初心者のための登山とキャンプ入門

北アルプス 西穂高岳~槍ヶ岳縦走 -登山の日記-

槍ヶ岳の穂先

西穂高から槍ヶ岳への縦走登山は僕の長年の夢だった。自転車で東京から沖縄へと旅をしている時だったか、立ち寄った上高地で、いつかこのコースを歩いてみたい、と強く思ったものだ。
去年は時間の関係でそれは叶わず、上高地から涸沢、北穂高岳、穂高岳山荘まで行き、最終日の前穂高岳経由の下山は雨のため中止に。涸沢から同じコースを辿って帰る、という登山になった。そして今回は3泊4日で予備日は1日。日数は充分だ。そして今回の相方は、金峰山を一緒に登ったリュウイチ氏。山ガールならぬ山ボーイ二人は、 あこがれの槍を目指して旅立つのである。

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7月26日(月) 新穂高~西穂山荘

7月26日。予定通り、リュウイチ氏は朝5時ちょうどに車で家まで来てくれた。
こんな時間に家まで迎にきてくれるなんてありがたい。
しかし僕は4時に起きたはずが、気づけば5時で、待ち合わせに20分遅れた。

新穂高温泉へと向かう。
新穂高ロープウェイで西穂高口駅、そこから歩いて西穂山荘へ。
それが1日目の予定だ。
快晴のなか陽気に車を走らせ、10時30に新穂高温泉の駐車場に到着した。
東京から約5時間だ。

ちなみに新穂高温泉の無料駐車場の入り口はわかりづらい。
新穂高温泉手前のトンネル内の左手に、「深山荘」と書かれた看板が現れる。
そこが無料駐車場への入り口だ。
無料駐車場を利用する予定の人は、新穂高温泉に到着する1分前くらいに、
左手に注目しておくといい。

タイトなタイツに両足をねじ込み、
4日分の自炊の食料と燃料が入った重いザックを担ぎ、
出発前の複雑な一服を吸い、
新穂高ロープウェイ駅へと向かう。
日差しがきつい。汗がダラダラだ。

新穂高温泉
ロープウェイへと向かうリュウイチ氏の背中と青空。かなり暑い。

新穂高ロープウェイ駅では昼食をとった。
リュウイチ氏は飛騨牛なんたらを食べた。
僕は味噌味の穂高ラーメンだか、新穂高ラーメンだかを。
期待はしていなかったが、具が多かったので嬉しかった。

ロープウェイは一度鍋平高原駅に停車し、 二階建てのロープウェイに乗り換える。
そこから標高2156メートルの西穂高口へと向かう。
ちなみにマンガ「岳」ではロープウェイで歌い続けるおじさん、が登場するが、
僕らは出会う事がなかった。
お休みの日だろうか。

12:00、西穂高口に到着。

下界とはちがいひんやりとして気持ちがいい。
ネットの掲示板では色々と質問がされていたが、
この時期でもロープウェイの西穂高口に来る場合は、
長袖を持っている方が良いだろう。

簡単な準備運動をし、日焼け止めをぺたぺた塗り、出発。
整備された道を歩くとすぐに西穂登山口に到着した。
ここから本格的な登山道となる。

西穂高口付近の登山道

樹林帯を歩く。
さっきまでの涼しさが嘘のように、とても暑い。
快晴が憎い。
汗が大量に吹き出てくるし、体にキレもない。
登山前日にクーラーを浴びすぎて、風邪っぽくなったのが原因か。
しかしなんと言ってもザックが重い。
こんなんであと3日やっていけるだろうか。
大丈夫。
明日になれば、もっと体は動く様になる。
なんてたって今日は一時間半歩くだけなのだ。
準備運動だ。
大丈夫。
だいじょーぶ。

