初心者のための登山とキャンプ入門

九重山登山 長者原から九重山を登り牧の戸口・そして別府へ。

九重 の坊ガツル

あらすじ:九州の百名山、阿蘇山・祖母山・九重山・霧島山・開聞岳を一気に巡る旅に出ました。祖母山を下山するとレンタカーを走らせ九重へ。やっと見つけた客のいないキャンプ場 ”九重グリーンパーク泉水キャンプ村” で一泊、そして翌朝。

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九重グリーンパーク泉水キャンプ村の朝

2013年の4月19日金曜日。九州の百名山を巡る旅4日目。
ー 九重のオートキャンプ場 ー

1日のうちで一番寒い時間帯は日の出から少し経った頃、というのを野外生活の積み重ねで知っている。そしてそんな時間に耐え難い寒さで起きた。
霜が降りるんじゃなかろうかと感じた。それくらいの寒さだった。そして寝袋の奥まで潜りこむと、わずかな空気穴だけを残してフード部分のゴムをめいっぱいに閉じた。安堵するとまた眠りについた。

次に起きたのは6時前だった。
ぐっすり眠れたようだ。天気はどうだろうか、と寝袋から顔を出そうとするも、入り口を閉めきってしまったので出るのに苦戦した。拉致された人の気分に朝からなった。

寝袋から出れない人

テントの外に出てみると空は真っ白で辺りはガスに包まれている。ひどい天気だし信じられないくらい寒い。そして逃げるようにテントに入り、寝袋に潜り込んだ。予報と違うじゃないか。
ガタガタと震えながら携帯で九重の天気を調べてみると、朝から晴れの天気予報は曇りのち晴れに変わっていた。なんということだろうか。しかし昼から晴れる様ではある。さて、どうしたもんか。そして考えるのが面倒になり、寝た。

次に起きたのは7時過ぎだった。外は変わらず白い。さてどうするか。面倒で考える事を先延ばしにしていたが、そろそろ決断しなければならない。やる気がでないし寝袋から出たくもなかったし山になんて登りたくなかった。でもがんばって考えた。頭をフル回転させた。そして結論がでた。登るコースを変えよう。

九重山を登る場合は”牧の戸峠”の登山口から登るのが一般的で、僕もその予定だった。と言うのも僕の持つ百名山のバイブル”日本百名山登山ガイド(下)”にはその牧の戸峠からのコースが紹介されていた。けれど午前中は曇りだと考えると九重山の山頂では晴れていないかも知れない。と言うことで、昼ごろに到着できるよう長者原からゆっくりと登ることにした。さて、この作戦変更が功を奏すだろうか。

がんばって寝袋から飛び出しがんばって片付け、がんばって荷物をレンタカーに積み込み、そして逃げる様にキャンプ場をあとにした。九重グリーンパーク泉水キャンプ村には本当に誰もいなくなった。
やたら寒くて吐く息が白い。道路の温度計には3度と表示されていた。

九重山登山のハイライト -長者原から牧の戸峠へ-

長者原の ”タデ原湿原”

タデ原湿原

8時15分。長者原の駐車場から歩いて数分、突如目の前に現れたのは広大なタデ原湿原だった。駐車場からちょっと歩けばこの景色が見られるなんて、すごくすごく幸せなことだ。天気も気分も曇りだったけどすっかり元気にさせられた。
ちなみに長者原=ちょうじゃばる、タデ原=タデワラ。

名もない沢

九重山の沢

8時26分。タデワラを過ぎると道沿いに沢があって、きれいだったので写真を撮った。感激スイッチがオンになっていたのでやたらに写真を撮った。

個人的に思う”ノルウェイの森”

九重の森

8時40分。”樹林帯”と一言で済ましてしまうにはもったいないような素敵な道が続いた。木の一本一本に存在間があり長野の高原を思わせるシャレた雰囲気があった。違うとは思うけれど、村上春樹の ”ノルウェイの森” の中に出てくる森はこんな空気感のする森だろうとな、と思う。会話に耳を傾けられる様な静かな森だ。ちなみに ”海辺のカフカ” に出てくる森は、祖母山の様な感じだろう。

