初心者のための登山とキャンプ入門

登山地図の読み方・見方。昭文社の「山と高原地図」の紹介

昭文社 山と高原地図

登山で「地図」というと、大きく「登山地図」と「地形図」に分かれますが、このページでは「登山地図」の解説をしています。登山で定番の「山と高原地図」を使い、登山地図の特徴や読み方や地図の楽しみ方などを紹介しています。

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山と高原地図の特徴

山と高原地図 槍ヶ岳・穂高岳 上高地 2016

昭文社より出版されている登山地図の「山と高原地図」です。毎年最新版が発売されている、40年以上のロングセラーの登山・ハイキング用の地図です。かつてはエアリアとかエアリアマップと呼んでいました。一冊900円(税別)で、日本100名山を含む全国の主な山(約1500山)を59のシリーズで紹介しており、大変便利な地図です。「あの辺りの山を登ってみたいな」と漠然と山域が決まったら、何はともあれ入手して欲しい地図です。

「あの山に登りたいんだけどどの地図を買ったら良いかかわらない」という方は、下記リンク先をチェックしてみてください。山と高原地図に収録されている山の一覧や、100名山が収録された山と高原地図の情報をまとめています。

大きさと縮尺 付録

山と高原地図全体
山と高原地図

写真にあるように、ケースの中には1枚の大きな地図とその山域のガイドブックが入っています。地図には防水加工がしてあり、丈夫なので何度でも何年間でも使えます(擦れると印刷は消えてしまうので要注意)。

縮尺は、多くが50,000分の1で、これは地図上の1cmが実際の500mということです。(1cm=50,000cm。→つまり 1cm=500m)。

山と高原地図 表面と裏面の記載内容

このようにメインの山域部分は表面に、裏面には周辺の主な山や町までも含めた周辺図、人気エリアの拡大図などが載っています。裏面の内容はシリーズによって異なります。

概念把握のための山と高原地図

山と高原地図の使い方としては、一番にその山域の全体像を把握できる点です。地図は山域(山のかたまり)ごとに作られているため、「中央アルプスってここらへんの事なんだな」とわかるわけです。その上で、「自分の登りたい山はここに位置してるんだな」とわかります。これは広い範囲をカバーしている地図だからでこそ把握できることです。歩くルートだけの地図では知ることができません。

「自分は日本のココの部分を歩いている」と知ることは、実は登山の大きな楽しみであり、初めて行った登山を楽しく思うか思わないかにも大きく関わってくると思います。

情報源としての山と高原地図

山と言ってもどこでも歩ける訳ではなく、歩いて良い道、つまり登山道が決まっています。山と高原地図は登山者専用に作られた地図なので、その山のどこに登山道があって、何駅からアプローチできて、どこにテント場や山小屋があって、そこまで何時間で歩けるのかが一目で分かるようになっています。最低限必要な情報が揃っているので、すぐに計画を立てられる事が最大の利点です。

「いったいぜんたいどこを登ったらいいんだ」と初めは思いますが、いざ地図を開いてみるとその山の頂上に繋がる登山道は数本しか無く、しかも電車とバス利用なら入山口は1つに絞られ、1泊2日しか休みがないからこのコースしか無いね、という具合にすぐに歩くコースが決まってくるはずです。この、情報の多さから計画を立てるときに大変に便利です。

主な役割はこの2点ですが、裏を返せば「詳細ではない」ということが言えます。つまり「右に行くのか左に行くのか分からない」というシーンで使う地図ではないということです。このために、下記リンク先で説明している「地形図」を使います。

地図を眺める楽しみ

このように、広い範囲を一目で眺められて登山に必要な情報が揃っていることから地図を眺める楽しみは尽きることがありません。大地の上を歩いている想像をふくらませて計画を練る楽しみを与えてくれます。これも山と高原地図の特徴です。

というのは、別ページで説明している「地形図」ではこの様は登山に必要な情報の記載が無いので計画をイメージする段階では役立ちません。またガイドブックでは部分的な記載にとどまるため、想像をふくらませてくれるよりもむしろ現実的な印象を与えて想像をかき消してしまうと思うのです。

山と高原地図にはどんなことが書いてあるのか

多彩な登山情報

下の地図をもとに、どんな情報が載っているのか具体的に見てみましょう。

山と高原地図 越百山付近

これは、シリーズ40番の ”木曽駒・空木岳 中央アルプス” です。一番の人気エリアは木曽駒ケ岳なのですが、情報が多く説明しづらいため、日本300名山の越百山(こすもやま)に登るルートで見てみましょう。

左上の「登山口」の文字が見えますか。すぐにここからが一番早いルートであるとわかるので、長野県大桑村側から入山することにります。
登山口である「今朝沢橋」は標高1080m。かなり山奥といった印象です。車が50台留まれるほどのスペースがあり、ここまでのバスはありません。最寄りの大きな駅である上松駅からタクシーなら40分とあるので、マイカーでも同程度の時間がかかるとわかります。

