初心者のための登山とキャンプ入門

初心者の八ヶ岳「天狗岳」登山日記

八ヶ岳 天狗岳への登山道の様子

一日目 白駒池から黒百合平へ

起きたのは朝5:30分だった。
前回の雲取山の時もそうだが今回もしっかりと睡眠をとることができた。
出発には充分早い時間だが、ワコールのタイツに足をねじ込むのには時間がかかる。
インスタントコーヒーをジップロックに入れ、水をハイドレーションパックに入れ出発。
6:30前だ。

土曜日の早朝だと言うのに、
東西線の利用者は意外に多い。
ザックを背負った山スタイルの人もちらほら。
みんなどこの山に登りに行くのだろうか。

中野駅には7:30分前に着きヤハケンと合流した。
こんな早朝だと言うのにお互いテンションが高いのがわかる。
テンションが上がりすぎないよう押さえながら、
一路西へと車を走らせた。

北八ヶ岳へは関越と上越を使って向かう。
妙義を過ぎ碓氷峠を過ぎればもう長野県だ。
トンネルを抜ければ視界のいたるところに山が写る。
天候は晴れ。そして雲は薄く空に広がっている。

国道141号を千曲川に沿って南へ。
メルヘン街道を西へ。
お気に入りの音楽を流し気分を高め、
12:30分、白駒池駐車場に到着。

白駒池の駐車場にて
恒例の出発の前の撮影。オニューのザックを中央に。

白駒池の有料駐車場は広くしっかりと整備されていた。
駐車場の入り口には管理人も数名おり、お土産屋やトイレもある。

それにしても荷物をパッキングし直したり、登山靴を履いたり、
出発前の準備はどうしてもあせってしまう。
気分が高まっているからだろうが、家でゆっくりと考えながらの作業はここでは役に立たない。
気持ちに思考と肉体が追いつかない。
経験と馴れが必要なのだろう。

12時54分。山がゴウゴウとうなるなか、
俺達は北八ヶ岳の山中に潜り込んだ。

白駒池の入り口
登山道にもなる白駒池の入り口。観光客でにぎわう。

しっかりとした駐車場やお土産やがある様に、
白駒池は北八ヶ岳の観光名所なのだろう。
白駒池までの道は広く整備された道で、
夏休みのファミリーやツアー客など沢山の人とすれ違った。

軽い登りの道はすぐに下り道に変わり、
下りの終点には白駒池が広がっていた。
程よく視野に収まるサイズで、
紅葉のシーズンには池を囲む木々がキレイなことだろう。
水面には細かい波が全体に広がっている。
余裕があればここで一泊するのも悪くない、と思った。

白駒池の前
白駒池。自然からエネルギーを吸収するヤハケン。

白駒荘を過ぎ池を半時計周りに進む。
木を敷いた整備された道だが、濡れて乾かない木は滑るので転びそうだ。
左の池も、右の苔も、視界に入れる程度で道を進すすんだ。
そして10分ほどでニュウ方面への分岐にたどり着いた。

分岐を南へ折れると一面苔の世界だ。
緑の薄暗い道は不思議さとアドベンチャー感に溢れている。
しかし苔むした道とゴロゴロした大きな岩、泥の道は非常に歩きにくい。
慎重に歩き、たまに歩みを止めてはため息をついた。

白駒池からの登山道
苔と岩と泥の道。黒百合平まではこのような道がほとんど。

しばらく歩くと湿原にたどりつく。
先ほどまでとはうってかわった開けた気持ちの良い場所だ。
ここには光がさんさんと降り注いでいる。
ベンチでもあればここでゆっくりとしたいものだ。

白駒湿原
白駒湿原。ほんのひと時、開放感を味わえる場所だ。

湿原を抜け、ニュウへの分岐を南へと折れる。
ここから道は一気に険しくなる。

急な上り坂、
張り出した木の根、
大きな岩、
苔が着いた岩と木、
泥の道、
日の当たらない道 。

一歩間違えば見失ってしまいそうな道を、
木に結ばれた赤と青のテープを目印に進む。
まるでゲームのようだ。

急な登り坂を一気にクリアしたくなる衝動を抑え、
ゆっくりと息が切れない様に登る。
木の根と岩を迂回しながら、徐々に徐々に標高を上げる。
ふと顔をあげると木の隙間から空が見える。

ニュウへの登り道

そして暗闇を抜けると青空と絶景が広がった。
冷たく強い風が俺らを歓迎した。

ニュウの頂上付近
ニュウの山頂にて

ニュウの頂上へはそこから5分ほど。
分岐の眺めも素晴らしいがニュウの頂上からの眺めは最高だ。
青空とニ時の方向には東天狗と西天狗岳。
冷たい風もここでは気持ちがいい。

俺らはニュウを後にし、稜線上を南へと向かい、
そしてしばらく歩くと南から来た夫婦に出会った。

彼らはどうやら現在の居場所に不安があるらしく、
俺らに現在地を訪ねてきた。
俺らは先ほどニュウに登ったばかりで、
現在地を把握していたので安心して教える事ができた。

