初心者のための登山とキャンプ入門

八ヶ岳・編笠山日帰り登山

編笠山 登山道の様子
石井スポーツ 2016冬季 岳人祭

編笠山について

観音平の駐車場
赤色が登山道で青色が下山道。

編笠山は南八ヶ岳の最南端にある。長野県と山梨県の境に位置する。標高は2523.7m。名前の通り、頭にかぶる笠の様になだらかな形をした山に違いない。等高線を見てもその様子をイメージする事ができる。
編笠山の一番近い登り口は観音平の駐車場で、その標高は1580m。山頂までの標高差はおおよそ1000mで、距離は3.4km。山と高原地図の参考タイムには、登りが3時間10分、下りが2時間25分とある。ざっくり計算して、登るスピードは時速は1キロ。等高線でも急勾配な登山道と言うのが良くわかる。

車だと、一番近い高速のインターは中央道の小淵沢ICで、観音平の駐車場までは30分ほど。小淵沢インターから右手にセブンイレブン、そして左手にローソンが見えるとそこが最後のコンビニとなる。
近くには温泉施設(足湯もある)や道の駅もあり、小旅行に楽しそうなところだ。

山と高原地図 八ヶ岳 蓼科・美ヶ原・霧ヶ峰 2016

編笠山 登山日記

日帰り登山の難しさ

テラピーと日帰り登山をする事になった。

僕は東京の思いっきり東に住んでいて、日帰り登山の事を考えるといつも頭を悩ませてしまう。
登る山の選択肢がかなり限られてしまうのだ。たとえば高尾山駅に辿り着くまででも、電車とバスで少なくとも2時間は必要になってしまうし、奥多摩も丹沢もそれより遥かに遠い。奥多摩や丹沢の登山が出来ない事もないだろうけれど、ハイキング程度の山にしか登れないだろうし、スケジュールもハードになってしまう。もちろん車があれば、こんな悩みもなくなるんだけど。
一方、テラピーも静岡の東側に住んでいる。テラピーは車を所有しているので、その車を使って行動範囲を広げる事はできるが、それでも選べる山は少ない。やっぱり僕の家から山までのアプローチが長すぎるのだ。

テラピーと話し合いあれこれと考えた結果、我々は南八ヶ岳の編笠山に登る事になった。はっきり行って僕の家から八ヶ岳の日帰り登山は少々無理がある。日帰りで編笠山をやるなら、山行時間は余裕を持って6時間は欲しい。そう考えると、昼前に登山口についても下山は夕暮れ時になってしまうのだ。
無理な山行計画だと思いつつも、それでも久々に八ヶ岳に登りたいという思いの方が遥かに勝っている。途中で山頂は厳しいと思ったら、くるっと引き返してしまえば良い。とりあえず登ってみよう。やってみよう。

編笠山登山日記

2012年6月27日水曜日。東京駅から7時20分発のJRバスに乗り御殿場駅へ9時20分頃に着く。そこからテラピーの車に乗って八ヶ岳に向かった。富士五湖道路を、中央道を、テラピーはダッシュで走ってくれた。途中サービスエリアで軽い食事をとり、11時半には編笠山の登山口である観音平に到着した。

そしてろくに準備運動もせず登山を開始。今から6時間かかって夕方に観音平に戻ってくるのはいい。でも御殿場駅発東京行きのバスは20時30分。それまでに僕は御殿場に戻っていなければならないのだ。

観音平の駐車場

駐車場にある南八ヶ岳の案内板と登山届のすぐ横の道を進む。
やっぱり八ヶ岳は素敵だなあ。奥多摩の1500メートル付近と比べてしまうと、長野(山梨)の山は洒落て見える。木の生え方とか高現地っぽくて見るからに涼しげ。

観音平から編笠山への登山道の様子1
観音平から編笠山への登山道の様子2

と思っていたのもつかの間、暑い。めちゃくちゃ暑くて、体中から大粒の汗がなく吹き出している。そう、ペースが速いのだ。それも尋常じゃないくらい。前を行くテラピーが凄まじいスピードで登っていく。それに離されない様必死に食らいついているのだ。

確かに僕らはなるべく速いペースで登らなければならないけれど、それにしても速すぎるぜ・・・と思いつつも、僕は「速いよ」とか「ペースを落とそう」とは言えない。今まで同じ様な経験を何度もして、心では「速い」と思っても、その様な言葉が口から出てこない。むしろ「やってやるぜ」と思ってしまう。
その度、下山後に「言えば良かったなあ」と後悔するんだけど、思うに自分はかなりの負けず嫌いなのかも知れない。この性格がいつか事故を起こすことでしょう。

その後テラピーのペースはやや落ちたものの、それでもなお速い。僕は息が乱れない様、呼吸を意識しながら登らなければならなかった。

登り始めてから40分ほど経つと「雲海展望台」に辿り着き、ここで小休止をした。1時間が予定のところを20分も短縮している。
すごい汗の量。登山の汗のかき方じゃない。水の消費もすこぶる早い。この時点で500mlの水を飲んでしまった。激しいスポーツをやってる最中の休憩みたいだ。

休憩が終わるとまたものすごいスピードの登山が始まった。もう少しでトレランになってしまうのではなかろうか、と思うほどのスピードである。写真を撮りたくても撮れない。水を飲みたくても飲めない。岩がゴロゴロしているので、歩きながらの給水が非常に難しい。