歩くルートは赤い実線です。ちなみに赤い破線(点線)は「点線ルート」とも呼ばれ、道がわかりづらかったり廃道に近かったりと、注意を要するルートで初心者は選択しない方が賢明です。

登山口から福栃橋までは、1時間20分の林道(車道)歩きです。山頂に向かう右向きの矢印の数字が登りのコースタイムで、休憩せずに歩いた場合にかかる時間です。画像からはちょっとわかりづらいですが車道は白い線で表示されています。

福栃橋からは車道を離れて、山道になります。1時間ほど尾根をグングンと登ってシャクナゲ尾根に上がります。山と高原地図では等高線が20mごとに引かれています。これを数えることで、この1時間に何m登るのかが分かります。標高ごとに6段階程度にわけて色が塗られており、標高の低い部分の緑から始まり、高い部分に向かって茶色くなっていきます。さらに陰がついていますから、等高線が読めなくても山脈の形を立体的に見ることができます。

上がったところを「下のコル」といい、付近に「下の水場」と呼ばれる水場があるようです。尾根に上がりきったところから急に水が出ていることは少ないので、尾根上部に近づいてきたら注意深く水場の看板を探しましょう。

コル / 鞍部

コルとは、「鞍部(あんぶ)」の意味で、馬の鞍のように高いところと高いところの間の、くぼんだ部分のことです。登山では地形を表すのに良く出てくる言葉で、この低い部分をまたいだ形で道が通っていれば「峠」と呼ぶこともありますし、「乗越(のっこし)」なども同じような意味です。

さらに尾根上を30分歩くと「上のコル」という1749m地点があるようです。長い単調な尾根が続く場合は、このような目安を確認して歩くと現在地を把握しやすいですね。

さらに1時間半あるくと御嶽山見晴台に到着。越百山ではここが7合目の地点のようです。
ここを更に10分登ると水場の分岐にぶつかり、「上の水場」が。更に1時間20分で「越百小屋」があり、これは期間営業のマークなので営業期間の確認が必要です。

そこから1時間で2613.2mの越百山に到着、といった具合です。戻りは反対の矢印を参考にします。

このように1つのルートを見ただけでもたくさんの情報が載っていました。

山と高原地図 凡例

他に、危険マークや迷い易い箇所、温泉やバスルートなど登山に欠かせない情報が一目で分かります。眺望やお花畑のマークもコースを選ぶのに参考になります。

コースタイムとは

山と高原地図の最大の情報は、コースタイムでしょう。コースタイムとは、歩く時にかかる時間のことで、これを目安に計画を立てます。コースタイムはガイドブックや現地の地図などによりさまざまですが、山と高原地図では次のような状況を想定してコースタイムが設定されています。

  • 40-50歳の登山経験者
  • 2-5名のグループ
  • 山小屋利用前提の装備
  • 夏山の晴天時

基準は山域によっても違うようです。また、シリーズ全部を同じ人が歩いて作っている訳ではないのでバラつきもあります。たとえば、「奥多摩のコースタイムは余裕で歩けるのに、丹沢のコースタイムは厳しい」という具合です。丹沢の地図は、より健脚な人が作ったのでしょうか。ただ近年では高齢者の登山者が増えたため、徐々にゆったりと余裕をもったコースタイムに変えていっているようです。
このように、あくまで目安ですし、かつスムーズに登山を行った場合の時間となります。

これに対し、例えば次のような条件があるなら、かかる時間は増えていきます。

  • グループ(登山の場合はパーティーと言います)に初心者や子供が含まれている
  • 10人程度の大パーティ
  • テント泊や連泊などの重い装備
  • 計画するのが梅雨の時期
  • 人気で渋滞が起こるルート

時間がかかる要因が重なれば、コースタイムを倍近く見積もって計画を立てることもあります。

また地図のコースタイムと自分の早さを比較することで、「自分はコースタイムの1.5倍程度かかるようだ」 などと目安ができます。これを知ることは登山の技術としてはとても重要です。「悪天が近づいてきたから計画を変更して早めに下山しよう」などという時に、先の見通しを立てるのにも役立ちます。

その他の便利情報

地図の裏面には、その山域に便利な情報が載っており、それはシリーズによって異なります。

山と高原地図 展望図

上の写真は富士山地図(2000年版)の裏面ですが、富士山頂から見える展望図が載っています。特に展望が開けている山頂のシリーズではこのような情報もあり、これも楽しみのひとつになります。

この他、地図の裏面には役場や交通機関、宿泊施設、入浴施設、キャンプ場の電話番号が載っています。登山装備表もあり、忘れ物チェックに便利です。

付属のガイドブック

山と高原地図には、地図の山域の代表的コースのガイドブックが付属されています。

山と高原地図 小冊子 付属のガイドブック

こちらは、先ほどの越百山のルートについて書いてあるページです。どんなルートで歩いたらよいかわからない場合は、このガイドブックに設定されたルートから選んでみるのも良いでしょう。

