初心者のための登山とキャンプ入門

子供と登山!八ヶ岳、杣添尾根から横岳

八ヶ岳のさくちゃん

横岳に繋がる杣添(そまぞえ)尾根は、私的に超穴場のルートだ。
あの美濃戸口からのだらだらと長い道を歩かないでも、ちょっと登るだけでかなり眺めの良い稜線に出ることができる。
学生の頃はあまり頭にうかばないルートだったが、社会人になって5月の残雪時に誘われて登ったときに「こんなに手軽なルートがあったんだ!」と、これまでちょっとソンしてた気分になった。

ただ、今回分かった事だが、5月に歩いた冬道はかなり早くに稜線に出て、赤岳から横岳までのかっこいい稜線をずっと眺めながら登るけど、夏道だと眺めの良い稜線に出るのは三叉峰の20分ほど手前だ。だから穴場なのは冬道の場合かな、と思う。

それだとしても、八ヶ岳の裾野に広がる町と奥秩父との間の扇状地や奥秩父の山並み、それから富士山と八ヶ岳南部のアルペンムード満開の山々を眺めながら日帰りで横岳に登れるのはかなりのいいコースだと思う。
海ノ口自然郷登山口駐車場(1754m)から三叉峰(2825m)まで1000mちょっと登るけど、道は歩き易く下り易い方だと思う。
登山口へのアプローチに関しては、ここのHPが分かりやすいみたい。

服装や持ち物

行動食さくちゃんのご飯と行動食

今回は北尾くん以外の他のメンバーもいるという事で、前日にきちんと用意を済ませておいた。さくちゃん(1歳4ヵ月)の荷物まで考えると、準備はなかなかめんどくさい。3人分を一人で背負うんだから無駄なものはもっていけないから、ちゃんと過不足なきよう考えないといけないのだ。しかし気軽に出かけられるようになる事、こういうことも練習なんだと思うようにした。

行動食は今回、サンドイッチを作ることにした。
フランスパンにハムとチーズ、きゅうりとトマト、マスタードとマヨネーズ。
あとは梨とドライフルーツなど。
さくちゃん用には前回同様サトウのごはんとふりかけ。そして予備にパン。
飲み物も一人1.5L弱持っていった。いっぱい持っていく時にはやっぱり プラティパスが便利だ。サンドイッチ用には、小さなナイフとまな板も持っていった。
結果としては、今回のような遅い出発の時間のない登山の場合にはコンビニのおにぎりとかパンで良かったかな、と思う。二人分のサンドイッチを急いで作って子供にご飯を食べさせてオムツを替えて写真を撮って、、、なんてやってたら休憩は休憩じゃなく忙しい時間になってしまった。日帰りだと、生野菜やハムのありがたさもあんまり感じないし。降りたらすぐにおいしいものが食べられるからね。

それよりももっと注意すべきは防寒対策だった。9月といえばすごく暑い日もあるし寒くなると冬のようになる事もある。準備をした日の名古屋は暑かったから、寒い山をイメージして準備したものの、ちょっと足りなかった。

さくちゃん用には、薄手の長袖と長ズボン。足首を覆うレッグウォーマー。日焼け防止、虫さされ、笹の葉など擦り傷防止には必須だ。あと夏用のメッシュの靴。防寒用にウィンドブレーカー。雨が降ったり暴風の時には、背負子全体を覆うレインカバーで対応する計画だ。
「これじゃ暑すぎるかな?」と思ったところが、山の感覚が鈍くなっていた。

大人の防寒用には モンベルのインナーダウン。今までは家にあったフリースなどで対応していたけど、小さくてあったかい、こういう山グッズはこれからの時期にすごく役に立つ。旅行にもいいし。まだ着たことはないけど、3人分の装備をパッキングする段になると「買ってよかった」と思う。ひとつ買ってしまうと、迷わなくていいから。あと自分には、ちょっと羽織る用に、家にあったウィンドブレーカー。もうちょっと軽くてカッコいいのがいつか欲しい。ズボンはマムートの薄手の長ズボン。やっぱり長ズボンは必須だ。虫を気にしなくていいし。上着はパタゴニアの キャプリーンシリーズの長袖Tシャツ。暑いかなと思ったけど、日焼け対策もあって長袖にしたけどちょうど良かった。キャプリーンシリーズはやはりけっこう快適な気がする。汗でヒヤッとする事がない。
でも、あと欲しかったのは軽くて小さくなるソフトシェルジャケットがあったら、こういう時期にいいかもしれない。

