初心者のための登山とキャンプ入門

トレッキングポールのレビュー

レキのSPDサーモライトAS

トレッキングポールは本当に便利なのでしょうか?20年前には流行っていなかったのに、今ではなぜか登山の定番みたいになっています。その実態を調査すべく、初心者に定番とされるトレッキングポールを購入し、ここで検証してみたいと思います。

石井スポーツ 2016冬季 岳人祭

トレッキングポールって要るの?

トレッキングポール?いやー山始めるのに、まずは必要ない装備でしょ。膝が悪い人ならまだしも。第一、じゃまでしょ。捻挫した時の予備としては良いけど。岩場ではしまったり、めんどくさそうだし。

トレッキングポールをまだ手にしていない今では、本当に心からそう思っています。

私は高校山岳部から登山を始めて20年近くなりますが、手に何かを持って歩くのが好きではありません。過去になりますが、冬の仙丈ヶ岳稜線ではさすがにピッケルは手に持ったものの、樹林帯ならピッケルはザックにくくりつけてしまいます。残雪の立山でも雪がぐちゃぐちゃでツボ足がしっかり効くなら、ピッケルは持ちません。それぐらい手に持って歩くのがイヤだし、手に注意が取られてしまうことでバランスをくずし、結果、荷物の重さが腰に来て腰痛になる気がしています。荷物が重いときは、腕を前で組むか後ろで組んで上半身を揺らさないようにそっと歩きます。そうやってバランスを取るのだと教わってきました。しかし先日のテレビで野口健が言うではありませんか。「トレッキングポールはすごく良いです、腕の推進力で前に進むんです」。野口健が私にとって特別な存在なわけではなですが、彼には、企業の宣伝とかでなく自分の意思で発言をしている、というイメージがあります。最近登山を始めた人はこんな疑問は沸かないかもしれません。でも私のようにちょっと前に登山を始めた人は、きっと疑問をもっていますよね。だってそのころは老人が杖として一本使うのが主流で、今のような二本スタイルの人なんていなかったんですから。

そこで、実際買って使ってみて、その結果をレビューしてみようと思います。

トレッキングポール選びと購入

メジャーなブランド、レキを知る

いざ買おうとなった時、どうやって選べばいいのでしょう。とにかく私にとっては全く知らない道具なので、まずは定評のあるブランドのものを買うことにしました。定評があって、初心者に人気のもの。すぐに人気のブランドはドイツの「レキ」とアメリカの「ブラックダイヤモンド」だとみえて来ました。もちろん、価格や性能で細かく比較するともっともっといろいろあるのでしょうが、みんなの知っている「あこがれ」的なブランドとして「レキ」があるようなので、それを買ってみることにしました。その上で、検討するポイントは以下の6つくらいでした。

アンチショック

地面にポールを着いた時に衝撃を吸収する機能です。「慣れていないと違和感がある」、「重くなる」という不必要説と、「これがあると一日中使う場合に手首や肩の疲れが違う」という意見があります。

ロックのシステム

レキでは、スピードロック(SPD)とスーパーロックシステム(SLS)の2つがあるようです。ポールの長さを決めた後、SPDはレバーみたいので固定するから雪の時のグローブの上からでも調節でき、SLSは普通にクルクルっと回して固定するタイプだけど自社データによれば、その固定力は業界随一らしい。SPDの方が重くなるし、SLSよりは固定力も弱いようです。

素材

素材では、カーボンになると軽いけど値段はグッと上がる。「軽いけどその分折れやすい」という意見と、「カーボンが折れるようなのはムリな負荷を掛けた誤った使い方でカーボンじゃなくても曲がる」という意見もある。また、初心者にオススメされるのはだいたいがアルミ。「とにかく軽い方がいい」とは聞くものの、せっかくレビューを書いてみても値段が高すぎて初心者の参考にならなければ意味が無いのでアルミを購入することに。

重さ

調べてみると、重さの相場は一組400~500gくらい。楽天のレビューで見ると470gのとある商品を買った人が「とにかく軽い」と評価が高い。なので、ここらへんの数字をもとに比較してみる。レディース専用に作られたものなどはポールの最大長さを短くして軽量化しているものもある。女性で「自分しか使わない」という場合はレディース用を検討しても良いかもです。