先を行くのがもったいない。この場所を過ぎ去ってしまうのだと思うと寂しくもなった。そんな素敵なところだった。

雨ヶ池湿原

雨ヶ池湿原

9時35分。雨ヶ池湿原。雨が降った後、木道の周りは池の様になるらしい、と途中の看板にあった。タデ原もそうだったけれど、こうゆう看板ってベストシーズンの写真がだいたい載っている。青空で緑が溢れて色とりどりの花があちこちに咲いている写真だ。ベストシーズンに最高の天気で山に登りたいけれど、それを待っていたら死ぬまでに数えるほどしか山に登れないのだ、と自分を慰める。

石畳の登山道

九重の登山道 石畳

10時22分。素晴らしい山は登山道も素晴らしい。石畳の登山道を歩いたのは初めてなので感激した。感激スイッチはオンに入りっぱなしだ。

坊ガツル

坊ガツルの様子
坊ガツルの様子2

10時28分。空が晴れてくると広大な盆地、坊ガツルに辿り着いた。九州の百名山を周ってきたけれど、その中で一番心が踊った場所だったし、本当に踊りたくなった場所だった。
この山々に囲まれた一本道を歩いているとはるか昔の旅人の様な気分になれた。人が作ったものと言えば遠くに見える山小屋くらいで、あとは自然のものしかない。この景色を見せてあげたいな、と思う人の顔がたくさん浮かんだ。

次に九州に来るときは、またここに絶対に来ようと思う。春夏秋冬全ての季節に来てみたいと思う。そして次は必ずテントを持ってきてここで一泊、いや何泊もしようと思う。

北千里浜

北千里浜の様子
北千里浜の様子2

11時40分。坊ガツルでお腹がいっぱいだったけれど、まだまだ九重は見せてくれた。北千里浜もものすごく拓けていて、だだっ広いワイルドな荒野が続いている。歩いているのがもただただ気持ちよくて、俺は自由だ、サイコーだ、幸せだ、もう死んでいい、なんて言いながらずんずんと歩いていたら、登山道から500メートルくらい離れていた。

九重別れの手前、三俣山を望む

北千里浜と三俣山

12時26分。”九重別れ”と言う名の峠の手前、珍しく登山者とすれ違ったので振り返り写真を撮った。こんな素晴らしいところなのになぜ人が少ないのだろうか、と考えていたが後で理由がわかった。九重山をピストンしているだけの人がほどんどなんだ。人がいないのは静かで嬉しいけれど、その半面残念だとも思う。九重に来たのなら坊ガツルも北千里浜も歩いた方がいい。と、今日初めて来たばかりなのに知った気になって思った。

奥に見える山が三俣山で、今回のコースはあの山をぐるっと周る。
ここら辺りで僕の右膝が痛みはじめた。登山を最高にエンジョイしていたので悔しかった。

九重山

九重山

13時43分。九重別れ避難小屋辺りからみた九重山。「九重一族の長」と深田久弥は書いていたが、確かに見てきた九重の山々の中では一番迫力があり堂々していた。しかし僕はとっとと登り降りてきた。膝も痛かったし山頂には人が多すぎた。
そう、今までのが嘘だったかの様にここいらには登山者が多く驚いた。ジャージを着た学生達、ショルダーバッグやボストンバッグの外国人、普通のおじさん、普通のおばさん。

西千里浜と藤井さんとの再会

西千里浜

14時。西千里浜から振り返って撮った九重山。その後しばらくしてから僕の名を呼ぶ声が後ろから聞こえた。あのスタイルの良い人は・・・藤井さん
藤井さんとは祖母山の駐車場で知り合いそして一緒に登った。前日のことだ。下山後は別々に九重を目指していたけれど、まさか本当に会えるなんて信じられない。

奇跡の再会を喜んだあと藤井さんと話しながらしばらく歩いた。けれど彼は相変わらずの健脚で颯爽と僕の視界から消えた。僕は下山ならついていけるとがんばったが膝が痛すぎて諦めた。でもこの感じが嬉しい。お互いマイペースなんだ。

西千里浜から沓掛山への縦走路

西千里浜から沓掛山への縦走路

14時22分。九重山からの道のりを歩いていて思ったのは、このコースは本当に歩きやすいという事だった。のんびりとゆっくりと標高が上がっていく縦走路で膝にも優しい。眺望も素晴らしい。

すれ違った女の子たちが元気に爽やかに挨拶をしてくれた。よし、まだまだいけると思った。(膝のこと)

