初心者のための登山とキャンプ入門

登山の食事の考え方とパターン

山で料理をつくる人イラスト

手作りのお弁当を持って行ったり、料理をしたり、山小屋で注文したり・・・ 山では様々なごはんの食べ方があり、楽しみの一つです。
食事それ自体のおいしさだけでなく、みんなで工夫して料理したりおしゃべりしながら鍋を囲んだりという行いそのものが楽しいのです。

一般的に登山日数が短い方が食事パターンの選択肢は多く、逆に日数が長くなれば制約が出てきます。例えば日帰り登山ならコンビニ弁当でもいいでしょうし、1泊2日の登山中に料理をしようと思ったらいろんな食材を選べます。

しかし4泊などとなってくると軽くて日持ちのする限られた食材で料理するかフリーズドライか、というようになってきます。

単独行かパーティか

登山では、一人で行くのか同行者はいるのかにより、食事の仕方は大きく変わってきます。

単独行(一人)なら

一人での登山

単独行の場合はすべての荷物を一人で持つため、食糧のカサも重さも使う水の量も控えめにしなければなりません。

現実的には、調理不要なコンビニおにぎりやパンを前半に持ってきて、保存が効かない登山後半日程やボリュームがほしい夜ご飯にフリーズドライやレトルトを利用する、というパターンが多いかと思います。
フリーズドライを利用すれば値段は多少高くなりますが重量が軽くでき、レトルト食品なら水分を含んでいますから重くなりますが、値段は安く抑えられます。

いずれにしろこれらを利用すれば、食糧だけでなく燃料や調理器具、調味料などの荷物軽減につながります。
食事が味気ない分は、乾き物のオツマミやフリーズドライスープを組み合わせたり、レーション(行動食)をバラエティ豊かにするなどして補います。

また、夏の北アルプスなどのように確実に売店が開いていることがわかっている場合には、昼食に山小屋での食事を取り入れたりする方法もあります。

パーティ(複数人数)なら

パーティでの登山

複数人数で行く場合でも、各々がフリーズドライなどの食糧とコンロなど装備一式を持参して各自で済ませるスタイルをとるパーティもあります。 それくらい、最近では登山のコンロやクッカーは軽いものが売られていますし、この方法なら事前の打合せも簡単で済みます。
それに、各自が火種や水、食糧など一式を持っているということは安全上理想です。

しかし、複数人数になったなら「何かおいしい料理を作ろう」という楽しみが一つ増えてくるものです。
コンロやクッカー、食糧や調味料という荷物を皆で分担して持てるからこそできる料理がありますし、そしてそれは確実にフリーズドライよりも美味しく、費用も安く済むことが多いでしょう。

短期山行か長期山行か

登山では、短期間なのか長期間なのかにより、食事の仕方は大きく変わってきます。

短期(日帰り、一泊二日)

日帰りや一泊二日なら、何も悩むことはありません。
コンビニで買って大きな弁当ゴミが出てもそんなに気にならないでしょうし多少ゴミが多く出たり食糧が余って持ち帰る事になっても、それほど大きな問題にならないと思います。

真夏以外なら生肉を使ったメニューも多くできるでしょうから、好きな料理を楽しんで作ることができます。

長期(2泊3日~)

「長期は○日から」という決まりは無いのですが、だいたい2泊以上する山行になるといろいろと頭を使わないといけなくなってきます。

まず食事回数が増えることから、背負う食糧の量が増えますから、各食事の重量やカサを減らす工夫が必要になります。
生肉が使えないメニューが多くなりますし、例えば初日に生ゴミが出るとその後の登山中ずっと背負って歩かないといけないので、材料の使い残しや食べ残しを出すわけにも行きません。

カロリーも補わなければいけないし、かと言って同じメニューでは飽きも大きな悩みになってきます。
コンビニやフリーズドライも活用しながら、満足感や重さのバランスを取りつつ献立を考えていきます。

山の食事のパターン

コンビニで買ったおにぎりやパンを持っていく

山での一番簡単な食事の摂り方は、コンビニで買ったパンやおにぎりを持って行くことです。目的地の移動中に購入できるので便利です。
一人で短期間の登山なら、何も準備せずにコンビニですべて調達出来てしまいます。
最近のコンビニでは小分けのお菓子も多いしペットボトル飲料の種類が多いことから、忙しい人には大助かりです。

重さが少々気になるおにぎりですが、食べやすく腹持ちもいいし、余らせてしまったものはラーメンの残り汁に入れて食べたり雑炊にしたりと変化を楽しめます。
ゴミが少なく、パック弁当よりもちょっとした休憩で食べきれるところも優れています。

ただし暑い日には傷む可能性もあります。真夏の、特に低山の登山では要注意です。

塩気がある惣菜パンは登山中には食べやすいですが、傷みやすいです。
逆に黒糖ロールやスティックパン、レーズンボールなどは比較的長持ちし、夏山の6日目でも食べたりしていました。

パンはおにぎりと比べ腹持ちは悪く水気が少ないので喉を通りにくこともありますが、糖分やカロリーを多く摂ることができます。メインの食事としてだけでなく行動食としても使えます。

カップラーメンを作る

コッヘルとストーブ
コッヘルとストーブ

お湯を注ぐだけのカップラーメンは本当に便利。 すごく簡単な食事ですが、山のカップラーメンは家で食べるよりも何10倍も美味しく感じます。
特に寒い時期の登山には暖かいスープの食事が最高に幸せで「山頂でのカップラーメン」は多くの人にとって楽しみの一つです。