収納後の長さ

同じくレビューで見ていて、多くの人が気にする点が「収納後の長さ」でした。電車での移動時などに気になるようです。とある69cmの商品を買った多くの人が「ちょっと長い」との不満を持っていました。であれば、もうちょっとでも短いのを選びたいですね。

グリップ

T字型とI字型があって、Tは一本で杖のように使う用で、二本で推進力として使う場合はI型が適しているようです。また素材は、レキの場合はコルクとゴムがあって、「コルクは握っていて気持ちが良い」という感想も多い。I型の中でも、レキでは「エルゴングリップ」と名付けた研究しつくされたグリップらしく、記事には「ずっと握っていたい理想形状」とある。そんな形あるんだろうか。実物を手にするのが楽しみなところです。とにかく、今後のスタンダードは 「ダブルポールで推進力として歩く」 が強いそうなので、今回はそれを試してみたいと思います。

候補の2点

だいたい検討する点は上記のようなことで、その結果、ガイドブックなどで初心者にオススメされている2点が候補に挙がりました。

  • ①SPDサーモライトAS 500g、収納後 66cm、SPDあり(レバーで固定するスピードロック)
  • ②AGサーモライトAS  445g、収納後 64.5cm、SPDなし
レキ SPD サーモライトAS
① LEKI(レキ) SPDサーモライトAS
レキ AG サーモライトAS
② LEKI(レキ) AGサーモライトAS

値段はそこまで変わらなかったので、最後には 「軽さ or  ロック」 という選択になりました。50gと言えば卵1つ分。ずーっと使うならちょっとでも軽く、短い方が良い。でも、スノーシューや残雪期などで使おうと思うならSPDがあった方が良いかも。迷った結果、「もしかして自分の母親の老後に日常用で貸すことがあるかも(I型は無い?)」、「子供の杖として使う日が来るかも」という点で、調整が簡単そうなSPD付き(①)を買う事に決めました。また、このSPD(スピードロック)は新しい機能として売り出し中らしいのでこれから初心者の人が買うかどうか検討するのに役に立つと思いました。余談ですが、日本製で古くからポールを専門に作っている会社にシナノというメーカーがある事を後で知りました。日本人向けに考えられていて、こちらも評判が良いそうです。購入を検討する際はご参考にされてください。

トレッキングポールの基本的な使い方

ポールを持つ角度

背筋を伸ばしトレッキングポールのグリップを持った状態で、肘の角度が90度になるのが平地での持ち方の目安です。登り坂ではポールを短めに調節し、下りでは長めに調節します。いずれの場合も背中が曲がらない様な長さに調節するのがポイントになります。

使用方法

基本は、背筋を伸ばして普通に歩くことです。手を振り上げたり体重をあえて乗せにいったりせず、自然にポールの先端が地面を突くように使用します。不自然な歩き方にならず、普段の歩き方ができるような使い方が基本になります。遠くに突いて体がブレるようだと疲れるので、体に近いところで突きましょう。

大きな段差を登るときは、肩より高いところに拳が来てしまうようでは腕が疲れてしまいます。高い場所に突きたいときは、グリップから手を外してシャフトを握ります。そしてポールに体重を掛けるのではなく 、足に重心を移動させて登るときに「支える」という感覚です。


下りが続く時は、少しシャフトを長めにして、体の少し前を突くことで上半身のブレ防止や勢いからの膝への衝撃を減らします。

大きな段差を下るときは着地点にポールを突き、屈んで、ポールでバランスを取りながら足全体を着地させると膝への衝撃がだいぶ軽減されます。

いきなり実践でトレッキングポールのデビューをしてしまうと使いこなせないかもしれないので、まずは近場のウォーキングで使用して感覚をつかみましょう。

初使用の模様と実感

ネットで注文したトレッキングポールが届きました!

SPDサーモライトAS

まずはセッティングをマニュアルで読んだ通りに、やってみます。(動画初心者でスミマセン)

第一印象は、軽いです。クルクル回すロックも軽く、レバーも簡単。グリップも握りやすいです。アンチショックは、ちょっと硬めにバネがあるという印象です。レキには必要最低限、必要不可欠な機能としてONとかOFFとかの機能もありません。肩、ヒジ、手首への衝撃を25~30%減らしてくれるそうです。

