初心者のための登山とキャンプ入門

塩見岳登山 鳥倉ゲートから塩見岳に登り三伏峠小屋へ。 南アルプス縦走①

塩見岳

2012年9月の15日から5泊6日で南アルプスを縦走しました。縦走のコースは塩見岳から入って聖岳までです。このページでは縦走初日の塩見岳登山の情報、地図や水場、山小屋の宿泊料金の事などを書いています。

塩見岳登山の情報

塩見岳登山の地図
鳥倉の駐車場から塩見岳へのコースです。三伏峠小屋から塩見岳へのピストンは、往復で多少違った登山道を使用したので赤色と青色の線で区別しました。グリーンの線は翌日のものです。
  • 所在地:長野県伊那市、静岡県静岡市葵区
  • 山域:南アルプス
  • 標高:3046m
  • 百名山No:82

塩見岳登山の概要

標高差や距離はカシミール3Dというアプリケーションをを使って計算しています。また記載している数字はおおよそのものです。

日付 2012年9月15日(土)
登山コース 鳥倉駐車場 - 鳥倉登山口 - 三伏峠 - 塩見岳 - 三伏峠
距離・累積標高 18km(+2250m, -1300m)
宿泊場所 三伏峠小屋
駐車場 鳥倉ゲートの駐車場(無料)/ 30台
水場 鳥倉ルート上にある細い水場は枯れていた。三伏峠小屋から10分ほど沢に下ると水場有り。三伏峠小屋、塩見小屋で購入可。
トイレ 鳥倉駐車場、鳥倉登山口(シーズン中のみ)、三伏峠小屋、塩見小屋

鳥倉駐車場~塩見岳(三伏峠から塩見岳ピストン)のコースタイム(山と高原地図より)

鳥倉駐車場ゲート 0:00
鳥倉登山口 0:50
三伏峠 3:45
本谷山 5:10
塩見小屋 7:10
塩見岳 8:30
塩見小屋 9:20
本谷山 11:20
三伏峠 12:40

山小屋の料金(宿泊費、食事、水、トイレなど)

三伏峠小屋

三伏峠小屋、ジュースやビールの料金
  • 1泊2食付き(寝具付き):8000円
  • 1泊夕食付き(寝具付き):7000円
  • 1泊朝食付き(寝具付き):6500円
  • 素泊まり寝具付き:5000円
  • 素泊まり:4500円
  • テント場代:600円、トイレ使用料と合わせて700円
  • お弁当:1000円
  • 水:1リットル300円、2リットル600円
  • トイレ:屋外トイレ100円、水洗トイレ200円(宿泊者無料)。
  • その他:ジュース類400円、ビールは350mlで600円、500mlは800円、昼食は1000円でカレーやそばなどもある。

塩見小屋(要予約)

塩見小屋、ジュースや酒類の料金
  • 1泊2食付き(寝具付き):8000円
  • 素泊まり寝具付き:5000円
  • 素泊まり寝具なし:4000円
  • お弁当:1000円
  • テント場:なし
  • 水:1リットル400円、2リットル1000円
  • トイレ:携帯トイレで200円、男性用の小は無料。
  • その他:ジュース400円、ビールは350mlで600円、500mlは800円

塩見岳登山の参考地図・資料

山と高原地図 塩見・赤石・聖岳
日本百名山登山ガイド・下

塩見岳・静岡市・伊那市のお天気

リンク

塩見岳登山日記 -南アルプス縦走①-

花バス観光の高速バスで松川ICへ

2012年9月14日20時20分、新宿のモード学園の前。バス停ではない普通の道路にたくさんの大型バスが並んでいる。大きな荷物を抱えたたくさんの若者が路上に座り込み、バスの出発を待っていた。関西弁でぶつぶつと怒りをまき散らしている顔のどす黒いおっさんとすれ違う。新宿だなあと思う。

「花バス観光」というプレートが付けられたバスを発見した。ドアの前でクリップボードを持った運転手に出発時刻を尋ねると、皆さん揃ってから出発する、ということらしい。なので僕は荷物を預けると、モード学園ビル内のコーヒー屋でトイレを借り、そして花バス観光のバスに乗り込んだ。

20:35分、バスが出発。
「花バス観光」の高速バス。新宿発のこのバスは長野県南部、南信地方と呼ばれるエリアまで旅をする。僕は終点駅の飯田ICの3つ手前、松川ICで下車をする。そこで名古屋から来る「北尾くん」と合流する予定だ。