登山開始時はいつも、びっくりしてしまった自分との戦いなのだ。

自問自答を繰り返し、そうして
13:20分、西穂山荘に到着した。

西穂山荘
喫煙所もあり、アイスクリームも食べられる。こじんまりと居心地のいい喫茶スペースもいい。

西穂山荘はこじんまりとした綺麗な山小屋で、
眺望は良くないが、別荘のようなたたずまいだった。
そしてなにより素敵なことは、ここではアイスクリームを食べられることだ。
リュウイチ氏が頼んだ白桃アイスを一口食べたが、
とてもとても美味しかった。
またこの山小屋のお土産がとてもかわいい。
ピンバッヂをはじめ、Tシャツやバッグなどのデザインもセンスが良い。
お金を沢山持っていたなら、買いたくなってしまうものばかりなのだ。

山小屋のおねーちゃんも素敵な人で、
夕食まで西穂山荘でアイスコーヒーを飲んでまったりとした。

マーボーナス
ナスは嫌いだが、マーボーナスはうまいと思う。

今日の夕食はマーボーナスだ。
ナスは2つ、ピーマン1つ、ひき肉入りのマーボーナスの素を使う。
そう言えばリュウイチ氏が「ピーマンの種は食べる方だ」的な事を言っていたが、
美味しいのであろうか。

マーボーナスは、とても美味かった。
ご飯も美味しく炊けた。
そのせいもあり、リュウイチ氏に恐ろしい勢いで食べられた。
明日からはしっかりと半分に分けねば、と強く思った。

頭痛がひどく寝付くことができなかった。
それとあわせ、リュウイチ氏のいびきと四方からのいびきでひどくノイジーな夜だった。
そっとテントを抜け出し、一人で闇の中タバコを吸った。
静かな夜はとても気持ちがいい。
本当は、何かを語りあう相手がいるとなお嬉しい。
眠たくなるまで、カメラで月を撮って遊んだ。

7月27日(火) 西穂山荘~穂高岳山荘

3:30分起床。少しは眠ることができたようだ。
ガスって周りは真っ白だ。
天気は回復するだろうか。

朝食は昨日あまらしたご飯で雑炊を作る。
残り二日もこのパターンで、今日はヒガシマルのカニ味の雑炊。
特別うまくもないが、まずくもない味である。
雑炊の後半戦ではリュウイチ氏が持ってきた味噌汁を加え、
味に変化を加えた。

こんなに早い時間だと言うのに、
周りのテントも出発の準備をしている。
だんだんと空も明るくなってきた。

余計なものを持ってきていることが発覚したリュウイチ氏に、
今夜のシチューの材料を押し付け、
5:05分、西穂山荘を出発。

西穂高岳への登山道
ガスってリュウイチ氏と行先しか見えない。テンションがあがらない。

まわりはガスで真っ白で、進むべく道と、リュウイチ氏の背中しか見えない。
風も冷たく、とても寒い。

とりあえず目の前に岩山が見えるのでそれを越え、
また次にあらわれた岩山を越える。
登って降りて、登って降りてを繰り返した。

6:00分 西穂独標
6:20分 ピラミッドピーク
7:05分 西穂高岳山頂
8:00分 間ノ岳山頂
8:40分 天狗岳山頂

記録がこの様に残っているが、頑張っても断片的にしか思い出せない。
同じ様な岩山と真っ白な世界だったので、
脳みそがいらないデータとして削除してしまったようだ。

そして僕はこんな登山にうんざりしつつあった。
これじゃあ北アルプスかどうかもわからない。
ただの修行なのだ。
テンションがあがらないのである。

ガスが消えてあらわれた稜線1
たまに見える山の稜線に心がおどる。
ガスが消えてあらわれた稜線2
心がおどった瞬間2

ごくたまに雲が切れ、青空が顔を出すことがあったが、
3163mのジャンダルムの山頂は真っ白で何も見えず、
ただただ記念写真を撮るだけになった。
あこがれのジャンダルムであったが残念であった。

10:35分 ジャンダルム山頂。

ジャンダルム
遠くに見えるジャンダルム。

話によると、どうやらジャンダルムからが
西穂~奥穂間ののメインイベントであるようだったが、
怖いな、と思えるところは1、2箇所だけだったであろうか。
覚えているのは「馬の背」と呼ばれるところだ。
ここだけは「ツン」とした稜線なので気を抜けない。