スピードロック(レバーで止めるやつ)については、勘違いをしていました。1本のポールに2つ調節するところの1つがスピードロックなんですね。なので、長さを調節するにはその1つを緩めて短くできるので問題ないのですが出したりしまったりするときは結局クルクル回すスーパーロックも使わないといけないんですよね。まだ雪の中で手袋をはめたまま長さを変えたりしていないので分かりませんが、スピードロックが無い方にすれば50gも軽かったと考えると、もうちょっと検討の余地ありだったと思いました。購入の際は候補を決めてからお店で持って見て買った方が良いかもしれません。

次に、実際に使って歩いてみます。緩やかな登りです。

ゆっくり歩いているからでしょうか。荷物が軽いからでしょうか。ポールを使う意味がよくわかりません。うーん、使い方間違ってるのかな~ 持っていると、ついつい、突いてしまいたくなるんですよね。これが、足の疲れを軽減させているんでしょうか。

初めてポールを使う人 その2 の例です。

これは、完全に、効果的に使えていない人の例でしょうね。。。たぶん、手と足がいっしょに前にでるのは違うんじゃないか、というかんじがします。やはりイキナリだと効果的に使うのは難しいのではないでしょうか。

今度は下山です。

使い方はこんな感じで合っているのでしょうか?低い階段だったので、そこまで効果が分かりませんが、この「太ももへの負担が軽減されている感覚」が長く続くと違ってくるかもなあ、という感じはします。

まとめると、初使用の実感としては、「使い方がイマイチわからない」でした。そして! たった、登り1時間15分、下り20分(ほとんど階段)だったにもかかわらず、翌日は手首が痛くなってしまいました。アンチショックも付いているのに・・・。やはり登山靴だけでなくトレッキングポールも、新品を本気の登山でイキナリ使うのではなく、町中や軽いハイキングで慣らしてみるのが良さそうですね。

慣らし、練習

翌々週、今度はもう少し傾斜のある山で試してみました。今回2度目で出した結論の一つは、子連れの場合の 「登り」 ではムリに使わなくて良いかも、という事です。写真を撮ったり、手を引っ張ったり、ラムネをあげたり、止まったり、しゃがんだり、歩いたり・・・という場合には、こんな風にザックにくくりつけてしまった方が良いかもしれません。写真のザックはドイターのフューチュラ28です。このように収納した時のトレッキングポールの長さは66cmです。見た目ほどじゃまな印象はありませんでした。

レキのポールとドイターフューチュラ28

下の写真で拡大していますが、このように最近のザックにはトレッキングポールを収納するフックまであったりと親切ですね。無くても特別に問題の無い機能ですが、ザックを買うに当たって、トレッキングポールも使う予定の人はチェックすると良いかもしれません。

ドイターフューチュラ28

そして今回の下りでは、トレッキングポールは大活躍しました。大きな段差は少ないものの、登山道上にコロコロと割れた石の乗っている道でしたので、とにかく滑らないように太ももを一瞬たりとも油断させられない道です。

トレッキングポールを使って下山

写真のように、子供(3歳3カ月、95cm)に一番短くして持たせ、2人で片手づつ下りました。子供もろとも滑るわけにはいかないので、こういったところではスピード制御やバランスを取るのに非常に役に立ちました。 子供が持って役に使いこなせていたのかは分かりませんが、このように滑る不安定な道では、本人が持ちたがりました。ですのでこれからも子連れの時は必ず携帯すると思います。

写真は並んで歩ける広い道ですが、これが1人しか通れない滑りやすい道になった時は子供のポールをザックにしまって縦に並んで手を引いて歩きました。この場合でも自分が非常に不安定な個所を歩くことになるので、谷川に落ちないように3本目の足となるポールはとっても役に立ちました。

結論

まだ2回しか使っていませんが、下山の転落防止という点ではとても効果を感じました。今後は登りの推進力としての効果を実感したいところですが、それは一定の時間ガシガシと歩き続けるときに分かるのかもしれません。登山ツアーの方をたまに見かけると、かなりのハイペースで、それこそスポーツのように歩き続けていたりしますよね。ああいうときに違いが大きく出るのかなぁという感じもします。また、そういった使い方を試してレビューしたいと思います。

以上、私達の数回の使用とこの友人の例を考えてみると、ある仮説が浮かんできました。長年山を歩いてきてなんとなく自分の歩き方を持っている人が急に握ると「使い方が分からない」、「もしかして練習すればなれるのかな?」ということになるのではないか、ということです。また、新しいグッズを使うことへの過度な効果の期待、という点もあるでしょう。それがイマイチぴんと来ないので、「役に立っているのかどうか、わからない」という感想を持つのではないか、と推測します。ただ、下りや不安定な場所で支えになる、というだけでも持っている価値はあると思いますので当面はそこをメインに使っていこうと思います。以上レビューでした。