こんなレアな地域を運行するのだから、さぞかしバスは空いている事だろうと考えていたが、バスは見事に満席だった。しかも乗客の年齢層が若い。多くの人は20代前半の様だ。今夜、長野のどこかで熱いダンスパーティーでもあるのだろうか、と想像して遊んでいたが、最終的には今日が週末だから地元に戻るのだろう、という結論に落ち着いた。
隣の席の男性はパンを頬張りながら、別れ際に彼女からもらったと思われる手紙を熱心に読んでいる。シャーペンで書かれた薄い文字の手紙。文字と文字との間隔、大きさ、そして筆圧。それらの事から、彼女は色白でロングヘアー、頭にふんわりとした帽子を乗せている事だろう、と想像した。暇だ。

久々の4列シートは非常に狭かった。気を抜くと隣の男性に膝が当たってしまうので、つま先をどこかにひっかけておかなければならない。この狭苦しいバスに4時間近くも乗らなきゃならないのかと思うと気が重くなった。

バスは談合坂のサービスエリアに21時40分に到着して10分間の休憩をとると、また出発した。

南アルプス縦走で抱える問題点

暇なので登山の予定表や地図を読んだ。
さて、今回の南アルプス6泊7日の縦走登山。すごい不安だらけだ。まず一番の不安は山行予定。情けない話になるが、今回の南アルプスの登山の予定、僕は何も考えていない。出産のため東京に来ている姉に、「南アルプスの100名山を縦走するプランを考えてくれ」とお願いしただけだ。お願いしたのには諸事情あるのだけれど、まあそんなこんなで僕は姉が用意した予定表を持っているだけ。計画は全て姉にまかせてしまっていた。

もちろん姉の用意した計画表は見事なもので、日毎のコースタイムやバスの時刻表、エスケープルート、そしてエスケープルートからの下山方法までしっかりと記載されているものだ。完璧だった。しかし、人様に用意して頂いたプランで登山をするというのはどうもしっくりと来ないようだ。自分の中に予定を落とし込めていない気がして落ち着かなかった。特に不安だったのが下山時のバスの利用方法で「井川地区自主運行バス」とか「井川観光協会登山者送迎バス」とかの乗り継ぎに不安があった。最終的にはなんとかなんべ、って事で終わらせたけど。

もう一つはカメラの問題。今まで、登山ではルミックスのGF1と交換レンズの超広角レンズの組み合わせのカメラを使用していた。それが700グラムに行かないくらいの重量で持ち運びは余裕だったのだけれど、僕は今回の登山に合わせてカメラを新調してしまった。ボディは中古のニコンのD700と、レンズはカールツァイスの28mmのレンズ。合計で1.7キロくらいになり非常に重い。これを肩にぶら下げて1週間も歩けるのだろうか、壊れやしないだろうか、とか、それこそ苦労に見合った良い写真を撮れるのだろうか、と憂鬱だった。

それともう1つ、僕の気分を落ち込ませていたのはカールツァイスのレンズだった。オートフォーカスが出来ないマニュアルフォーカスのみのレンズ。マニュアルなんて簡単でしょう、と気楽だったけれど、昨晩撮りまくったところほぼピンぼけで驚いた。すごく時間をかけて集中しないとピンが合わない。いったいどうなってしまうのだろうか。

そんな事を頭でブツブツと考えながら、南アルプス縦走前夜は過ぎて行った。バスが揺れる度に窓ガラスがピキピキと言ってうるさい。後の席で誰かがプラスチックでできた硬質なピスタチオのカラを剥いている様な気がした。

23時15分、バスは諏訪ICで降り乗客を降ろすとまた高速に戻り、その5分後には諏訪のサービスエリアに到着した。そこで僕を含む飯田方面の客は、定員25名ほどのマイクロバスに乗り換えた。今までのバスに残った客は、どうやら松本方面へ向かう様だ。面白いシステム。ニュージーランドではこんな感じの高速バスに乗ったけど日本にもあるんだな、と思った。

そしてしばらくの休憩の後、20名ほどを乗せたマイクロバスは諏訪サービスエリアを発った。途中マイクロバスはインターを降りては1人の乗客を降ろし、そして高速に戻ってまたインターを降りる、そんな事を繰り返した。どのバス停も辺りは暗く何もない。迎えが来なければ大変な事だと思う。果たして北尾くんはこんな所で待っているのだろうか。

松川ICを降りると、マイクロバスはしばらく走り、0時45分「JAまつかわ選果場」に到着。バスは真っ暗で何も見えない所にポツンと僕を残すと、ブーンと走り去っていった。シーンと辺りが急に静かになり、心細くなった。そして肌寒い。空を見上げるとたくさんの星が輝いていた。すごい所に降ろされてしまったなあと思った。