馬の背
これが馬の背。怖そうだけど、とりあえず、みんなためらわず登ってた。

12:00分 奥穂高岳山頂着
13:00分 穂高岳山荘着

無事に今日の行程が終了した。

この頃ちょうど晴れてきて、穂高岳山荘からの眺めは素晴らしかった。
越えてきたジャンダルムも、奥穂高岳もきれいに見えた。
向こうに見える常念岳も、今回も登らなかった前穂高岳も、
とてもきれいだった。

次々と登ってくる登山者をテン場から眺めながら、
たまには他の登山者と会話をして、美味しくタバコを吸って、
とても気持ちのいい午後を過ごすことができた。

やっと山らしい天気だ。
何もする気になれないぜ~。
と、山ボーイは思うのである。

今日の夜ご飯はクリームシチューだ。
シチューの具は「ペミカン」と言われる、油まみれにする技で持ってきた。
2日目の夕食であったが腐りもせず、そしてうまかった。
ルーを半分持ってきちゃったけど、ちょうど良い味であった。

本当に素晴らしい日だった。
午前中はガスって何も見えなかったけど、
一番危険と思われる箇所も無事クリアすることができたし、
テン場の周りには人が少ないので、
とても 静かな夜を過ごせそうだ。

明日が晴れるといいな。

荷揚げするヘリ
穂高岳山荘の荷上げ作業。この日は何度もヘリが飛んできた。

7月28日(水)穂高岳山荘~槍ヶ岳山荘

穂高岳山荘からの夜明け
素晴らしい朝日。全てうまくいくような気がする。

テントから顔を出すと、空はきれいな暗い青だった。
快晴だ。
日の出を見ようと、山荘の前から数人が、東をずっと眺めている。
三脚をセットしたおじさんたちも、その瞬間を待っているようだ。
奥穂も、みんなの顔も、色がだんだんオレンジへと変わってゆく。
素晴らしい日の出なのだ。

5:50分 穂高岳山荘を出発

涸沢岳に向けゆるりゆるりと登る。
振り返れば全部の山を見渡せる。
最高の天気だ。

涸沢岳山頂
涸沢岳山頂にて記録をつけるリュウイチ氏のシルエット。

6:05分 涸沢岳山頂

ここから北穂高岳までは、去年歩いたコースだ。
あの時は秋の連休中で大渋滞。しかもガスってた。
でも今回は僕とリュウイチ氏と数人と青空。
全く違う景色に見える。

北穂に向け、まずはおもいっきり下る。
ほぼ垂直の岩場をクサリを使って下る。
強い日差しを浴びながら、落石をしないよう気をつけて下った。

北穂高高への下り道
北穂への厳しい角度の下り。

去年を振り返ってみるのだが、この道を思い出すことができない。
晴れた日とガスの日ではこうも印象が違うものなのだな、と思う。
でも何か特した気分だ。
初めてここに来たような気持ちだ。

そしてヤハケンよ!やっぱり怖いところはないぞ!

7:45分 北穂高岳山頂

天空カフェからの眺め
北穂高小屋の天空カフェより槍ヶ岳を望む。

前回100人はいたであろう北穂の山頂には誰もいなかった。
人がいすぎるのも困りものだが、いなきゃいないで寂しいものだ。

槍ヶ岳はばっちりと見える。いい感じである。

北穂高小屋の天空カフェで贅沢に缶コーヒーを飲みまったり。
日焼け止めクリームと日焼け止めリップをまんべんなく塗った。
顔が真っ白になってしまったので、
山小屋の優しいおねーちゃんから鏡を借りた。

こんなところで一日中ぼーっと槍を眺めて、
という訳にはいかない。
そう、ここからが今日のメインイベント、
大キレットなのだ。

うちの姉の知人が落ちた大キレット。
マンガ「岳」で男性が落ちてぐちゃちゃになった大キレット。
ネットで「人生の中で一番怖かった」と書かれた大キレット。
どんなとこか楽しみなのである。

8:15分 北穂高小屋を出発

またまたぐんぐん下っていく。
クサリを使ったり、はしごを下ったり。
天気もいいので体もきれるが、
落石だけは注意しなきゃならない。

そして下りきったあとだったか、
「飛騨泣き」だか「かにの横ばい」だかの難所を越えた、らしい。
というのもそこが「飛騨泣き」だったって事を
しばらくたってから知ったのだ。