しかし彼らの言う通り、ここからの道は不安になるのもしょうがない。
彼らが南から来なければ俺らも不安になっていたかも知れない。
稜線上を左に景色を眺めながら歩いているので安心だが、
今まで一定の間隔で在った目印がここからなくなってしまうのだ。
確かにこれまでの道と同じ様な大きな岩が転がっている道だが、
これが道だ、と言う絶対の確信が俺にはなかった。
もちろん人が歩いたあとは充分にあるが、
雲取山の登山道がベースになっている俺には多少不安があった。
足元を見ながら歩いていると道を間違えやすく、
後ろを歩いているヤハケンに何度も助けられた。

八ヶ岳 登山道の様子

日が西に傾きはじめ、目に見える景色が黄色く染まってゆく。
土の茶色と苔の緑とシラカバの白の色合いが最高で、
黒百合平への到着時間が遅れていることも、
道が本当にあっているかどうかも、
なんにも気にならず気持ちよい気分で歩いた。

そして中山への分岐を過ぎ、
中山峠を西に進路をとり、
今日のも目的地の黒百合平へと到着した。
16:40分。標高2400m。

黒百合ヒュッテのテント場
黒百合ヒュッテのテント場でコーヒーを飲む俺。
黒百合ヒュッテ近くの岩場
岩場から夕日を眺めるヤハケン。背景は黒百合ヒュッテ。
黒百合平からの星空
黒百合平からの星空

ニ日目 東天狗岳・西天狗岳 から帰路へ

夜は予定外に冷え込んだ。
夏用の化繊の薄いシュラフにシュラフカバーを被せ、
カッパ以外の服は全て着込み、
足をザックカバーに突っ込みなんとか眠ることができた。
そして4:00に起床。天気は晴れ、薄い雲。

朝食を食べ、黒百合ヒュッテで水を補給。
防寒着、カッパ、水、非常食、救急セット。
天狗岳にピストンするだけの必要な装備を一つのザックに詰め込み、
5:35分黒百合平を出発した。

黒百合平から天狗岳への道はいきなりの岩場だ。
大きな岩を両手で掴みながら"○"と書いた岩を目指ししっかりと登っていく。
小さな段差を見つけては細かく、力を使わないで登る。
途中で止まっては右手に見える北アルプスを眺め、一歩一歩ゆっくりと登った。

天狗岳への登山道
天狗岳への道。右手には北アルプスと長野の街が広がっている。

フジツボの跡がついた様な模様のある岩、
丸くて大きな岩、
トンガッた岩、
標高が上がるにつれ石の様子も変わってくる。
見えなかった景色が見えてくる。
そうして6:54分東天狗岳に登頂。標高2646m。

槍ヶ岳のトンガリに呼ばれた人は、
きっと俺だけではないはずだ。

天狗岳の山頂
天狗岳の頂上から北西の方角。

しばらく東天狗岳で眺望を楽しみ、
続いて西天狗岳へと向かった。

西天狗岳の頂上は東とは違いなだらかだ。
広々としているので休憩には向いているが東に比べ眺望は良くない。
しかしここからは長野の街を楽しむことができる。
諏訪湖や伊那市、そこを通る中央自動車道など、
山間に根付いた街を眺めているのはとても楽しい。
地球の形を楽しむことができる。

西天狗岳からの空
西天狗岳の頂上にて。

西天狗岳を発ち東天狗岳を抜け黒百合平への帰路についた。
帰りのコースは行きのコースと変え中山峠経由の道を選んだ。
行きと同様に大きな岩の歩きにくい道で、
特に下りなので慎重に一歩一歩石を渡り歩いた。
右手に見える群馬の山々のグラデーションと雲の具合が絶妙だ。

西天狗岳から群馬県側を望む
群馬県側の景色。

黒百合平に戻った俺らはテントを畳み荷物をまとめ、
コーヒーとパンをほおばり帰路へと出発した。
10:30分。

帰りのコースは中山を経由するコースだ。
中山までの道は少し登る。
中山の頂上と展望台を越すとそこからは下り道。
今までと同様に大きな岩が転がる道を行く。
岩の上をトントンと軽快に行くが、行けども行けども同じ様な岩の道。
足首へのダメージがかなり溜まったころ高見石小屋に到着した。
12:30分。中山の展望台から1時間ほど同じ様な道を歩き続けた。

高見石小屋
高見石小屋に到着直前。

高見石小屋でしばし休憩し、白駒池に向け最後の下り道を行く。
同じ様な急な岩場の道だが、歩行者も増え、道は緑色に変わり、
標高が下がるにつれ緩やかになった。
そしてとうとう白駒池へ到着した。

昨日の風はなく白駒池の水面は穏やかで、
緑も水も光を浴びありったけの色を出していた。

白駒荘のテラスで食事をする家族、すれ違う人々、
木々の間から差し込む光。
全てが暖かい。

余裕があればここで一泊するのも悪くないな、と思った。

高見石小屋からの登山道
登山終了 白駒池の駐車場にて