初心者のための登山・山歩き入門
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毎年増え続ける山の遭難。登山ブームと共に登山者の人口も増え、それと同時に遭難の件数も増え続けています。
遭難者を年齢別に見てみると、毎年約8割を占めているのが中高年者、特に55歳~69歳までの人。原因の多くは、転倒、転落、滑落、道迷いです。
日頃運動をし体力をつけること、健康管理をしっかりとすること、登山前に体調を整える事。これらは登山をするための基本的なことです。しかしこれらだけでは遭難の危険を確実に避けることは出来ません。時間をかけて山について学び、幅広い知識や技術を学ぶことで遭難の危険を減らすことができるのです。またあらかじめ山岳保険に加入しておく事も大事なリスクマネジメントの1つと言えます。
| 平成20年 | 平成19年 | |||
|---|---|---|---|---|
| 人員 | 構成比 | 人員 | 構成比 | |
| 滑落 | 350 | 18.1% | 312 | 17.3% |
| 転倒 | 265 | 13.7% | 257 | 14.2% |
| 転落 | 102 | 5.3% | 102 | 5.6% |
| 道迷い | 769 | 39.8% | 628 | 34.7% |
| 疲労 | 89 | 4.6% | 94 | 5.2% |
| 病気 | 170 | 8.8% | 146 | 8.1% |
| 落石 | 12 | 0.6% | 17 | 0.9% |
| 雪崩 | 9 | 0.5% | 73 | 4.0% |
| 落雷 | 10 | 0.5% | 10 | 0.6% |
| 悪天候 | 12 | 0.6% | 28 | 1.5% |
| 有毒ガス | 0 | 0.0% | 0 | 0.0% |
| 鉄砲水 | 21 | 1.1% | 6 | 0.3% |
| 野生動物襲撃 | 24 | 1.2% | 33 | 1.8% |
| 不明 | 43 | 2.2% | 29 | 1.6% |
| その他 | 57 | 2.9% | 73 | 4.0% |
| 合計 | 1933人 | 1808人 | ||
| 死者・不明者 | 281 | 259 | ||
| 負傷者 | 698 | 666 | ||
| 無事救出 | 954 | 883 | ||
| うち中高年 1567人 | うち中高年 1439人 | |||
山岳遭難事故統計の事故要因データで毎年大きな割合を占めているのが転落と滑落です。つまづく、浮石に乗る、滑る、バランスを失う、などささいなミスから転落・滑落事故に繋がっています。これらの事故の多くは事故当事者の不注意やミスで、慎重に行動すれば防げるものがほとんどです。
常に慎重に行動するように心がけることが重要です。特につまづいただけで転落してしまうような岩場では細心の注意が必要です。
またすれ違いざまにザックが体に当たって転落してしまう事故もあるので、このような場所では自分の安全を確保するだけでなく、自分以外の登山者に危険を及ぼさないよう、また他の登山者の動きにも注意が必要です。
その他、気の緩みによる転落・滑落事故も多いです。危険箇所を抜けたあとは特に気が緩みやすく、「こんなところで?」と言う所で事故が起こるケースがあります。また山頂に登ったあとの帰路も気が緩み事故が多くなります。
危険箇所を抜けたあとやもう少しで帰れる、と思った時こそ、もう一度気を引き締めなおし慎重に行動するようにしましょう。
谷筋を埋めていた雪が夏まで解けずに残っているものを雪渓と呼びますが、雪渓も滑落の危険性が高いポイントです。雪渓で滑落してしまうと露出した岩などに追突してしまったり、シュルンドと呼ばれる雪渓の隙間に入り込んでしまう事故にも繋がります。シュルンドに入り込むと自力で脱出できなくなり、低体温症で命を落としてしまう可能性があります。
滑って滑落しないためにも、雪渓を歩く際には必ず軽アイゼンを装着しましょう(アイゼンとは滑り止めのために靴に付ける爪つき金具です )。
道迷いとは本来たどるべき登山コースを外れ、現在地がわからなくなってしまうことを言います。そして山中で何日もさ迷ったり行動が出来なくなってしまうのが道迷い遭難です。平成20年度の山岳遭難の統計を見ても、遭難者数全体の約40%が道迷いによる遭難。19年度でも約35%とダントツのトップです。
道に迷った時の対策より大事なのは、まず道に迷わない様にすることです。地図とコンパスをしっかりと使いこなせるようにしておくのは登山の大前提です。面倒くさがらずに小まめに地図をチェックし、現在地を把握することも怠らないようにしましょう。
また不注意により道標や目印を見落とさないこと。迷いそうな場所では緊張感を持って歩くようにしましょう。
道を歩いていて「おかしいな?道はあってるかな?」と感じたら、とにかくもとの正しいコースに戻ることが大事です。しかしまずは気持ちを落ち着かせるために一息入れるのも大事。冷静に周りを観察すれば、簡単に目印が見つけられることもあるのです。
目印が見つからなければ地図とコンパスを使って現在地を確認します。最後に現在地を確認した場所と方角、時間などを考慮しおおよその現在地を出せば、間違った場所を思い出せるかも知れません。
「もうちょっと行ってみよう」と言うのは深みにはまる典型です。現在地がわかっていないのなら、距離が遠くても最後に現在地を確認した場所まで引き返しましょう。しかし引き返す際にも注意が必要。来た時と景色が違うので、よく周りを観察しながら慎重に行動しましょう。