「飛騨泣き」は、大きめのステップが3つほど備え付けてあり歩きやすく、
ドキドキもせず通過してしまったのだ。
僕と同じ様に、他の登山客も拍子抜けしているようであった。

長谷川ピーク
これが多分ハセピー。うわーでかいなー、って思った。

次いでハセピーこと「長谷川ピーク」を越える。
北穂から見下ろすハセピーとは違い、下りきったA沢コルから見るハセピーは異様にでかい。
えっちらおっちら登ると、遠くには遥かにでかい南岳。
ちょっとうんざりしてしまう。

南岳
ハセピーから望む南岳。うわー遠いな~、って思った。

南岳への最後の急勾配をひいひい登り、
蟻地獄の様なガレ場をロープを使って通過し、

10:50分 南岳小屋着

ここからはうってかわってゆったりとした登山道になった。
ガスもでてきた。
天気が良ければ歌でも歌いながらゆったりと登りたい道なのに。

賽の河原的な登山道
天気のいい日は本当に気持ちよさそうな稜線だった。

11:18分 南岳山頂

ゆったりとした歩きやすい登山道が続くが、
ガスのせいでテンションはガタ落ち。
雷鳥にも雷鳥の子供にも心がおどらない。
ただの鳥にしか見えないよ~

雷鳥
リュウイチ氏が発見した雷鳥。ぴーちく楽しそうだった。見えにくいのでトレース。

12:20分 中岳山頂

中岳を越えると目の前には大きな山があらわれた。
とうとう槍がきた、と思ったら大喰岳だった。

ガスでガレた三途の川の岸辺のようなゆるい登り坂を、
ゆるゆると登る。
うーん長い。

13:00 大喰岳山頂

槍ヶ岳
とうとうあらわれた槍ヶ岳。でもちょっと遠い。

槍ヶ岳だ!
やっと見えた!
もうちょいでゴールだ!

大喰岳山頂付近ではガスもなくなり、
槍の眺望が本当に素晴らしい。

そしてやっぱり槍は絵になる。何度も何度も写真を撮ってしまう。
そして槍ヶ岳山荘もかっこいい。暗い赤色の屋根がとても魅力的なのだ。

でもこれで終わりじゃない。
もうちょっと下って、もうちょっと登らなきゃならないのだ。
もう少しだ。
がんばれ、足。

大喰岳からゆらゆらと下り、
飛騨乗越の分岐から、長い長いジグザクとした道を、
ゆらゆらと登る。

そして
13:30分 とうとう槍ヶ岳山荘に到着した。

疲れたぜ。
さすがにちょっと、今日の距離は長かった。
リュウイチ氏がテントの受付をしにいってくれている間も、
僕は動けずタバコを吸いながらぼーっとするしかできなかった。

隣のテントのおじちゃんと話すと、明日はどうやら雨のようだ。
今からじゃガスで何も見えないだろうけど、
今日中に槍の穂先に登っておいた方が良いだろう。
あとひと踏ん張りだ。
テントを張って槍の穂先へ目指した。

槍の穂先への登り道は、短いが急な登り道だ。
ザックを背負ってないから体は軽いはずなのに、
自分が思うように体は動かない。
練乳をちゅーっと吸ってもうひと頑張りだ。

連続する長いはしごを登ると。
槍の穂先。
標高3180メートル。
思ったよりも狭い。
ガスで眺望も良くないので達成感はない、
というより僕は既に大喰岳で達成していたかも。

とりあえず記念撮影を、
ということで祠に続く列で順番待ちをする。
ここでは、列の自分の後ろの人に写真撮影をしてもらう、
というような流れになっている。
が、あろうことかカメラを落とされてしまった女性がいた。
コン、コン、コン・・・と乾いた音を響かせながら、
カメラは遙か下に落ちていったのだ。
その女性は地面に膝をつき、
カメラが落ちたほうを呆然と眺め続けた。
彼女はこの槍ヶ岳まで、どのような旅をしてきたのだろうか。
楽しいことも、苦しいこともあったであろう。
なんだか寂しい槍の頂上となってしまった。