お湯を沸かすのにはコッヘルやストーブ、もしくはサーモスに入れた熱いお湯が必要になります。
カップラーメンは持ち運びにかさ張りますしゴミもかさ張るので、やはり短期間山行だけになります。

気をつけたいことは、汁を捨てることができないので飲み干すか少なめに作る必要があること。
また、雑にパッキングすると容器に穴が空いてしまい食べられなくなるので気をつけましょう。

インスタントラーメンを作る

山のご飯 乾燥野菜を入れたインスタントラーメン
乾燥野菜を入れたインスタントラーメン

山行が長くなるなら、ゴミのかさ張らないインスタントラーメンが良いでしょう。作ったら、そのままコッヘルをどんぶりにして食べます。
乾燥わかめやネギ、モチなどを入れると豪華になります。
アルミ製のコッヘルに比べ、チタン製のコッヘルは口をつける部分が熱くなりにくいので食べやすいです。

上にも書きましたが、ラーメンの残り汁におにぎりなどを入れて煮込めば、美味しいラーメン雑炊にもなります。
インスタントラーメンは朝ごはんにも良く用いられます。

フリーズドライ食(ドライフーズ)

フリーズドライ食品

簡単に作れて、軽くて日持ちする食事がフリーズドライ食。
お湯を注ぐだけで、パスタ、ピラフ、ドライカレー、混ぜご飯などのご飯もののほか、カレールーや味噌汁など豊富なメニューの食事を作ることができます。

スプーンが初めから用意されているものもあるので、このドライフーズとあとはお湯(もしくは水)さえ用意できれば簡単にご飯を食べることができます。
バツグンに美味しいのはスープやカレールー系だと思います。これらはコンビニでも売っているくらい今では日常生活に溶け込んでいます。それくらい美味しいのです。

しかし本領発揮は米類で、こちらは味はそこそこ(もちろん人によると思います)ですがボリュームを補うのに大活躍。
米にうるさい日本人にはやはり普通のご飯の方が美味しいと思われてしまうかもしれませんが、この軽さでこれだけのカロリーや満腹感を持たせ、かつ長持ちするものはありません。

値段も高いので山行後半の献立に配置し、味に飽きないように乾燥野菜サラダなどのおまけをつけるなどの工夫をしていくとよいでしょう。

レトルト食品

レトルト食品は湯煎で温めるカレーのようなものの事ですが、フリーズドライ食に比べると種類もかなり多く、美味しく、安いです。
定番のカレーからパスタのソース、丼物の具、米、ハンバーグ、その他のおかずと何でも揃っています。

ボイルするだけなので調理方法もいたって簡単ですが、コッヘルのサイズが小さいとパックがはみ出してしまうもがあるので、購入する際にはサイズを確認し、パックよりもパウチ(袋)の方がゴミのカサが減ってよいでしょう。

レトルト食品は水分を含んでいるためフリーズドライに比べると重量があります。
お米はフリーズドライ、おかずはレトルトのように組み合わせれば重量を減らせ、また残り湯も無駄にすることがなくなります。
この場合、最初にレトルトのおかずを温め、次にその温まったお湯をフリーズドライに使います。

ご飯を炊く

山のごはん 炊きたてほかほかのご飯と焼きそば
炊きたてのホカホカごはんと焼きそば

お米好きにはたまらないのが、やっぱり自分で炊いたご飯でしょう。フリーズドライやレトルトのご飯も簡単で良いのですが、炊いたご飯は満足度と満腹感が違います。
そして何よりも美味しく、しかも安い。人数が多い場合はお米を炊いてしまうのが一番ボリュームを稼げるでしょう。

また、テントをセッティングしたあとのちょっとしたイベントにもなります。慣れればとても簡単な炊飯ですが、本番で失敗すると救いようのないことになりますので、一度くらいは自宅で練習をしておくべきだと思います。

炊飯は手間も時間もかかってしまいますが、ご飯はとても美味しいし、しかも楽しいので余裕があれば挑戦してみてください。

料理をする

登山で料理を作る
日帰り登山で豪華なランチ

究極の食事はやっぱり自分で料理を作ることですね。作って食べるのは本当に美味しいし、仲間でワイワイいいながら食事を作るのは楽しいものです。
簡単にウインナーを焼くのもいいですし、カレーをジャガイモの皮むきから作り初めても良いでしょう。

調味料や食材やナイフなどの道具が必要になり荷物も重くなってしまいますが、登山に慣れて体力がついてきたら大丈夫!次は何を作ろうか?何が作れるか?とあれこれ試行錯誤するのも登山計画の楽しみの1つ。
ラーメンやレトルト食品に飽きたら、ぜひ挑戦してみてください。

山小屋の食事

山小屋のご飯の例
山小屋の夜ご飯の例
山小屋のお弁当の例
山小屋のお弁当の例

山小屋とは、山の麓や稜線、山頂などにある宿泊・休憩施設です。
山小屋では素泊まりや1泊2食の食事つきの宿泊プランがあり、そして事前に頼めばお弁当を用意してくれるところがあります。

基本的に山小屋の食事は宿泊者用で時間が決まっていますが、中には昼間はカレーライスやラーメンなどを販売している山小屋もありますので、そのような時間帯はメニューを選んで食事をすることも可能です。

また山小屋のごはんは残さないのがルールです。残飯の処理も大変ですし、材料や燃料を荷揚げする苦労を考えたらご飯一粒でも大変貴重です。値段は街より高めになります。