北尾くんと合流。鳥倉ゲートの駐車場へ

北尾くんは近くの駐車場に車を止めており、無事に合流することができたのでほっとした。車から出てきた北尾くんは半袖短パンの家着姿で驚いた。

目的地は鳥倉の登山口。ナビの目的地を「鳥ガ池キャンプ場」に設定すると僕らは出発した。

北尾くんは姉の夫で僕の義兄になる。僕は何度も北尾家にお世話になっているし、北尾くん自身も何度も我が家に来ている。みんなで旅行なんかもする。そう言うわけで僕と彼とは良く知れた間柄なのだけれど、一対一で会うのは初めてだと思う。しかも今回はお泊りで登山。盛り上がるのだろうか、と僕は少し緊張していた。なぜなら、僕は実家だと実家でのキャラクターで大人しいから、その猫の皮は1泊の登山程度じゃ脱ぐ事はできないだろうと思った。姉によると、「盛り上がるかなあ」と北尾くんも言っていたようだ。

そんな雰囲気で僕らのドライブは始まった。そんな雰囲気ってのは僕が感じているだけであって、北尾くんは何も気にしていないかも知れない。姉によると「北尾くんは何も考えていないよ」ってことらしい。まあとにかく、笑いが多い登山になったら嬉しい。
そう、なぜ今回北尾くんが僕と登山をする事になったか、といういきさつについてはのちのち説明しようと思います。

車は夜道を走る。小渋湖沿いを走り、寝静まった大鹿村を駆け抜けた。北尾くんとはどんな会話を交わしただろうか。今回の登山の事や家族の話、大鹿村についてだっただろうと思う。途中に会話が空いてどうしたもんか、と考えたが気の利いた内容も浮かんで来ない。

伊那大島駅からのバス停「大河原」辺りから鳥倉林道に入り、道路は一気に山道になった。ぐねぐねとしながら登ると大きな鹿と出くわし、登山の気分も高まった。北尾くんは久々の山を感じて気分がノッている様だった。

鳥倉のゲート付近になると道路脇に停車している車があった。まさかなあと思っていると、その後数台の車がポツンポツンと停車している。車の後にテントも張ってあったし、その脇ではダウンを着込んだ男性がスニッカーズの様なものを頬張っていた。そんな光景に戸惑っていると、どうやら僕らは鳥倉ゲートの駐車場に到着していた。30台は停められると言う駐車場もいっぱいで、路肩には車の列ができていた。すごい混みようだ。夏は終わったからと高をくくっていたけど、今日は3連休の前夜なのだ。

道路脇に適当な駐車スペースを見つけ車を停めた。そしてその後ろにはテントを張った。屈強な北尾くんは車でも眠れるが、僕はそうも行かない。
テントや寝袋などは今夜数時間眠るためだけにわざわざ持参してきた。明日以降は必要ないので北尾くんに預かってもらう。

午前2時。空には星がぎっしりで満足してしまって、わざわざ苦労して山に登る必要があるのだろうか、とついつい思ってしまった。風邪もひいてるし少ししか眠れないし、明日の行程は忙しいし、これから6泊も山で過ごさなければならないし。星が綺麗だったねー、楽しかったねー、と言って帰りたい。まあ旅の始まりはいつもこんなもんで、前日は旅ブルーになる傾向がある。それでも旅に出たくなりまた旅をする。そうそう、今回の登山の気分は旅。山を越えて山小屋で泊り、次の小屋を目指してまた旅をする。そんな気分だ。

起床時間は5時。姉の予定表には「5時に駐車場発」とあるが、北尾くんが3時間は寝た方がいいだろう、と言った。何だか心強い。初日は安心して登山が出来そうだ。

9月15日土曜日。塩見岳へ向け鳥倉の登山口へ。

9月15日土曜日の5時、予定通り携帯のアラームで起きる事ができた。昨晩は寝袋の中に入った後でさえも車の往来はあり、簡単には眠りにつけなかった。でも起きてみるとそこまでのだるさはない。短い間だけれど良い睡眠を得られた様だ。
テントを出ると北尾くんも車から出てきた。良く眠れた様だ。うらやましい。北尾くんみたいな体質に生まれたかった。登山や旅がもっと楽になるに違いない。そして彼は相変わらず半袖短パンだ。

テントを畳んで朝食にパンを食べると5時30分、早速僕らは出発した。明るくなった駐車場ではたくさんの登山者が活動していた。この時間にも車は続々と駐車場にやってくる。いったいどこに車を停められるのだろうか。

鳥倉駐車場の様子
朝5時30分、鳥倉駐車場の様子。シーズンは終わったけれど、それでもやはり百名山は人気のようだ。
鳥倉駐車場のトイレ
駐車場にあるトイレ。使っていないけどキレイそう。

本日の山行予定、鳥倉の登山口から三伏峠小屋まで登って宿の予約をし、荷物を軽くして塩見岳をピストンする。山と高原地図の参考タイムでは12時間30分以上のきびしい日程となっている。塩見小屋に宿泊できれば何も問題のないプランだったけれど、連休でいっぱいになってしまい、三伏峠小屋しか選択肢がなくなってしまった。そんなわけで本日はハードスケジュール。縦走初日の朝5時30と言えど、ウォーミングアップとか言いながらぷらぷらと歩くことは出来ない。

