初心者のための登山とキャンプ入門

赤ちゃん背負子デビュー!6ヶ月で猿投山

さくちゃんと妙 猿投山にて

背負子をゆずってもらう

猿投山(11月3日)

高校時代の山岳部の先輩がお古の背負子を送ってくれた。
その先輩もどなたかにゆずってもらったそうだ。

まだサクチャンが4月に生まれる前の年賀状に書かれていた、
「背負子おゆずりします」とあったコメント。
10月になって「背負子ください」とメールするまでキープしておいてくれた。
そしてすぐに名古屋に送ってくれた。
先輩の行動力はすばやいのでさっそく手配してくれたが、
それが届くまでの数日間はたのしみでしょうがなかった。

届いた背負子は、思ったよりも高い位置に赤ちゃんが座る場所があった。
さっそく6ヵ月になったばかりのサクチャンを乗せてみた。
まだ腰がすわっていなかったけど、ジェットコースターの押さえのように
肩から上半身がガッチリとホールドされているから姿勢もよく伸びてる。
視界が高くなったサクチャンはちょっと動揺していたけど、
興味深げに景色を見ていた。

思い立って

祝日の朝八時ごろ、サクチャンに朝のおっぱいを飲ませた後
ふとリビングにいって本を手に取った。
弟がくれた中部のツーリングマップだ。

「名古屋に行くなら持っていけば」 と、持っていたものをくれた。
こういうツーリング専用の本があるんだね。
みてみると、うちがある一社から東方面にたくさんの緑がある。
中心部の名古屋を越えないで東方面に行けば車も混まないかも。
ふと 「猿投山」 という文字が目に付いた。
先日なにかのTV番組で照英が旅番組やってたっけ。
猿投グリーンロードという有料道路を通るとすぐそばだ。
グリーンロードはツーリングにも気持ちよいと書いてあった。
なるほどー。
バイクに乗る人は目的地だけじゃなくて走る道自体の交通量や
緑や景色をあらかじめ選んでいくんだな。こういう情報誌で。
私たちもナビまかせにドライブしないで、あらかじめしらべて行けばいいんだ。
そしたら趣のある宿場町や気持ちの良い道に出会えるんだね。
「名古屋ではお出かけしよう、いや、そうしないと引きこもりになってしまう」
という強迫観念に似た思いに一筋の光明をみた気がして
またベットにもどった。

次に起きたのは11時近くで、サクチャンが起きたので仕方なく起きた。
北尾くんはすでに起きていた。
外は晴れていたのでふと北尾くんに言ってみた。
「猿投山いかない?」
「いいよ」
まさにひとつ返事でOKがでた。場所もわからずに。
北尾くんは「せっかくの休日はエンジョイしたい」、という前提が
いつもあるから、すばらしい。
私だったら急に誘われたらめんどくさいと思うなぁ。
提案したほうはすでにやる気だからいいけどさ。
お昼近くまでゆっくり寝た後のことだから、
もったいないモードになったんだろうけどね。

そんなわけで今すぐ出発しようということになった。
冷凍庫で凍らせておいた山菜おこわのおにぎりをレンジにかけて、
サクチャンの背負子と頂き物のキルティングのつなぎの防寒着やくつした、
パンパースをカバンに放り込んで、それと今回は小さなリュックももった。
靴はいつも履いているトレッキングシューズを履いて、北尾くん用にも
キナバル登山以来出していなかったトレッキングシューズを一応車に積んだ。

練習のために私がドライバーになった。
北尾くんは後部座席でサクチャンとキャッキャしている。
猿投グリーンロードを通っても登山口までは30分ちょっととナビにでた。
登山口付近が狭くて石がボコボコの道だったらタイヘンだな、
さらに対向車なんかきたらムリだ。
そうなったら北尾くんに代わってもらおう。
名古屋に来てだいぶ運転することに度胸がついた気がする。

一社から東山通りを長久手方面に向かい、猿投グリーンロードにはいる。
料金は数百円だった。
まっすぐな道が登ったり下ったり。
ずっと遠くまで見えたりしてちょっと外国みたいな雰囲気のところもあった。
紅葉はしていなかったけど道の脇には一気に木が増えて、
急に田園風景みたいになってきて。
とはいってもやっぱりみんな急にスピードを上げて走るから、
私はそこまで景色を楽しむ余裕もなかったけども。

有料道路を下りて猿投神社のほうに向かうと、
登山口付近に駐車場があるという。
神社という目印がはっきりしてるからナビでも行きやすくていい。
道もかなりしっかりしたコンクリートの道がちゃんと続いていた。

神社を超えるとすぐに付近はいい感じの森になってきた。
ちょろちょろと小川が流れ、花崗岩の川底だから水が透けて見えて
遠くに来た感じがした。
山の水は冷たいから山に川が流れていても遊んだことはないんだけど、 
「夏にまた来よう。川に足を入れたら涼しくて他のしそう」 っておもった。
サクチャンが川の水に恐る恐る手を入れているところが目に浮かんだ。