テントに戻ると、最後の夜ごはん。
今日はデリーの「カシミールカレー」だ。
レトルトで少々値ははるが、美味しい。
大型やおしゃれスーパーなどで買うことができる。

激辛だよ、ってリュウイチ氏に前もって伝えてあったが、
想定外の辛さだったようだ。
二人で鼻水を垂らしながら、
「ウワゥッ!」と叫びながらカシミールカレーを食べた。

7月29日(木)槍ヶ岳~新穂高温泉

昨晩の強風は、翌日になってさらに威力を増した。
雨も混じってテントの側面がバッコンバッコンと大きな音を立てた。
テントのフライはインナーにびっしり張り付き、
テント内には小さな水たまりができた。
強風に吹かれるたび、インナーからはじけ飛ぶ水しぶきが顔と寝袋にふりかかった。
登山靴はリュウイチ氏がテント内に入れてくれたようで、
水浸しにならずにすんだ。

食事をとったらカッパを着込んでテントの外へ。
ものすごい風と雨だ。
恐らく今までの登山で一番最悪な天気だろう。
でも驚いたことに、他の人もテントの撤収作業をしている。
山慣れた人たちには、これくらいの天気は当たり前なのだろうか。
少し標高を下げれば、風は落ち着くかも知れない。

もう急ぐことはないのである、
ということで槍ヶ岳山荘でホットコーヒーをいただいた。
ついでに姉からのメールを山小屋のスタッフに見せてみた。

「親友の〇〇ちゃんの同僚の〇〇君が山好きが高じて会社辞めて
槍ヶ岳山荘で働いてるらしい。○○さんがよろしく伝えてね と言ってたよ」

姉の親友の○○ちゃんは、僕からは遠い人だったのでとても不安だったが、
何か起こるかも、と思い切って○○君にメールを見せた。
案の定お互いどう言っていいかわからず、
ひたすらニコニコして終わった。

6:45分 槍ヶ岳山荘を出発。

山荘には下山準備をしている登山客が沢山いたが、
飛騨沢からの人はほとんどいないようだった。
雨にバチバチと打たれながら、
リュウイチ氏の背中を見ながら、
ジグザグと下り続けた。

相変わらず雨は降り続けていたが、
標高が下がると雨も風も弱まって歩きやすくなった。
今日は下山日なので、明日の足を心配する必要もない、
とリュウイチ氏は思ってたかはわからないが、
お互いものすごいスピードで下山をした。

8:30 槍平小屋
9:05 滝谷避難小屋
10:00 白出沢出合
10:25 穂高平避難小屋

ゴウゴウと唸る沢沿いの、色んな植物が生い茂った道を
一目散に歩く、というより小走りの様な速さである。
目線はずっと地面の石の上。
こんだけ石を見続けたら、
三日間は夢にでてくるであろう。
石を踏み外したところで目が覚めるのであろう。

ひどい歩き方をしているから
そのぶん足のダメージも激しい。
でも、もうこうなってしまったら止まれない。
止まったら歩けなくなってしまいそうだ。

そうして、足が消耗しきったころ、
新穂高温泉に到着した。
11:00。槍ヶ岳を発ってからから約4時間だ。
26日に出発して、29日、無事戻ってこれた。
この場所がとても懐かしく感じる。

お疲れさん。

そして
平湯温泉に入り、シャンプーを8回くらいして、
ポテトとコロッケを食べ、
山梨で豚肉入りほうとうを食べ、東京に帰った。

とりあえず、西穂高岳から槍ヶ岳縦走、
という目的は果たすことができた。
とうとう長年の夢を叶えることができたのである。

しかし、日記を書いている今も達成感らしきものはないように思う。
まだまだ満足しきれていないのだ。
穂高岳山荘あたりで満足しきってしまったのであろうか。
それともこれが山ボーイの宿命なのか。

次はどこに登ろうか。

いまだに治らないヘルペスの跡を眺めながら、
ついそんな事を思ってしまうのだ。

槍ヶ岳山頂