まだ薄暗い林道をてくてくと45分ほど歩くと、鳥倉登山口に到着。けっこう広いスペースだったので、あんなにゲート前が混雑するんだったらここまで車を入れさせてくれたらいいのに、って思った。登山口の前でピンぼけの写真を撮ったら登山開始。

鳥倉登山口の様子
鳥倉登山口。登山道は看板の横から始まる。奥に見えるのが登山バス運行期間中に利用できるトイレ。

野人・キタオ。

足の遅い僕を先頭に道を登る。姉の予定表には「最初は急登」と書かれている。しかし姉がコースについて書いているのは唯一これだけで、それ以降は一切何も書かれていない。不思議だ。

道は確かに急登だったけれど、そこまできついと言う事はない様に思う。けれどゆっくりと登っていられないので大変だ。いつも登山開始時は恐ろしくゆっくりと登っているので、このペースで最後までもつかどうか気になった。今日はまだまだ長いのだ。

鳥倉ルートの様子
整然としたカラマツ帯、と山と高原地図には書いてあった。

それとやはり後を歩く北尾くんのペースはかなり早い。彼がかなり後ろの方を歩いていたとしても、気がついたら真後ろにいて息遣いがハアハアと聞こえる。僕は参考タイムよりもずいぶん早いペースで登っているってことは体でわかっている。しかし北尾くんのペースはそれよりも遥かに早い。

特に段差の大きい道を歩く時にスピードの差が出るようだ。僕は「エコ登山」と勝手に呼んでいるのだけれど、なるべく筋肉を使わず登るよう心がけているから、段差が大きければ大きいほどチョビチョビと登っている。チョビチョビと登れない様な大きな段差の場合は、ゆっくりとした重心移動だけで登る様に心掛けている。なので急な登りはすこぶる遅い。しかし北尾くんの場合、僕がチョビチョビと3,4歩かけて登る段差を1歩で登る。平地の1歩も急登の1歩も変わらないスピードなのだ。僕の歩行スピードの2倍くらいはありそうだ。どこかのセンサーがイカれてるんじゃなかろうか。ハセツネで良い成績を残したというのもうなずける。そんな野人を常に背中に感じているわけで、ぼくもオチオチと登っていられない。

鳥倉ルート上の水場
鳥倉ルート上の水場。枯れていたが、水が溜まっていたので最近までは出ていたのかも知れない。

さらに北尾くんについて書く。北尾くんは昨晩出会ったままの半袖短パン姿じゃないか。しかも半袖も短パンもとても山用の物とは思えない。よくよく見るとザックも姉のものだし、登山靴も靴下も、何かにこだわっている様には到底思えない。髪だって1000円カットだ。そんな北尾くんを見ていると、時間をかけて道具を吟味して使っている自分の登山スタイルがばからしくて悲しくなる。その時間をもっと有効に使えるはずだ。

しかし、休憩になると北尾くんの道具に対しての”こだわり”を発見した。水筒がポリタンクなのだ。それを見て、特に何も考えていないのだろうな、と僕は思っていたけど、姉に言わせると北尾くんは「ポリタン派」らしい。理由を聞くことはできなかったけど、彼のこだわりを1つ見つけることが出来て嬉しかった。野人にもこだわりがあったのだ!!!

ポリタンクで水を飲む北尾くん

そんな感じでガツガツと登っているわけだから、ゆっくりと会話を楽しめる事もなく、8時半過ぎには三伏峠小屋に到着してしまった。参考タイムを45分も縮める事ができたので、予定より遅れている分を取り戻すことができた。

初めての山小屋泊。三伏峠小屋。

三伏峠と三伏峠小屋
三伏峠の様子と三伏峠小屋

三伏峠小屋で宿泊の受け付けをする。実は山小屋に宿泊するのは今回が初めて。厳密に言うと2回目になるんだけど、ほぼ初めての様なものだ。なので受付はどきどきした。

受付のヒゲを生やしたイタリアンを作らせたらうまそうな男性に「予約ですか?」と聞かれ、「予約ですか」とはなんだろうか、予約をしたいのですか、ということか、それとも予約をしている人ですか、と言う事なのだろうか。なんて事を悩んでいたら会話がうまく進まなかった。初めての山小屋は難しい。
ようやく、予約はしていないが今日泊りたい、と言う意思を告げると「なるべく予約をしてくださいね」と、スッと言われた。姉の予定表には「予約不要」と書いてあったのに。姉が電話で確認をしていたから僕は間違っていないのに。

そんなやり取りが終わると、次は宿泊者カードを記入する。個人情報と緊急連絡先、食事の有無なんかを書く。それと目的地。僕は面倒だったので最終的な目的地である「光岳」と適当に書いたが、「明日はどこに行きますか?」と聞かれてしまった。そうなのだ。南アルプスでは、そっちに何名向かった、とかそんな様な事を山小屋間で無線のやりとりしているから、明日だれそれがどこに行く、と言うのは非常に大事なのだ。そんなわけで中岳避難小屋です、と答えた。