赤ちゃんがいる生活になると、〝赤ちゃんが○○したらどうなるんだろう、
初めてだから、驚くんだろな、喜ぶかな〟っていうような楽しみに変わってくるんだね。
ニュースで動物園や水族館が映ると、
一番前のガラスや柵にへばりつく子供とそれさせる大人が映るけど、
きっと大人はみんなそう思って子供を動物や魚に出会わせるんだろうね。
でも大人が想像するほど、新しいものを見た子供の喜びや驚きって
たいしたことない気がするんだけど、どうだろうか。
もちろんお出かけしたこと自体はたのしいんだけどね。
少なくとも私はそうだったけどね。
なのに大人は、
「人間しか見ていないサクチャンが生まれて初めてワニを見たら、
いったいどうなるんだろう?!」って想像が膨らんじゃうんだね。
たぶんサクチャンは全てが初めてだから、きっと「へぇ」てかんじなんだろね。

北尾くんも持ってきたトレッキングシューズを一応履いて、
あとはサクチャンにもってきた服を全部着せて、背負子に乗せて歩き出した。
林道だけでも、かなり気持ちいい静かな田舎に来た感じを味わえた。
あぁ、でかけてきたなという満足感に包まれて歩いた。
やっぱり何はなくとも、ちょっと環境の違ったところへリフレッシュに来るって
精神の健康上にも大切なことなんだなぁ。
サクチャンは乗っけられた荷物のように固まっているけど、まぁ不快そうでもない。
空気は秋のさわやかな感じだけど、今日は寒くないし。

しばらく歩くと看板に地図が載っていた。
今回はなんと地図を持ってこなかったからよく分からなかったけど、
なんでも途中まではコンクリートでも行けるらしく、
その途中にある展望台の眺めがとてもよいとのことだ。
せっかく来たから展望台に行きたかったけど、
土の上を歩きたかったから登山道を選んだ。
登山道は途中でまた分かれているようだったけど、
たぶん途中まで歩いて戻ってくることになるだろう。
一応看板を写真に撮って、地図代わりにすることにした。

猿投山登山口の地図

道はだいぶ踏まれてしっかりしていた。
花崗岩のポロポロとした土だけど、すべるほどでもないし傾斜もそんなにない。
サクチャンを背負っていてもだいじょうぶだろう。
広い道だから枝が顔にぶつかることもなさそうだ。

猿投山登山道上

北尾くんはもんぺを履いたおばあちゃんと話し込んでいる。
おばあちゃんは普段登山をする人ではないようだが、
上のなんとか神社の偉い人の像を拝みにいくというようなことだった。
それも、しょっちゅうそういうことをしているというのではなくて、
「生涯なすべきこととしてやっておかないといけない」
というような理由だったとおもう。
おばあちゃんは歩くのが早かったけど振り返り振り返りいろんな話をしてくれた。
が、なぜかほとんど覚えていない。
子供はいっぱい産めと言っていた気がするし、
「猿投山は愛知県で一番高いからこうやって人がいっぱい来る」
といっていたのを覚えている。
600メートルくらいが一番なのかなって不思議に思ったから覚えていたけど、
やっぱりそれは違った。

途中上から降りてきた人がおばあちゃんの顔を見て話しかけた。 
「10年前、この山の頂上で会いましたよね」 という。その人が言うには、 
「登山中は水を飲むとトイレに行きたくなるから水を飲まないようにしているんだって、
あの時おっしゃっていました」だって。
おばあちゃんは確かに10年前に来たらしいが
「そうだったっけかなぁ~」 という反応をしていた。
確かにそんな話、したというならそうである気もするし、否定も肯定もしづらいよね。
でも、聞いた人にはなんとなく印象深くて覚えていたんだろうけど、
「あなた、あの時こんな話してました」って言われちゃうと
なんか笑える内容だよね。
そんなわけで上から降りてきたその人とおばあちゃんが話し込んだので、
そこでおばあちゃんとは分かれた。

猿投山登山道上

道は快適に登ったり下ったりするのにちょうどよい感じで、
すべりもせず狭くもなく木の根もうるさくなくゴミも無く明るい道だった。
それを知ってか、たくさんのさわやかな若者がいた。
明らかに最近始めたと思われるオシャレ女子グループもいた。
カラフルなウエアを着て、
ストレートで長い髪を仲間幸恵ふうにおろしていたりして。
弟が見せてくれたアウトドア雑誌で見た、
カラフルで両足の模様が違うレッグウォーマースカートをホントに履いている。
森林をバックにカッコイイかんじだ。

登山を取り巻く状況は、
私が妊娠出産して行っていない間に相当変わったようだ。
弟がやっているHPのおかげでかろうじてその変化を見聞きするくらいで。
でもうわさの山ガールをナマで見たのは始めてた。
「日曜に、買い物じゃなくてハイキングにいくって人がもっといてもいいのに。
どうしてみんな山に来ないんだろう」と昔思ったことがあったけど、
そういう時代が来たわけだ。
おかげで素敵なウエアもグッズも増えて安くなって今のところいいことづくめだ。
この先ブームが行き過ぎると 「あの時代は山が静かでよかった」
と思うこともあるんだろうか。
すでにキャンプ場はそうかもしれない。
だったらいずれ私たちは、 マイナーで整備されていない山や
キャンプ場を求めていくことになるんだろう。