今まで歩いてきたコースもわからず、またたどる事もできない場合には、尾根の高い方を目指して登ります。
沢を下れば人家に出る、沢のほうが下りやすそうだ、と道に迷った時は考えてしまいがちですが、そうではありません。沢は進むにつれて険しくなり、滝や崖が現れ立ち往生、もしくは転落してしまうと言うのが実際です。
このような状況で上へ向かって登り返すのは非常に重労働ですが、尾根に出ると視界が開けるので現在地の確認が容易になります。また登山道は尾根上を通っていることが多いので行き当たることができるのです。
沢を下るのは自ら死に近づくようなもの。決して沢は下らないようにしましょう。
稜線に出ても雨や霧で視界が悪い時には無理に行動せず、雨風をしのげる場所で体力を温存します。しかし待機をしても状況が変わらなそうな場合には、ビバーク(緊急露営)をする必要があります。日が暮れないうちに安全な場所でビバークし、翌日に備えて体力を消耗しないように努めます。
高山病とは標高があがり酸素が薄くなることで生じる、疲労や発熱、吐き気、頭痛などの様々な症状の事をいいます。2000m以上の山でも高山病になり、バテや風邪の症状に似ているので区別がつかないこともあります。
高山病の症状が出ているのに無理をして行動をすると、さらに症状が重くなり危険な状態にもつながります。高山病になったときは無理に行動せず、体をやすめながら様子をみましょう。行けそうなら登山を続ければ良いのですが、体調不良が続くようなら高度を下げるために引き返しましょう。
高山病を予防するためには睡眠不足での登山を避けること。一気に標高を上げる登山やハードな登山、また体力に自信の無い人は、前夜発登山などは避け、山麓で一泊する方が良いでしょう。
富士登山のように車で一気に標高の高い場所に行く場合には、体を高度に慣らす必要があります。登山前に体を高度に慣らす時間を作ること、また登山初日はなるべくゆっくりと歩きましょう。
低体温症とは直腸温などの中心体温が35度以下になった状態を言い、それよりさらに体温が下がり続けると、最悪の場合疲労凍死をしてしまいます。登山では悪天候で行動不能になり、ビバーク中に疲労凍死というパターンが典型です。
低体温症は冬山だけでなく、夏山でも風雨にさらされ続ければ起こりうることなので、夏山と言えどしっかりとした防寒対策や、濡れたままの服で冷えないよう着替えが必要です。
もちろん、悪天候時に起こりやすい低体温症を防ぐためには、悪天候時に登山をしないこと。気象状況の変化を予測し、予定通り進むか、下山するか、待機するか、などの判断を下すためにも、それらの知識を身につけていなければなりません。
落石による遭難事故は全体の割合に比べ少ない方ですが、落石に直撃されると死亡、重傷を負うケースが多いです。落石が多発する場所は、雪渓や岩場、ガレ場。落石の可能性がある場所を通る際には上部を警戒すること。またこのような場所では休憩をしてはいけません。
雪渓の落石は長い距離を転がり、猛スピードで加速して落ちてくるために大変危険です。また音も聞こえづらく多方向からも落石が飛んでくる可能性があるので、雪渓を歩く際には充分周囲に注意を払わなければなりません。
ガレ場や岩場での落石は人為的なものが多いです。特に夏場の登山者が多い時期のガレ場では頻繁に人為的な落石がおきています。このような状況の場合、自分の上部を警戒するのはもちろん、落石に気づいたら自分以外の人に知らせなくてはなりません。「ラーク!!!」と二、三度落ちていく先に叫んで合図を送りましょう。
また、自分で落石を発生させないようにすることも重要です。浮石には良く注意し、怪しいなと思うものがあったらしっかりと確認し、安定しているとわかっても静かに扱うようにしましょう。
登山は自力下山が基本ですが、道迷いで遭難してしまったり、怪我で動けなくなったり、登山中に病気で倒れたりしてしまったりなど、どうしても救助の手が必要になることもあるでしょう。
遭難者の救助や捜索には民間の救助隊や航空会社があたり、その費用はかなりなもので自己負担しなければなりません。
例えば救助隊の日当、探索のための装備購入費や食費、交通費、そしてヘリコプター代など、遭難事故には様々な費用がかかります。状況にもよると思いますが民間のヘリコプターが出動した場合には、数百万円もの費用がかかることもあります。助かる、助からないに関係なくそれらの救助費用を払わなければならず、自己負担で支払うのはかなり大変なことです。
そのため「山岳保険」があり、遭難事故にかかる費用の全て、または一部を保険で支払うことができるのです。
補償される内容は、遭難捜索費用(救援者費用)、死亡・後遺症、入院費など。保険のタイプは2つあり、「ハイキング・登山」、「オールラウンドな登山」のように登山のスタイルによって選べるようになっています。
「ハイキング・登山」のタイプは名前の通り、ハイキングや登山、縦走など無積雪期の登山を補償しており、オールラウンドなタイプはフリークライミング、アルパインクライミング、沢登り、冬山の登山などあらゆるジャンルの登山を補償の対象としています。
しかしそれぞれのタイプの保険にも、保険会社毎にプランが用意されているので、その中から自分の登山スタイルにあった保険を選ぶ必要があります。また保険がカバーする補償内容も当然違ってくるので、どの部分を補償しているかしっかりと確認しておく必要があります。