いやあ、実に難しい。僕はチキンだから、ホテルも飛行機もチェックインが系が苦手なのだ。何か自分に落ち度はないだろうか、とついつい不安になる。だから今回もそれと同じ様な気分を味わった。

料金は2食+寝具付きで8000円。僕は翌朝のお弁当をお願いしたから1000円プラスの9000円。夕食の時間は17時。姉の話によると、遅くても17時30分まで、と言う話しだったけれど、そんな事を聞ける雰囲気ではなくそれは心の内にしまっておいた。17時に帰って来さえすれば良いのだ。朝食は4時半か5時と言っていた様な気がする。

僕らの宿舎は受付と食堂のある、本館的な建物の向かいにあった。歩いて5秒くらいの距離だろうか。
宿舎は間仕切りがありゴザを敷いているだけの簡素なものだったが、窓からは明るい光が入り広々としていた。まだ誰の荷物も置いていないせいもあるだろう。
敷き布団や掛け布団は夜の寒さに耐えうるだけのボリュームはある様に思う。ゆっくりと夜を過ごせそうだ、と思った。

三伏峠小屋の宿舎の様子
宿舎の様子。予約なし一番乗り。

塩見岳へピストン。三伏沢のバリエーション。

少しまったりとして、ピストンに必要の無い荷物を置くと塩見岳へ向け出発した。北尾くんは「こんなに楽だったらビールのサンゴー缶を6本くらい持ってくればよかったなあ」と言っていた。彼にとって今回は超久しぶりの登山のはずだけれど、それでもここまでは余裕だったようだ。僕はびびって何も言えなかった。9時。

三伏峠小屋からテント場の方に下りしばらくすると分岐がある。三伏山経由塩見岳行きの道と烏帽子岳方面に向かう道だ。前者が塩見岳を登る際の一般的な登山道だけれど、僕らは烏帽子岳への道をとった。烏帽子岳への道はまたすぐ分岐で別れ、一方は三伏沢を歩くバリエーションルート。ここを歩いて本谷山に登り塩見岳を目指す事にした。

三伏山と烏帽子岳の分岐点
左は三伏山経由の道、右は水場と烏帽子岳方面の道。僕らは右の道をとった。

遠くにそびえる塩見岳を見ながら進むとすぐに水場があった。ここが三伏峠小屋から一番近い水場で、小屋で水を購入しない人はここまで水を汲みに来る必要がある。

そこからの登山道は点線ルートって事もあり急に細くなり不安もあったけれど、僕らは進む事にした。登山道の周りには枯れたマルバダケブキが群生している。盛夏はさぞかし綺麗な事だろう。

三伏峠小屋の水場
三伏峠小屋から沢に10分ほど下ったところにある水場。クマに注意の看板を見るとドキドキする。

広々とした気持ちの良い沢をぐんぐん下っていると、北尾くんが「ちょっと下り過ぎじゃない?」と言った。確かに、そろそろ三伏小屋跡があっても良いはずなのに、まだそれは見えない。気がつかないで過ぎてしまったのだろうか。

しかし僕はあまり心配していなかった。それよりも「下り過ぎではないか」と言った北尾くんに感心をしていた。僕はいつも初心者同士で登山をしているものだから、この時点で「あやしいな」と感じてくれる人はそういない。みんな何も考えずにのほほんと歩いている事の方が多い。なのでこの時点であやしいな、と感じる北尾くんの経験に伴った感覚を頼もしく思った。

ちなみに念のためiPhoneのGPSアプリで確認すると、僕らはまだ三伏小屋跡までたどり着いていない事がわかった。北尾くんがiPhoneの画面を見て「すげー」と言っていたのが嬉しかった。野人をハイテク機器で驚かすことができ満足した。

三伏沢沿いの登山道の様子
広くて気持ちのよい三伏沢沿いの道。

しばらく歩くと三伏小屋跡はあった。見過ごす事は不可能と思われる量の廃材が登山道脇に積まれていた。

そこから登山道は沢を離れ、本谷山への縦走路に向けての登り道となった。クマに怯えながら細い樹林帯の道をしばらく進むと、無事に塩見岳への縦走路にぶつかることができた。しかしそこにはロープが張られていたので、今歩いてきた登山道は、基本的には使用していないのだろう。
でも少しの間だけでも冒険ができて楽しかった。やっぱり多少ドキドキ感のある登山が好きだ。