下山してくる登山者は、ほぼみんなサクチャンに笑いかけて話しかけてくれた。
さすが、子育て経験のある人はみんな何ヶ月くらいの赤ん坊だとぴたっと当てる。
サクチャンはよく笑うときもあるけど今日はほとんど笑わない。
そのビリケンスマイルで答えてくれたら、話しかけた人もうれしいのにね。
赤ちゃんを連れていると周囲のおばちゃんおじちゃんと、途端に垣根が無くなる。
山では特にそうだ。
「よく来たね~」 とみんな言ってくれた。
「かわいそうに、親の都合で寒くて危ないところに連れてこられちゃってね~
パパが転んだら死んじゃうねー」
と言ってくる人がもしいたら、かなりブルーになっただろな。すぐに帰ったかも。
でもみんな喜んで笑ってくれる。やっぱり山はこういうふれあいもいいんだよね。

道は歩きやすいとは言っても、やっぱりサクチャンを背負っている北尾くんは
やっぱりトレッキングシューズを履いていてちょうどよかった。
安定感が違うから安心できるよね。
サクチャンの顔を確認しつつ、写真を撮りつつゆっくり登った。

猿投山登山道上

お気に入りのGF1も山の中で撮ると背景ボケがさらにきれいで
いい写真がたくさん撮れた。
そのうち一枚は年賀状の写真に使われた。

コンクリートの道路に出て、左手の公衆トイレのほうに向かった。
休憩するときも背負子の足をパッと開いて地面におけるから便利だ。
がっしりと装着されたサクチャンはなぜかぶるっと震えた。寒いのかな?

背負子のサクチャン

そのあとの生活でもサクチャンはしょっちゅうバンボに座ったときなんかにも
ぶるっと武者震いすることがあるから寒かったわけじゃないと思うけど、
このとき初めてそれを見たので心配になった。
それで、もうちょっといけば頂上だったけど、
だいぶ自然を堪能したのでもう帰ろうということになった。

少し別の道を戻ったところに展望台があるというのでそこに寄ってから帰ることにした。
今度は私がサクチャンをだっこして歩いて、展望台までの少しの階段では背負ってみた。

初の背負子体験

背負ってのぼった感じでは、だいぶ上に重心があるという感覚を受けた。
普段のエルゴだと、背中の真裏に亀の甲羅のようにぴたっとくっついているので
それと比べるとだいぶ不安定だ。
もしかして後ろに転んだときにつぶされないように上のほうにいるのかな?
背中の熱が赤ちゃんに伝わると熱くてしょうがないから上のほうにいるのかな?
よく分からないけど、想像したよりも不安定に感じた。
これは林道や木道歩きにはいいけどガシガシ登るのはキツイな~。
この先の 「赤ちゃんと山」 計画に陰が差して悲しくなった。トレーニングしなければ!

サクチャンと私

展望台からは三方の景色がよく見えた。

真正面にキラキラ光っているのは海だろうか。
地図もコンパスも持ってきていないのでよく分からない。
景色ってやっぱり、「あれが○○だね」っていう、
なにかそういう分かることがあってはじめてたのしいかも。
あれが名古屋中心地かな…
それすらもハッキリ分からないままなんとなく景色を眺めたけど、爽快感はあった。

猿投山展望台からの景色

展望台の下の、人がいないベンチでサクチャンにおっぱいをあげて下った。
展望台には子連れのファミリーが数組来ていた。

サクチャンは下り始めてすぐに寝てしまった。
北尾くんは丁寧に降りたけど眠ったサクチャンの頭が揺れて
アゴがだいぶ背負子のフレームにすれてしまっていた。
タオルをはさんだけどサクチャンの頭が揺れるのはどうしても防げなかった。
今度ちょっと検討しよう。

背負子上で眠るサクチャン

途中で無くしたカメラのキャップを探して慎重に下ったけど、キャップは見当たらなかった。
毎回付け外しがめんどくさいと思っていたし、いつか無くす気がしていた。
帰って調べたらレンズのプロテクターというものがあって、キャップというわけではないけど
プロテクターを付けてキャップをしないでカバンにそのまま入れて使っている人も居るって知って
マネして買ってみることにした。
結果的に、気軽に写真撮るのにすごくいい買い物をしたと思う。

そしてあっという間に車に到着してしまって、昼に出たにもかかわらずだいぶ明るいうちに長久手を通った。
今回はおやつを持っていくのを忘れてしまったのでお腹がペコペコな私たちは餃子の王将に入ることにした。
幸いにも座敷があったのでサクチャンも転がって遊びつつたくさんのメニューを堪能した。
それにしても、全部のお店がバンボを置けばいいのにねって思うのに。

短時間だったけど充実したハイキングだった。
また土曜日に寝坊して起きても 「さぁ行こう」 と気軽に出かけよう。
そういう場所を調べておこう。
荷物を一式準備しておこう。
そう思って家に帰った。