「中級」などとレベルの目安も書いてあります。
人気のルートは、やはり道がよく踏まれていて歩きやすかったり、トイレや山小屋、バスなどの便利さがあるとか、もしくは花や見晴らしのどちらかが期待できるコースが多いと思います。

このガイドブックからの文章からは、登山口や分岐の目印になるものや、地図上からは分からない見晴らしについてとか見られる植物についての情報が読み取れます。
また、「つまらない道です」とは書いていませんが、「ひたすら眺望の効かない尾根道が続き」 などの表現があって参考になります。このコース上ではどこが最大の山場なのか、などもなんとなくイメージすることができます。

情報の更新

山と高原地図は、定期的に情報が更新されて発売されています。しかしその都度買わなければいけないかというと、そうではありません。先にも書きましたが、丈夫なので大事に使えば何年間も使えます。地形はめったに変わりませんので、5年前の地図を取り出してどのルートを登ろうかなと計画することも十分に可能です。

気をつけたいのは、以下の情報です。

バスなどの交通機関

しょっちゅう変わります。最新の地図を買ったとしても、バス会社のwebサイトで確認をしても良いくらいです。

道路の通行止め

土砂崩れで簡単に通行止めになったりします。また、山奥の道は廃道になっていたりもします。そのルートが属する市町村の公式ホームページ(観光課など)で情報を提供しています。

大桑村HP 通行止めのお知らせ

登山道の通行止め

尾根を巻くような道、沢沿いの道などは大雨によって簡単に土砂崩れが起き、通れなくなったりします。人気のルートはすぐに復旧が進むでしょうか、中には長らく通行止めになるところもあります。これも同じく観光課などに問い合わせましょう。

水場

天候により枯れる水場もあります。絶対にそこで補給しないと足りないという場合は、同じく観光課や近くの山小屋に聞いてみましょう。

小屋の営業

普通に営業をやめている山小屋もあります。泊まる予定があれば事前に電話して営業しているかの確認をしましょう。

逆に人気の山域では、HPを設けて積極的に登山情報を提供している山小屋もあります。この項に書いた、特に変動的な水場や通りづらい登山道の情報について重点的に提供してくれていたりします。
まず山小屋のHPを見てみましょう。公開していなければ、観光課HPの「登山情報」などを探し、不明であれば山小屋や観光課に電話して問い合わせるという順番で行うとスムーズだと思います。

なお、わかりづらい入山口の目印、駐車場の混み具合などについて一番イメージが伝わりやすいのは、やはり登った人のブログなどです。親切な写真をUPしている方が多いので参考にすると良いでしょう。

スマートフォンアプリ 山と高原地図

山と高原地図のアプリも発売されています。1シリーズ500円程度で、紙の地図と同様に59のシリーズに分けられています。地図を広げなくても気になったらどこでも購入して見られるので、スマートフォンを使い慣れている人にとっては便利だと思います。ただ、見れる画面が小さいことから、山域全体を把握するには向きません。

しかし、スマホの画面でいつでも地図を見れる、というだけがウリではありません。

携帯電話の電波が圏外でも、GPS機能が働いて自分の現在地が地図上に表示されます。「だから地図が読めなくても大丈夫」とは言えませんが、ひとつの安心感になることは確かでしょう。これにより、歩いたルートを地図上に表示させることができます。

そして下山後は自分のパソコンへデータを送信して、パソコンで記録を楽しんだり「ヤマレコ」などの登山コミュニティサイトに投稿したりという事もできます。ヤマレコでは歩いたデータを標高や距離でグラフに表示して楽しむこともできます。まさにスマホやパソコンで何でも楽しみたい世代に向いていますが、登った山や山に入った日数を数えてみたり歩いたルートをつなげてみたり・・・と、記録を溜めていく楽しみは今も昔も登山の楽しみのひとつですよね。

ただ、携帯の充電が無くなったり水で故障したりということもありますから、スマホに頼らずに必ず紙の地図を携行してサブ的な楽しみとしてのアプリにしていただきたいと思います。また、使う携帯電話の環境によって動きにくいとかエラーもありますから地図データの購入の前には十分に確認しましょう。

山と高原地図アプリ以外のGPS地図アプリについてはこちらに詳しく書いています。

コンパスと地図グッズ

シルバ / シルバコンパス No.3R
SILVA(シルバ) COMPASS RANGER NO.3

地図を開いたところで、最低限どちらが北かがわからなければ地図を見る向きがわかりません。そのために「地図とコンパスはセットで携行」を基本にしましょう。通常地図の上が北になりますからコンパスの差す北に合わせます。
コンパスをもっと使いこなすテクニックは別ページで書きたいと思います。

ノースフェイス フロントアクセサリーポケット
ノースフェイス フロントアクセサリーポケット内部
THE NORTH FACE フロントアクセサリーポケット

こちらはショルダーハーネスに装着して使用する、マップケースとポケット、ポーチが一体型になった商品です。地図を取り出す手間なくサッと現在地を確認でき、また登山中に必要な小物類を一箇所に集中できる優れものです。