三伏小屋跡
三伏小屋跡。

塩見小屋への登り道。

そこでしばらく休憩をすると、マルバタケブキを見ながら急登を登り、10時20分本谷山に辿り着いた。塩見岳への眺めが素晴らしい場所だけれど、まだまだ遠い。

ここで休憩している夫婦が僕の持っている行動食に触れてくれた。特別なこだわりは少しもないけれど、今回僕はミックスナッツとドライフルーツがぎっしり入った行動食を用意したのだ。触れてくれたのでついつい僕も調子にのってしまい、イチジクもリンゴも入っているんですよ~なんてしゃべったりした。近くにいた男性は「ネットで買えるんですか!?」とさらにはやし立てた。なのでもっと話したかったけれど、時間もないので先を行く事にした。

本谷山への登り道の様子
本谷山への登り始め。枯れているけどマルバタケブキのお花畑。

そこからはずっと、下り道やほぼ平地と言った道が続いて歩きやすかった。ここに来てやっと、北尾くんと会話をしながら登山をすることができる様になった。どんな話しをしただろうか、ほとんどが僕の仕事の話だったと思う。それと親父が作っている競馬のプログラムが完成した、という話しなど。猫の皮を脱いで、僕がどんなに不まじめな奴か、というのをざっくばらんに話し盛り上がりたいなとも考えていたが、それは結局かなわなかった。

そんな歩きやすい道も終わりを迎え、それと同時に北尾くんとの会話も終わり、やがてきつい登りが始まった。しばらく樹林帯の急登を登ると尾根上にのり、森林限界に入った。ハイマツくんの登場だ。

そんな理由で眺望はとても良いんだけれど、ここからの登りがきつかった。思うように体が登って行かない、足が動かない。荷物が軽いとは思えないほど体のキレが悪い。ペースが早すぎたのだろうか、風邪の影響だろうか。
「写真を撮るから」と北尾くんにウソをつき、僕は後ろからゆっくりと登った。北尾くんは瞬間的に視界から消えた。

そして僕は、下りてくる登山者に「塩見小屋はまだ先ですかね?」とうかつにも尋ねてしまった。「~はまだですか?」的なことを登山者に問うたのはこれが初めてで、すごくくやしかった。それくらい体が重かったのだと思う。問に対しての答えは「、ほんとにすぐそこですよ!」だった。やった。

塩見小屋への登山道の様子
森林限界に入り、塩見小屋への尾根を登る。

12時前、塩見小屋に到着すると僕らは昼食をとった。メニューは北尾くんがコンビニで買ってきてくれた、海苔巻きといなり寿司のお弁当。おもむろにザックから取り出したそれを見ると重そうだった。実は北尾くんのザックの中に僕のお弁当が入っている事はわかっていたが、持ちたくなかったのでそこにはずっと触れないようにしていた。だって彼はスーパーマンなんだ。
お弁当はとても美味しかった。北尾くんは瞬間的に食べ終わっていた。

30名収納できるらしい塩見小屋は想像より遥かに小さかった。中を見ていなから良くわからなかったけれど、北尾くんが言うには2段ベッドの様になっていると言う話だ。また小屋には売店があって、酒はもちろん、カップラーメン、コーヒーやココアなどのホットドリンク、フルーツゼリーなんかも売っていた。水は500mlで400円、2リットルで1000円と書いてある。トイレは携帯式のものを使う。

本来ならばこの塩見小屋に泊まる予定だったのだけれど、連休で予約は既に埋まっていた。というわけで、僕らはこれから塩見岳に登り、そしてはるばる三伏峠小屋まで帰らなければならない。いやー、疲れたから泊まりたい。

塩見小屋
塩見小屋。
塩見小屋のトイレ
塩見小屋のトイレ。受付で携帯トイレを購入し、ここで用を足すようだ。

いざ塩見岳へ。「北尾くん、俺を置いて山頂に行って下さい。」

塩見岳
塩見小屋付近から見上げる塩見岳。

塩見岳に向け出発。しかし、やはり足が重い。下りは問題ないけれど、どうしたんだとびっくりするくらい登りでは足が言う事を聞かない。始めはそれでも、休憩後だからペースを崩さずにいけたけど、登り続けるとどんどん足があがらなくなり、結局ペースを落とさずにはいられなかった。

やっとこ天狗岩の肩を巻くぞ、と言うところで北尾くんのケータイが突然ピピピッと鳴った。auの電波が入った様だ。話している様子から察するに、久々の友達との会話の様である。僕はこれ幸いと思い、距離を今のうちに稼ごうと先に進む。すると彼は楽しそうに電話をしながら追いついてきた。街で歩いている風に。参った。

塩見岳、天狗岩を巻く
ケータイで電話をしながらも追いついてくる北尾くん。

天狗岩を巻くと塩見岳への最後の登りが一望に出来た。なげえ。それは壮大と言うより絶望的な眺めだった。果たして今の僕に登れるだろうか。そしてその迫力はコルに下りると一層増した。