他の人の例 ―持って行ってよかった!編―

友人がこの夏富士山に登るというので、このトレッキングポールを試して使ってみないかと提案したところ、ぜひ使ってみたいと返事をもらいレビューをお願いした。

友人は39歳女性、普段は山には登らないけど昨年富士山に登り、富士山ブームに乗じて毎年夏には登ろうかということらしい。普段は運動をしないので細身で筋力もありません。トレッキングポール使用は初めてで、事前の練習もナシです。ガイドブックなどで事前調査を欠かさないため、流行りのトレッキングポール使用にも前向きなもよう。以下彼女の感想です。

「トレッキングポールはすごく役に立ちました!私の場合、一番役に立ったのは岩場の登りです。岩を手で掴むのに前かがみにならなくていいので、去年に比べてすごくラクに登れました。ポールを突いているとそういう不安定な所でも上半身がブレないんです。あと、アンチショックはすごく良い。ちょうどいい具合のクッションで、その弾みでヒョイっと自分の体が持ち上がっちゃうくらいの感じさえした。もし買うなら絶対アンチショックの付いているものにします。」

また、同行の友人も新たにトレッキングポールを購入し使用したそうだが、便利だと言っていた、とのこと。

これはどういうことでしょうか?普段登山をしない人のほうが、トレッキングポールの効果を感じやすいのでしょうか。もしくは、富士山だから、という何か理由があるのでしょうか。

手首が痛くならなかったか?という問いには、それは全くないが、ストラップ豆が出来た、とのこと。それくらい利用出来たっていうことなのでしょうね。ポール自体については、グリップが少し太く感じた、とのこと。次回登山をする機会があったら持って行きたいかと尋ねたところ、「絶対持っていく」とのこと。重さについても「重いと感じなかった」ということだが、女性用の製品が売っているのなら、購入する際にはそれもチェックしたい、ということでした。

後日談:ベテラン読者の方からアドバイス「ストラップ使いが重要」

トレッキングポールの持ち方

実は、このページを読んでくださった読者の方から貴重なアドバイスを頂戴しました。改めて図を入れて 解説したいくらいの内容ですが、とりいそぎ簡単に記すと以下のとおりです。

  • ストラップの握り方はとても重要で、正しい使い方は、「ストラップの下から上に手を入れて、ストラップと一緒にグリッ プを握る」である。(よって動画のように、手首がストラップにぶらさがっている状態は間違いで、上の写真は正解)
  • 間違ってストラップの上から手を入れて使用したときの弊害。
    • ストラップが手首の下部を締め付けるため手首が痛くなりやすい。
    • 常にグリップをしっかり握っておかないとポールがグラグラしてコントロールできなくないため、手首や指が疲れやすくなる。正しく持てばグリップに軽く指を添える程度でコントロールできる。
    • 躓いたりして地面にポールごと手をついた場合に、開いた親指がグリップとストラップの間に挟まってしまって怪我をするおそれがある。
    • 必要な時にすぐに掌をグリップの上に乗せて杖のように重身を乗せて身体を支えるということができない。
  • ストラップの長さ調整は重要。快適な長さに調節を。
  • ポールを前に出すときは手首を使って前に出すと、手首への負担が掛かり、良くない。基本は、前方ではなく身体の横に近い位置にポールを突いて身体を押し出すイメージ。(突く位置は傾斜や登り下りの状況に応じて変わる)
  • 腕の振り方は、ポールを持ったとしても普通に歩くときの振り方と同じ。つまり足と反対の腕が前に出る。

ということです。 そしてかれこれ約20年愛用している感想としては次の通り。
「特に下りではヒザへの負担が軽減し疲れが軽減した、浅い沢を渡る時に足場を探す時などにも便利だし、身体がとても安定し、腕も自然と90度位に上がっているため手指のむくみも無くなった、もう身体の一部のようで欠かすことのできないアイテムである」とのことです。

実に羨ましい!最近特に登山での事故がニュースで取り上げられることも多いですが、装備を正しく使いこなすことで軽減していくことが出来るだろうと思いました。