初心者のための登山とキャンプ入門

民俗村見物とチェジュオリジナル漢方 -子どもと海外旅行 in チェジュ島 ⑨-

城邑民俗マウル

城邑民俗マウル(ソンウプミンソンマウル)

30-40分もするとミンソンマウルに着いた。地球の歩き方でも★3つ(満点)になってるけど、その私が読んだ本でお勧めの場所になっていたからぜひ行ってみたかったところだ。家々の間の小道を歩いているだけで、チェジュの独特の伝統に浸ってタイムスリップした気になるらしいのだ。
アンさんは、「人が住んでいるところで家の中が見れるのは2つしかないから、そこへ行きます」と言ってある家?の前に車を止めた。私も実際、ここがどんな風に観光できるのかナゾではあった。というのは、チェジュの昔ながらの家に人が住んでいる区域で、街だから入場料もなければ営業時間もないというのだ。この区域は民族資料保護区に指定されているらしい。通りから家を眺めたり、なにか古い建造物がチラホラあったりするのを眺めるのかなぁと思っていた。とりあえず家の中に入れるというで、なんだろなと思ったけどじっくり見るためにベビーカーを出して2人をセットすると中からきれいめなおばさんがやってきていろいろ説明をしてくれるという。

城邑民俗マウル

アンさんはカメラを受け取って説明を聞く私たちを映す。おばさんはここに住んでいるというよりも、首にネームカードを下げていて施設の人っぽい印象だ。まず有名な、門の3本の柱について話してくれた。それから中に入って豚小屋に直接落ちるトイレの話、チェジュの女性が働きものだっていう話…いちいち笑う箇所が入っていて説明がとってもうまい。
日本語もハキハキしている。はじめは村の有志のボランティアの方かなあと思っていたけど、それにしても話がうまいなぁと思いながら聞いていた。あまりに上手いので、なんなんだろうこの人はっていう事がずっとぼんやり気になっていた。
そうそう、有名な冬虫夏草はこの家のかやぶきだったかな、屋根からとれるらしい。冬虫夏草っていうのはキノコというか菌なのかな?その屋根の草は8年に1度取りかえるんだけど、この8年間でできるんだと言っていた。この家というのは石と土で出来ていてとても背が低く、屋根がまあるっこいんだ。日本の合掌作りのように尖がっていなくて屋根の全面が縄で覆われて草が抑えられているっていうかんじ。確かに他では見ないつくりだ。風が強いから背が低いのかな。火山の島だから太い木もあんまりなかったのかな。だから柱で高くしなかったのかもしれない。屋根が合掌作りと違って平たいのは降雪があまりないからなんだろう。
とにかくこの一帯ににはこの形の家がいくつもあった。全部、小さめだ。おばさんの話はチェジュの馬の話になってより一層力を増した。そこそこ寒かったしじっとしてたから結構冷えたけど関係なく長い時間を取って詳しく話した。私は、あぁ、本に書いてたな。もともとのチェジュの馬はちっこいんだったな、とか思い出していた。おばさんによるとチェジュの馬の脚の骨は頑丈で、それをすりつぶして飲んでたからチェジュの人は長生きで、水汲みとかの女性の重労働にも耐えて骨はみんな丈夫なんだ、歯も丈夫なんだ、私もこれで50歳ですよ、みたいな感じだった。

漢方「民族土馬」を買ってしまう

そのあと五味子(ごみし)茶の壺を見せてもらうと、壺の内側はビニールできれいになっていてそれがなんか意外な印象を受けたのを覚えている。
するとある小屋に招き入れられて、そこには商品が積まれていた。私たちは冷蔵庫から五味子茶を注がれて飲み、希釈の仕方を説明され、あれよあれよという間に漢方の説明を受けていた。頭の中でぼんやりと、そうか、ここまでの前振りは全部この為だったのか、このおばさんはセールスマンだったのか、アンさん先に言ってくれないと…ってぼんやりと考えていた。
商品は冬虫夏草、馬の骨と胎盤の漢方、五味子茶だ。やがてみいちゃんがギャンギャン泣き始めたけどおばさんはまったく構うことなしにセールストークをする。韓国の国旗のマークがある。「政府公認」とおばさんはいったけど、私はエジプトで政府公認の土産物屋でクレジットカードのスキミングをされたことを思い出した。おばさんはどっちかっていうとあそさんをターゲットにしている感じにも見えた。うなずきとか相槌が丁寧だからだ。