記録

9月は連休がたくさんある。前週は御在所に登ったし、月末には引越しもあるのでどうしようかとおもっていたけど数日前によしこさんを思い出して連絡すると、八ヶ岳のログハウスへ泊まりに行って横岳に登るということがすぐに決まった。当日は10時までにログハウスに集合だ。せっかくドイターのキッドコンフォート2を買ったから、寒くなって出かけたくなくなる前に、いっぱい行っとこう。

10時までに集合でそこから登山口に移動して登りだす、というのは出発として遅い。しかしよしこさんも埼玉から3時間掛けてくるから無理は言えない。景色が見れたらかなり満足だから、行ける所まで行ったらいい。

名古屋から中央道で八ヶ岳方面に行くのは初めてだ。ネットで調べてみると3時間半。そんなに近くはない。でも一泊できるとなると、行こうという気になれる。山に登るだけでなく森の中のログハウスに泊まる。八ヶ岳山麓の自然を楽しむ。盛りだくさんだと思うと、前の日から準備して早起きしてロングドライブする気にもなれる。

6時過ぎに名古屋の一社にある家を出て、中央道に乗って小淵沢ICを下り、ログハウスの近くのコンビに着いたのは9時過ぎ。よしこさんは8時には既に到着していたらしい。

ログハウスに寄ってすぐに出発。
小淵沢から八ヶ岳を右回りにぐるっとドライブしていくと、雲の間に山が見えたり隠れたりしている。晴天を期待して来た訳じゃないけど、なんか今日は晴れそうだ。

10:30、海ノ口自然郷登山口を出発。登山口にある駐車場には10台も留められないけど、周辺には30台近く路駐されていた。これはふだんの休日よりもだいぶ多いという。連休だからだろうか。

海ノ口自然郷の駐車場
杣添尾根 入り口

この道は始めからずっとなかなか急な樹林帯だけど、歩きにくい感じはしない。
土の道がところどころぬかるんでるけど、ちょろちょろと水が流れてコケのじゅうたんがみずみずしいのが八ヶ岳っていうかんじだ。やっぱ八ヶ岳いいなぁ。

11:00、東屋で休憩。

東屋

さくちゃんはしょっちゅう寝ていた。揺れが気持ちいいんだろうか。あんまり寝ると夜寝るのが遅くなるからやだなぁ。背負われっぱなしも疲れるだろうから、休憩には起こしてアンヨさせる。超たのしそうだ。

12:00、まだ樹林帯の中で2回目の休憩。

休憩時は歩こう

トップを歩くよしこさんは、時間が少ないのを考えて今日は早めのペースで登る。よしこさんは登山ツアーの添乗員もしているが、それよりもだいぶ早いペースらしい。休憩場所が毎回的確で素晴らしい。つっつくと胞子が飛び出すホコリタケなんかもあった。白いかわいいキノコもある。山にしょっちゅう行っているときはなんとも思わなかったけど、こうして考えると山には不思議な植物がいっぱいある。それも自生しているんだから、すごい。

白いかわいいきのこ

ここらへんからは樹木も低くなってきて、頭の高さの枝が増え始める。寝てしまったさくちゃんの顔面に枝がぶつかるので、頭だけのレインカバーを装着する。
実は、背負子登山をする上でこれが今回の課題の一つになった。背負子にくっついている日除けはかなり背が高いので、北尾君が気をつけてかがんでもぶつかることが多い。横たわる太い木なんかは気をつけてよける事ができても、ちょっとした枝や足元を見ながら段差を登るときに上部に突き出ている枝があった場合など、避け切れない。幸い枝で怪我をすることは無かったけど、北尾君は相当神経を使って疲れたと言っていたし、もしかして目とかにぶつかっていてもおかしくない状況だった。なんかいい案は無いだろうか。

頭だけのレインカバー

13:30、稜線に出たところで休憩。良い休憩場所が無くてちょっと長く歩いた。稜線に出る瞬間、懐かしい、すがすがしいにおいに包まれた。ハイマツの香りだ。私はこの匂いが大好きだ。高山に来たと実感する。確か御在所では感じなかった。そうだハイマツ帯は2500m付近からだった。