牧の戸峠の長い階段

牧の戸峠の階段

15時。でも爽やかな道のりは沓掛山までで、そこから牧の戸峠の駐車場までは急な階段が続いた。膝殺し。駐車場が見えているだけにつらい。

牧の戸峠登山口

牧の戸峠の登山口、レストハウスにて

15時38分。牧の戸峠のレストハウス前では藤井さんが笑顔で迎えてくれた。
藤井さんはきっと誰かと話してるんだろうなあ、なんて階段を下りながら考えていたらやっぱりその通りだった。左が藤井さんで右は九州の方。彼もラストの階段で足をやり必死に階段を下った様だ。同じ思いを共有した戦友の様だ、と嬉しくなった。

その後藤井さんにお願いをして、長者原の駐車場まで送ってもらった。そして「鳥取の大山に一緒に登れたら登りましょう」と約束をして別れた。僕は九州の百名山を登り終えたら大山に登ろうと考え始めていた。

晴れた日のタデ原

九重 タデ原湿原の様子

16時12分。せっかく晴れたのでもう一度タデ原まで行き写真を撮った。1日をかけてこの山々をぐるーっと周ったのだ、と思うと嬉しくなった。左から三俣山、硫黄山、星生山。

別府で ”別府温泉 野上本館” に泊まる

身支度を整えると姉からメールが入った。別府で二食付きで温泉付きで8000円までくらいの旅館を見つけてくれ、と下山後にお願いしていたが、それの予約が済んだ様だ。ありがたい。しかも全て注文した通りだったし、プラス貸切風呂なんてのもあるらしい。最高だ。

九州百名山登山の旅は前半戦を終えた。無事に阿蘇山、祖母山、九重山、と登り終えて残るは開聞岳と霧島山の2つとなった。
今後の予定は、今日は別府に宿泊し、明日の朝イチにレンタカーを返却。その後は新幹線で鹿児島というプランになっている。

と言う理由で、レンタカーの返却もあるし4日間頑張ったってことで別府の旅館に泊まることにしたのだ。

別府温泉 野上本館

姉が予約してくれた旅館は、別府温泉 野上本館という。別府北浜、竹瓦温泉にも近くロケーションは素晴らしい。けれどこの辺りは道がえらい狭く、野上本館の駐車場に車を停めるのには緊張した。駐車料金は500円。
受付のおじさんの接客が丁寧で、逆に申し訳ない気持ちになった。こんな小汚い男がこれから温泉で垢を落とし部屋で荷造りをするのだ。そして、テントも干す!

部屋は6畳くらいの和室で畳も替えたばかりだったのか、青々として良い匂いがした。角部屋で窓は2面に大きくあって、一方からは海が微妙に、もう一方からは山が微妙に見えた。素敵な部屋なので写真に撮りたいところだったけれど、お化けが写ると嫌なのでやめた。フイルムだったら後で怖がればいい。けれどデジカメはその場で確認できてしまう。部屋の写真を撮りディスプレイを確認したら人が写ってる、なんてことだけは避けたい。

夜ごはんははたっぷり食べた。ジュース、さしみ、つけもの、茶碗蒸し、かもの鍋、とり天、汁、デザート、おかずもたっぷりだったし、ほかほかのご飯も大量にあって大満足だった。テレビで「まいうー」と言っている人が、「ご飯は飲み物だ」と言っていたが、それが良くわかった。僕も茶碗5杯は食べた。
食堂はすごく地味で(多分素敵なところもあったと思うが僕は案内されていない)、客も僕だけで寂しい感じだったけれど、おばちゃん達は親切だったし、たんと食いなさいって感じですごく嬉しかった。

別府のとり天

食後は貸切温泉に入った。半外なので気持よかった。しかしやっぱり別府の温泉は熱い。あまりにも熱いので足し水をしまくったらぬるくなり、完全に別府らしさがなくなった。残念だった。

温泉に浸かりながらふと思い出す。
以前別府に来たのは自転車で旅をしている時で、その時はゲストハウスに泊まっていた。そして今回は登山の旅で旅館に泊まっている。成長したのかしてないのかわからんが、確実に年はとっている。そして僕はオヤジになりじじいになり、いずれ死ぬ。認めたくないがどうやらそれは避けられない様だ。そう思うと、やりたい事をやれる内にやらなければなと思う。世界を旅したいし、空を飛び回りたいし、海も旅したい。さて、真剣に考えなければ。

明日は鹿児島だ。