城邑民俗マウル

説明を聞いているうちにこれはきっと高いんだろうと思った。五味子茶は1本3000円だと言った。漢方は北尾くんが飲んでいたから高いのは知ってる。姉も台湾であっという間に1万円の漢方を買った。韓国ドラマでも気を遣う相手への差し入れには漢方を持って行ったりする。
ただこういうのって飲み続けないと意味がないし、上質な物をちょっとお土産で買ったって意味ないよなと思った。でもその箱には1年分入っているという。初めは全く買う気はなかったけど、お母さんの更年期の話で聞いたようなワードがいっぱい飛び交ううちになんとなく良いんじゃないかという気になってしまった。骨のスカスカにももちろん良いし。そう思って「いくらですか」と聞くと35,000円だという。1年分で本当に効くなら高くない、という印象を持った。お母さんにあげようかなと思った。なんとなくだけど、他で買うより良いものが安く買えるんじゃないかっていう気になった。直接買ってる感が。まったく漢方詳しくないけど。

いよいよおばさんに詰め寄られたので「もう安くならないんですか?」と聞くと、お決まりのように政府のものだから勝手に安くできないけどおまけを付けられる、1箱に五味子茶2本、といった。正直冷たい五味子茶はおいしかったからうれしかった。まもなくおばさんは小さいやつも取りだしてこの冬虫夏草もふたつつけるといった。そのとき何を思いうかべたかハッキリ覚えてないけど、どうやら産後これを飲んでれば、あの体のしんどさはまったくなかったんじゃないの?て思うような話をされた。ホルモンバランスがどうのこうので…。「冬虫夏草はいらない。。。」というとおばさんは冬虫夏草は御主人に良いよ、と言ったあとに、でも小さい馬の骨二つでもいいよ、と言った辺りから、たぶん私は買ってしまうだろう、と思った。
そしておばさんに再度勧められたときに「じゃあ買います」と答えるとあそさんがとても驚いていた。「え、大丈夫?いいの?」といってこの場を逃れるために犠牲になったかと心配したのか、または押し切られたことを心配してくれたのか分からなかったけど。

おばさんは私が買ったあとでもなお、ギャン泣きするみいちゃんを抱えたあそさんに最後の押しの一言を言って、そうそう、「あなた骨が弱そう」と何度か言っていた気がする。その石と土と草の屋根の民族的な家にはなんとクレジットカードの機会も備わっていて、おばさんはあっという間に会計と梱包をしてくれた。まぁ漢方がなんとなくよさそうな気がしたのも確かだけど、あそこまで一生懸命説明してくれるとなんとなく買ってあげたいと思ってしまったんだ。やはり人を動かすのは人の熱意だと改めて思った。

出口付近でさらにカワハギの干物をセールスされ、タクシーに戻った。事務所的なその民族家付近には同じ服装の人が何人かいて、あぁここはそういうところなんだ、と思わせた。だから純粋に街並みをブラブラとみたいなぁと思ったらアンさんが「何もなくてつまらない」というようなことを言った。もう16:50で陽も傾き掛けていたので「少しだけ」といって家のある方を散歩した。
壁はみんな黒い溶岩の石を積んであって、そのちいさな民族家の庭には車が留めてあったりして生活していることが分かった。門に合図の棒が3本とか2本とかかかっていたりするところは見なかったけど、だいたい門の両脇に棒を指す穴のあいた石はがあった。もっとゆっくり見たかったけど気が付けばゆるゆると黒いタクシーが遠く後ろからつけてきていた。気を遣って距離を保っているみたいだった。さすがに疲れてきたのでもう帰ろうと言って後にした。

タクシーの車窓からは、この時期しょっちゅう雲の中にいるというハルラ山の全景が見えた。見つけて「もしかしてあれは!」と思った瞬間は久々にテンションが上がった。

ハルラ山

タクシーは東部観光道路を通ってホテルに向かった。地図を見ながら、なるべくチェジュがどんなところが見たいと思ったけど、気持ち良くって4人で眠りこけて着いた時には暗くなっていた。アンさんとの別れはすごく残念だった。のりまきもおごってもらったし、チップをたくさんあげたいくらいだったけど、迷ってるうちに去ってしまった。アンさんはとてもフレンドリーに接してくれたぶん友達にするように最大限に出来ることもしてくれた気がして、これがチェジュの人の純粋で素朴という気質なんだろうか、と考えた。