富士山、赤岳、奥秩父の山々が全部見える。重なる山並みもハッキリ見える。普段よりハッキリみえるとよしこさんは言っていた。

杣添尾根 稜線に出た所

大急ぎでサンドイッチを作る。マスタードは無くてもよかったかも。塗りすぎてただ辛いパンになってしまった。生ハムは塩辛かった。普通のハムの方が良かったなと思った。急いで作って急いで食べた。そんな訳でめんどくさい割りにそこまで満足のいくサンドイッチじゃなかった。やっぱり子連れのときは簡単な行動食でいいかもしれない。

サンドイッチ作成
さくちゃんも満足気

14:15に三叉峰に向けて出発する。ここからがこのコースのハイライトだ。得てして登山中のハイライトは一瞬で終わる。だから写真をいっぱい撮りながらゆっくりハイマツ帯の中を登った。

もうすぐ三叉峰
登ってきた道
富士山も見える

14:30前には三叉峰に着いた。ハイライトは短かった。

岩に登る北尾くん


岩の西側のちょっとした鞍部が広くなっているのでそこで休憩する事にした。ここまでくると赤岳側の展望がさらに開けてくる。遠くには雲があって見えないけど、北アルプスもみえるらしい。でもこの時は、奥秩父との間に広がる町が、なんかよかったなぁ。

瑞牆山、金峰山など

気がつけばさくちゃんの顔が白く唇が紫になっている。いそいでウィンドブレーカーを着せてリードをつけた。いわゆる 「迷子ヒモ」と言われているものだ。自由に歩かせてあげたいので、そんなときに役に立つ。ヒモの先をちょっと持っておくと安心だ。ころげ落ちるのはやっぱり心配だから。でも足元を見て歩かないさくちゃんはしょっちゅう ‘石車(いしぐるま)’ に乗っかってコケていた。それはヒモではどうにもならないけど。

未来に羽ばたけ君と僕

さくちゃんは転びつつも、楽しそうに走り回っていた。すごく景色が良くて大よろこびだった。さくちゃんにも分かるんだろうか。

三叉峰で走りまわるさくちゃん

15時過ぎ、下山に向けて出発。横岳頂上のピストンは止めた。車があったほどのたくさんの登山者には会わなかったから道が混んでいたわけじゃないけど、それでも下山にはそれなりの時間が掛かるだろう。

下山では枝にさらに気をつけなきゃいけないのでカバーをさらに深めにかぶせて、ウィンドブレーカーを着せたまま背負子に乗せた。

15:50、休憩。さくちゃんは寝ている。

頭だけのレインカバーを装着

このとき、いや、もっと前に気がつかないといけなかったんだけど居眠りしているさくちゃんはとっても寒かったんだと思う。乗ってるだけだと寒いだろうなとは思っていたけど、もっともっとあったかい格好をさせてあげるべきだった。足はメッシュの夏用の靴だったけど、持ってきていた靴下を履かせてあげたらよかったし、長ズボンは風を防いで、すこし綿も入っているものでも良かったかも知れない。スキーウェアのような。帽子もかぶせてあげた方がよかったし、何よりも持っていた全体を覆うレインカバーで防風してあげるべきだった。

あずま屋の休憩で起こした時さくちゃんの手足はとても冷たかった。でも元気が良かったのでその後は車道を歩かせたりした。元気一杯に歩いて超楽しそうだった。

17:50登山口に到着した。東屋での長い休憩と車道をさくちゃんを歩かせながらのんびり歩いてきたからだいぶ時間が掛かった。登山道は、山の西側に日が落ちるので薄暗く足元も見えづらかったけど、森を出るとまだだいぶ明るかった。

車の中でさくちゃんの手足を温めながら、温泉に向かう。
車中さくちゃんに、山を指差して「おやま」と教える。さくちゃんも「おやま」と不明瞭にいう。
文字で表しづらい発音だ。
最近北尾君が「バナナ」を教えると「アママ」と言う。他の子供が言っていることはまったく理解できないけど、さすがに毎日聞いていると何を言っているのかわかる。自分が教えた名詞だからでもある。
さくちゃんはこの頃しきりに「あっぷ(アップル」)」「バー(バード)」などを言っていた。