塩見岳、コルからの眺め
塩見岳への最後の登り。

これが最後の登りだ、と自分に言い聞かせてヨロヨロと岩場を登る。しかししばらく登るとゆっくりと登る事もできなくなり、登っては少し休み、登っては少し休みを繰り返した。止まる時には両手を膝の上に置き前かがみになって休憩した。たまにこんな登り方をしている登山者がいて不思議に思ったが、今はその気持がわかる。登りたくても登れない事もあるのだ。

体が疲れてしょうがない、と言う訳ではない。筋肉が疲労して足が上がらないわけでもない。ただ体が上に登る事を拒んでいる様なのだ。まるでエベレスト。8000メートルを登っているみたいじゃないか。

やばい、やばい、と思いながらよちよちと岩を掴んで登る。こんな姿を北尾くんに見せて情けない。それとこんなに時間をかけて大丈夫なのだろうか。なんとか塩見岳に登ったとしても、僕らは三伏峠小屋に17時までに戻らなければならないのだ。まずい。あと山頂までどれくらいの距離だろうか。うおー、体が持ち上がらん。

そして、僕は力尽きた。「俺はここにいるから、頂上に行って下さい」、と北尾くんに告げた。もうこれ以上登るのは無理だった。三伏峠小屋までの体力も残しておかなければならない。

するとすぐに北尾くんは「ここまで来たらもったいないよ、荷物をデポして行こう」と言った。まじかよー、と思いながらも、考える気力もなかったので素直にそれに従いザックを下ろした。「ザックカバーもした方がいいよ」というので面倒だけれどなんとかザックカバーもつけた。「財布とカッパは?」とも聞かれたので「大丈夫っすよ」と答えると、「絶対に持っていった方が良い」、と彼は強く言った。平気っす、問題無いっす、と言い張る気力もなくそれに従うしかなかった。ほんと、この人はしっかりしている。素晴らしい事だけど、この時ばかりはめんどくせえ、と思った。水とカッパは北尾くんが持ってくれた。

そして一眼レフだけを肩にぶら下げ、再びヨチヨチと登りはじめた。
するとすぐに塩見岳の山頂に到着してしまった。
なんてこった。もう少しがんばれば良かっただけじゃないか。

塩見岳西峰の山頂
塩見岳西峰。

13時15分。参考タイムより20分も早いからペースが早すぎたのかもしれない。いや、今日は朝からペースが早いから、その疲れが出たのかも知れない。いずれにせよ、無理な行程だとこの様な結果になる様だ。北尾くんは、低い所から一気に登ったから高山病かも知れないね、と言っていた。

少し雲がでていたけれど、誰もいない塩見岳の山頂は清々しかった。久しぶりの3000メートルでもある。しかし心は複雑。縦走の初日からこれである。確かに今日が一番行程的にキツイのは承知しているけど、この先こんな調子でいけるのだろうか。明日に疲れが残るんじゃなかろうか、風邪が悪化するんじゃなかろうか。不安だらけだ。風も吹いてきて寒い。上着を羽織ろうと北尾くんにザックのカッパを取ってもらうと、なんとカッパの下だった。だめだ俺は。

長い三伏峠小屋への戻り道。野人、ついに故障。

さて、もう一度三伏峠小屋へ。体は疲れて来てはいるけれど、下り道はいつも通りに歩けた。しかし塩見小屋を過ぎ、樹林帯に入るとそこからの道がすこぶる長く感じた。僕と北尾くんは、「もう少しで本谷山の山頂だと思うから、そこまで行ったら休憩をしよう」なんて話していたけど、なかなか本谷山の山頂にはたどり着かなかった。毎度のことだけれど、やっぱり復路は長く感じてしまう。

15時20分、本谷山の山頂。よし、僕らは時間通りに来ている。ここから三伏峠小屋まで1時間30分も必要ないから、僕らは夕食の17時までには間に合うはずだ。小屋のヒゲのおじさんに怒られる事もなさそうだ。もう少し。

本谷山から下りはじめた頃だろうか。ここに来てとうとう、野人に異変が起きた。彼は膝の裏を痛めてしまった様で、渋い顔をしながら道を下っている。最近は全く運動をしていない様だったので、急なハードな登山で膝にキタんだろうと思う。

僕も同じ様に膝を痛める事が多い。こうなってしまうと、どれだけ休もうとどれだけストレッチをしようと、歩けば痛みが増して行くだけでその痛みが和らぐ事はない。痛みに悶えながら変な歩き方になって、最後には疲れ果ててボロボロになってしまうのだ。
そんな膝の痛みの辛さが良くわかっていたから、北尾くんがかわいそうだなあと思った。しかし一方では、野人でも故障する事があるのだ、と少し嬉しかった。塩見岳でギブアップをしようとしていた僕は、人の不幸が嬉しかった。

