢や東北の朝日連峰がそうです。そういうところでは指定の避難小屋や山小屋などを利用します。

テントを張るスペースが少ないテント場
テントを張れるスペースがもともと少ないテント場もある

山小屋宿泊者とテント場利用者は別

テント場の多くは山小屋と併設してありますが、テント泊登山者用の外のトイレや水場がある場合、テントの人は山小屋の中の施設は使えないのがふつうです。

かつて真冬に八ヶ岳のとあるテント場に幕営したときに、あまりに寒くて山小屋内の電気の入った温かい便座のトイレを利用して怒られたことがありました。
休憩室や食堂などは、テントの人でも昼食やコーヒーなどを注文したときに利用できることが多いですが、その他もろもろの乾燥室や読書室など山小屋内の施設は宿泊者のためであって、テント泊の人は基本使えないと考えておいて良いでしょう。もしわからない場合は小屋の人に訪ねてみましょう。

鉱泉などが出ているテンバではお風呂があることがありますが、テント泊の人はプラス料金を払って入浴できたりします。また、数は少ないですが、テント泊の人であっても山小屋泊の人と同じ夕食や朝食を取れる山小屋もあります。
八ヶ岳の赤岳鉱泉では、テント泊の人にはプラス2000円でステーキの夕食を食べさせてくれることで人気があります。

このように安い反面、便利さとはかけ離れ、さらに手間も多いし体力も消耗するテント泊ですが、混雑している時期でもある程度のプライベート空間が約束されていることはやはり魅力です。

避難小屋

避難小屋の内部の様子
土間&板敷きが避難小屋のよくあるパターン

有人の山小屋が少ない山域などでは避難小屋と呼ばれる建物がちょこちょこあったりします。これは、本来の目的は遭難した時などの避難用なのかもしれませんが、登山者が普通に宿泊で利用していることが多いです。

避難小屋泊は、山小屋泊よりも寝具と食料関係の荷物が増えます。寝袋、マット、鍋やコンロ、食料などです。居合わせた登山者同士譲り合って利用します。

大きさや建物のレベルも様々で、谷川岳の避難小屋は5人が入れるくらいのドラム缶のようなものだったし新品の雲取山の避難小屋は木の香りがして明るくログハウスと言ってしまえるくらいでした。

予約は必要なし

宿泊は予約もなく基本自由ですが、「緊急時のみで、計画的に宿泊することは禁止」と張り紙をしている避難小屋もあります。 多くは土間があり板敷きになっていて、寝る場所は小上がりになっています。
ほうきが置かれ、利用したあとは簡単に掃除をします。自由に書き込めるノートなどがあったりして、山行の思い出や避難小屋を維持してくれている人に感謝の思いが綴られていたりします。

夏場はふつうに営業している山小屋が、冬期のみ避難小屋として一部を無料解放している場合もあります。

避難小屋のテーブルと書き込みノート
自由な書き込みノート。こんなふうにテーブルまであると使い勝手が良い。

避難小屋のトイレと水場

多くはトイレがありますが、クオリティは原始的なところも多いです。 水場についてはある場合と無い場合があり、電気は無いのが普通です。

ただし北海道の山などにはトイレがない場合が多く、代わりにトイレブースがある場合があります。この場合は携帯トイレを使用しますが、使用後の排泄物は「回収ボックス」の設置があればそこに入れ、ない場合は持ち帰りとなります。
どこにトイレがあるか、どこに回収ポストがあるか、などはネットで事前に確認することができます。

携帯トイレ回収ポスト
北海道の登山口にある携帯トイレ回収ポスト

山小屋でもなくテントでもない避難小屋泊の魅力

テントと違って良い面は、隣り合った登山者とお話しする機会があったりすることです。
もちろん山小屋でもそれはできるわけですが、小屋の人に代金を払ってサービスを受けている山小屋の”客”同士であることと、だれも管理してくれていない無人の建物の中で一晩を過ごす”登山者同士”というように立場が変わると、なぜだか捉え方も違うように感じます。

このシチュエーションだと、特に風が強く吹く夜などは”運命共同体”といったふうになり、少人数なほど一体感が生まれるという、不思議な関係になります。持って来たごちそうを交換しあったり、これまでの登山の武勇伝を聞いたりと楽しいひと時を持てた思い出が多いのです。

また、山深く人けのない避難小屋で孤独を感じた数時間後に会った人間は、まるで昔からの友達であったかのように親しみを持って感じることもあります。
もちろん、逆に、混雑でごった返していたらもはや場所の取り合いとか殺伐とした雰囲気に包まれる可能性もあります。

宿泊しな いにしても、雨天や強風の時に10分でも休憩できるとありがたさこの上ない施設が避難小屋です。

有人の避難小屋もある

同じく「避難小屋」と呼んでいても、先に述べた東北の朝日連峰などのようにもう少し管理されているタイプのものもあります。
こういったところでは水質や環境保護の観点から山中にテントを張ることを禁止しており、その代わり登山者は避難小屋を利用して下さいというルールになっていて、ここでは協力金として一人一泊1500円程度支払うようになっています。

営業している山小屋の数が少ない北海道などでも、夏の一時だけ管理人を常駐させている避難小屋などもあります。

朝日連峰の有人避難小屋
朝日連峰の有人避難小屋

このように「登山で泊まる」と言っても、泊まる場所により得られる楽しみや経験が違ってきます。

山域によっては選べないところもありますが、自分の登山経験や同行者の体力に合わせて、はじめはソフトな山小屋泊から始めて慣れてきたらワイルドさを求めて広げていくとか、季節に応じて夏はテントにチャレンジして初冬は山小屋を利用するとか、または荷物の負担を考えて長い距離の縦走をしてみたいので食事も含めて山小屋を利用してしまおうとか、目的に応じて使い分けていくといろんな登山を楽しむことができます。