温泉には、ログハウスのオーナーに配られる無料券で入らせてもらった。
熱いお湯を嫌がるさくちゃんはどうかなと心配だったけど、露天風呂はぬるめでちょっとの間入っていられた。温泉は混んでいた。

その後、スパティオ小淵沢の中にあるふるさと薬膳森樹で野菜たっぷりの晩御飯を食べ、戻ってからはログハウスで氷川きよしの曲に合わせてさくちゃんは踊りまくって、最近流行の階段上り下りをたくさんしてから寝た。

翌日は無料の県営八ヶ岳牧場とまきば公園で羊や馬と触れ合った。ここは広々としてのんびり出来て本当におすすめだ。

まきば公園

その後は清泉寮でランチを食べ、テラスの角の席で思う存分景色を堪能した。ここも、のんびりと八ヶ岳を楽しむには本当におすすめ。北尾君は「今まで何度も八ヶ岳に来ているのになぜここに来なかったんだろう」って言っていた。それにしても八ヶ岳は涼しい。‘避暑地’ってこういうことなんだ。この日も気温18度。名古屋では32度くらいだろうか。

県営八ヶ岳牧場

そうそう、このときさくちゃんのお昼ご飯をすっかり忘れていたんだけど、黒米ご飯を一杯200円で出して頂き、ジャージー牛乳をいっぱい飲んでおなか一杯になったさくちゃんは帰りの車中で大量に吐いた。チャイルドシートで寝ていたら急に咳き込んでたくさん吐いた。たらふく食べた後のチャイルドシートのおなかを丸めた姿勢も良くなかったのかもしれない。吐いた後もケロッと元気だったけど、その夜から呼吸もゼイゼイして本格的な鼻風邪を引いて病院にいく羽目になった。かわいそうな事をしてしまった。今後はさくちゃんのさらなる防寒も大きな課題だ。

ログハウスとよしこさん

よしこさん(仮名)は私の10歳上の先輩だ。学生時代にOGとしてお世話になって、よしこさんは卒業後30年近く経った今でも、未だに精力的に後輩の面倒を見ている。その責任感たるや頭が下がる。そして私たちは今でもこうやってよしこさんのログハウスに泊まらせてもらったりして、お世話になっている。

よしこさんは埼玉県に在住だが、大学を卒業して10年後に、貯めたキャッシュでログハウスを建てた。
確か北欧の会社で建てた、完全なログハウスである。暖炉があって内部はかわいらしいインテリアがたくさん飾ってある。よしこさんは、目標にした10年間は必要生活費以外は全部貯金して残りをコツコツと貯金をしたらしい。
というよりも、仕事が楽しくて仕方が無かったから他にお金を使わなかったということと、子供がいなかったので貯める事が出来た、と本人は言う。しかしひとえにこれはよしこさんの執念が結実した結果だと思う。八ヶ岳裾野にあるそのログハウスは、小淵沢駅からも近く電車でも来やすい。でもログハウスはもうすっかり森の中だ。目の前にはくるみの木がそびえて、リスが実を食べに来る。

場所は、だいぶ前から八ヶ岳に来るたびに物色していたという。よしこさんの、夢を実現する力にはいつも感心してしまう。やはり計画的に、強く強く思い続けた者が夢をかなえるんだという事実を突きつけられる思いだ。
このログハウスには何度かお世話になって、私も10年近く前から知っている。しかし、不思議なもので年を取るほどにその素晴らしさを思い知る。正直学生のころはなんとも思わなかった。住まいや住環境を快適にすることには興味が無く「みんなそんなに快適に暮らしたいですか?」って思っていた。よく引越しをする人とか模様替えをする人の意図が分からなかった。物を動かしたりして気分転換をして快適を得ることに何の意味があるんですか。快適な環境を自分のものとして確保する事にどうしてそんなに一生懸命になるんですか、と。しかし今では普通に、窓を開けると森があるその環境を自分のものにしたことの素敵さがわかるようになった。みんながそうやって一生懸命に自分の精神が心穏やかになれる環境を欲しがる意味がわかってきた気がする。まぁだけど、私には出来ないな。ログハウスとして維持する事には費用だけでなく手間も掛かるし、通うのも気力がいる。なによりもだれも遊びに来てくれなかったら寂しすぎる。だから私は遊びに行く側で終わるんだと思う。