三伏山の山頂で少し休んでから下り始めると、北尾くんが突然「ア゛ァァァー!!」と叫んで驚いた。少し休んだせいで膝の痛みが悪化した様だ。びびったけどその気持も良くわかった。
しかしそれでも北尾くんのペースは落ちない。足を真っ直ぐにして着地すれば大丈夫、と言い、ゾンビみたいな歩き方でスタスタと道を下っていた。やっぱりこの人にはかなわねえな、と思った。

三伏山の山頂
三伏山。

そしてとうとう、僕らは三伏峠小屋に到着した。

三伏峠は朝の9時とは違い大いに賑わっていた。テント場にはたくさんのテントが張られ、小屋の前では暖かいウェアを着込んだ登山者が談笑したり、夕食の準備に取り掛かっていた。辺りには日暮れ前の最後のひと時を楽しもうと言う暖かい空気があった。16時30分。長い長い1日だった。

三伏峠小屋のテント場
三伏峠小屋のテン場。

初めての山小屋ごはん。縦走初日の終わり。

僕らが一晩過ごす離れの宿舎の様子も変わっていた。ガラガラだったスペースは荷物でひしめき、見たところ離れは埋まってしまったんじゃないだろうかと思われた。北尾くんはビールを飲み、僕はタバコを吸った。そして17時、お楽しみの夕食の時間。僕にとっては初めての山小屋のごはん。どんなメニューか楽しみだ。

三伏峠小屋の宿舎の様子2

三伏峠小屋の食堂の前では、多くの人が夕食待ちをしていた。すると、「奥の方から座って下さいね~」という声と共に、皆がどんどん食堂へと吸い込まれていった。食堂は想像より遥かに小さかったけれど、それでも待っている人を全て収納することができた。

夕食のメニューは、白米、暖かいお蕎麦、魚のフライと煮付け、ポテトサラダ、煮物、お新香、パイナップルなど。見た瞬間「豪華だ~」と声を上げた。だってこんなにおかずがあるだなんて思いもしなかった。山小屋のご飯は米と味噌汁があって、おかずは鯖の缶詰とかなんだろうなあ、それともカレーかなあと考えていたから、お皿のおかずの多さに幸せになった。今日の登山をがんばったかいがある。

三伏峠小屋の夕食
お茶もおかわり自由だった。

おかずはどれもこれも美味しかったが、特に嬉しかったのが暖かい蕎麦だった。ボリュームも大満足だった。ご飯のおかわりも出来たんだけど、必要のないくらい充分なおかずのボリュームだった。
「受付のおっさんはうまいメシを作りそうだ」と、朝に北尾くんと話していたけれど、やっぱりその通りに美味しいご飯だった。まあこの人だけが作ってるわけではないんだろうけども。そしてやっぱり、北尾くんは誰よりも早く食べ終わっていた。もっとカミカミしないと。

三伏峠小屋の夕食時の食堂の様子

宿舎に戻り荷物をパッキング。そして布団を敷くと北尾くんは即効寝た。早く飯を食い、どこでも寝れる。寒さにも強く、装備なんかも気にしない。羨ましいほどの登山体質だ。僕といえば、向かいにいる学生団体がうるさくて眠れなそうだから、しばらく日記を書いてから寝る事にした。

今日は大変だったけれど、一番きつい縦走の初日をなんとか終えることができた。そして、明日からは一人になる。こんな調子で大丈夫だろうかと不安にもなるが、明日以降は今日より遥かに楽なことだろう。テントじゃなくて、お金を払ってこんなに素晴らしいところで寝ているんだ。疲れもとれることだろう。

そう、初めての山小屋。お金はかかるけどなかなか面白いもんだなあと思った。同じ空間で過ごすから色々な人間がいるし、どんな料理がでてくるかってのも楽しみだ。時間的な制約もあって色々と面倒だけれど、これはこれで楽しい。
三伏峠小屋のスタッフも面白い。ここのスタッフは全員男だったと思うけど、男塾的な雰囲気があっていい。トラックの運ちゃんみたいな渋い顔をした人達が、バンダナとエプロン姿で料理を作ったり運んだりしてくれる。違和感があると言えばあるけど、カッコイイ!

向かいでは学生団体が相変わらずキャイキャイやって騒がしい。

リーダー:「おまえらいいかげんにして寝ろよー」
メンバー:騒ぐ

リーダー:「○○~、なんだったら俺の布団に来て一緒に寝るか~?」
メンバー:騒ぐ

リーダー:「おまえらホントに静かにしろよ。明日のために睡眠が重要なんだよ。」
メンバー:騒ぐ

リーダー:「と言っても、消灯は19時半なんだけどねー」
メンバー:騒ぐ

長い間こんなやり取りを繰り返している。

頼むリーダー。飴と鞭かわからんけど、飴の方が甘すぎて完全に舐められてるぞ。
おやすみなさい。

即効寝る北尾くん