雲海

そう、この頃から登山道の様子が変わりつつあった。苔むした大きな岩がゴロゴロとしている沢の跡の様な道が多くなった。その昔に通った、北八ヶ岳の中山から高見石小屋へかけての登山道に似ている。その時思ったのが「ここを下るのはいいけど登るのは絶対嫌だな」って事だった。大きな岩が邪魔で足が非常に運び辛い。そしてまた単調なのだ。
そんな登山道を今まさに登っている。まだまだ優しいが、随所に足を大きくあげなければならない段差がある。そしてこの超ハイペースである。かなりきつい。

途中で追い越したおばちゃん達が「さっき二人組みとすれ違ったでしょ?あの人達は山頂を諦めて下りて来たんだって。あまりにも長くて・・・」と言う様な事を言っていた。
引き返して正解だと思う。地図を見てもこの登山道はずっとこんな感じで、登れば登るほどさらに厳しくなるし、時間的にもそうだ。だから僕らは急いでいる。追い越したおばちゃん達は編笠山の山頂に立てるだろうか。(帰路で会わなかったので引き返した様だ)

観音平から編笠山への登山道の様子3

2つ目の分岐点「押手川」に辿り着いた。50分のところを30分で来た。ひどいペース。この押手川から山頂までは2つのルートで行く事ができる。1つは巻いて青年小屋経由で、もう1つは直登。僕らは時間の短い直登コースを選んだ。どんなコースだろうか。山頂付近の等高線がギュッとなっている。崖の様な等高線だ。

押手川
観音平から編笠山への登山道の様子4

ろくに休みもせず僕らは押手川を発った。編笠山山頂までの最後の登りだ。

テラピーのペースが落ちていたので、先ほどから僕が先頭を歩いている。ややペースは落としたものの、それでも一般的なスピードには戻さない。今落としたら動けなくなってしまいそうで怖いのだ。
それと、僕がテラピーに付いて行った様に、テラピーは僕に付いてきている。なので僕がペースを思いっきり落としたり、「ペース落とす?」とか尋ねるのは、ここでは適切ではない気がした。僕だったらそう言われるのは嫌だ。経験的に僕がコントロールする立場なのだけれど、彼女ならやれるだろうと思った。

2,30分も登ると、高い木々達はそのポジションをハイマツに譲りつつあった。頭上が明るい。そして登山道上の大きな石コロの色も変わった。頂上は近い。お気に入りのプロトレックを確認すると、標高は2400メートルと少し。振り返ると、雲の向こうに山梨の景色が広がっていた。素晴らしい。やっほう。

観音平から編笠山への登山道の様子5

そして本格的な急登が始まった。本格的な石ころの道である。
大きな段差をよいしょ、と登る事を避けられない。この時、なぜだか涸沢から北穂に登っている時の事を思い出していた。あの時も上へ上へひたすら登っていたなあと。そして今はあの時より遥かにつらいな、と思う。そう、このハイペースのせいだ。ハイペースのせいで筋肉を無駄使いした。無駄な登り方をした。おかげで足の筋肉が悲鳴をあげているのを聞く事ができる。ふくらはぎくんも、太ももくんも、ギギギっと悲鳴をあげている。気を抜くとよろっとしてしまう。
そして足を止めると、ドッドッドッドっと心臓の音がうるさい。テンポもかなり速い。ユーロビートよりも遥かに速い。

編笠山山頂付近のハシゴ
編笠山山頂付近の急登

そしてとうとう、編笠山の山頂に辿り着いた。2523メートル。押手川の分岐から1時間20分のところを1時間で来た。観音平から3時間10分のところを2時間10分で登った。こうなるともうただのトレーニングだ。どんな風に登ったのか良く思い出せない。

それでもなかなか嬉しいし、気持ちの良い山頂の到着の仕方だ。達成感がある。僕はだいたいの場合、山頂にはさらっと着いてさらっと去ってゆく事が多い。いつもそんな登り方をしている。なので汗だくになりながら「着いた-!!!山頂だ-!!!」と叫んでいる人達の気持ちがわからなかったが、今わかった気がする。僕も「Yes!」と叫んでガッツポーズをしたいくらいだ。体育会系的な、マッチョ的な。
でもこれはこれで清々しい。運動したな~、っていう気だるさもいい。ただし、こんなのは日帰りの場合に限るけども。

編笠山山頂

編笠岳の山頂は、予想通りの石コロゴロゴロ地帯だったが、それはもう眺めの素晴らしいところだ。遮る物が何もないから存分に景色を楽しむ事ができる。でもこれは晴れていたらの話しで、僕らが山頂に着く頃にはガスが出始めて、切れ間から少しの眺望を楽しめた程度だ。
北を向くと、僕らを見下ろしている権現岳がちらっと見えた。赤岳から見下ろした権現岳に何の感想ももたなかったけど、下から見上げる権現岳は迫力があり威圧感があった。ここまで来て権現竹に登らないのも少し惜しい気がした。山に呼ばれてる気がした。

編笠山山頂からの眺め

しばらくまったりとしたら、同じ道を下り、雲海の分岐点から屏風山方面の道を下ってきた。時間をずいぶん短縮できたから、今度は遊びながら、歌を歌ったりして楽しみながら下山した。登りはほとんど無言だったので、それを取り返す様に。

そして16時半過ぎには観音平の駐車場に辿り着いた。何だかあっという間の登山。すごく楽しかったけれど、すごく疲れた。
それから二日後の今日記を書いているけども、まだ筋肉痛がひどくてまともに歩けない。思い返してみても、下山後にこれほどまで筋肉痛になさそうだ。こんな登り方は二度としない様にしよう、と反省しながら書いている。